柳をめぐるタイムトラベルー長野県中野市、杞柳産業のその後ー
序 中野市の杞柳産業とは
江戸期から20世紀半ばまで、日本人の暮らしに寄り添い、広く使われていた日用品があった。土から育てた柳を加工し、素朴な道具と人の手で編み上げたかごである(1)。
私が暮らす長野県中野市には、40年ほど前まで杞柳(以下柳)を栽培・加工する人や、柳を用いて行李やかごなどを制作する人がいた。柳の栽培は明治期に導入され、信濃川に隣接する延徳地区の水害地対策として、加工は農家の冬仕事として普及し、一産業として地域経済を潤わせた。しかし、昭和40年代(1965