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熟成臭

疫禍を避けた、2年ぶりの開催。

下鴨神社、糺の森の《古本まつり》。

列島津々浦々の古本屋軍団が、

テント露店で〈本の虫たち〉を迎え撃つ。

本の虫たち――のうち1匹は、

何を隠そうアテクシざまーす。

中2の時。

うら若き教育実習嬢の初授業で――

「…表紙をめくった時の“インクの匂い”が大好きなの!」

――と照れ笑う教生嬢のフレーズは、まさに国語教師のタマゴのソレであり…本の虫のソレでもあったやに。

糺の森、古本まつり。

2年ぶりの今回は、曇天でホッ。

いやなに、本の虫とはしながらも。

炎天下のお宝探しは、なにげにキツい。

加えて!

何万冊もの古本集積地帯――

太陽熱で励起する古本独特の熟成臭で

鼻と内臓、脳みそがヤられるワケさ。

カビ臭、手汗臭、活字インク変成臭――

…モロモロ渾然一体、わが身にゃ瘴気!

…んな折。

アメリカで《〈書店の香り〉香水》が

売り出されていると知った。

さらに、某自動車メーカーに至っては

《〈ガソリンの香り〉香水》だと。

香りに励起されるヒトの記憶――

で、集客に繋げようとする意図らしい。

なるほど!とは頷くものの、《〈古本の瘴気〉香水》なんてのが売り出されようものなら。

蓋を開けた瞬間――悶絶死…アルヨ。

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