「天気予報によると明日は雨らしい」は、 事実か推測か意見か?
あなたは会社の上司や先輩から、
こんなことを言われたことはないだろうか?
「それは事実?それとも君の意見?」
ビジネスの世界では、
「事実」と「推測」と「意見」を区別して
コミュニケーションすることが求められる。
ここでいう「事実」とは、
「客観的に確かなこと」
「推測」とは、
「事実から推し量った(確かではない)こと」
「意見」とは、
「主観的、個人的な考え」
といった意味で捉えて問題ないだろう。
確かに、この区別を意識することで、
自分の伝えたいことをわかりやすく
整理することができるし、
相手の言いたいことも掴みやすくなる。
特に、私のいるコンサルティングの世界では、
どこまでが数字やデータで証明できる事実で、
どこからがそれに基づく推測や意見なのか、
という点が非常に重要であり、
私も普段から、この区別の鉄則を
強く意識をしている。
あらゆる情報(特に発言や文)は、
事実か推測か意見に分類できるのか?
この区別の鉄則は、
多くのビジネス書でも説明されており、
既にご存知の方も多いと思う。
しかしながら、この区別の鉄則は、
どんな状況でも当てはめることのできる
万能な考え方なのだろうか?
意識さえすれば、誰でも、
相手の発言を事実、推測、意見のどれかに
分類することができるのだろうか?
あなたの友人A君が以下の発言をしたとする。
さて、区別の鉄則に従うと
この発言はどれに該当するだろうか?
考察のSTEP1
まず考えるべきなのは、この発言の示す内容が、
「客観的に確かか?」=「事実か?」
ということである。
この問いに対しては、
「夕方から雨になっちゃう」という
未来の不確定な内容を話していることから、
「事実ではない」=「推測」
と判断する人が多いだろう。
しかし、見方を変えると、
「夕方から雨になりそうだ」ということを
「気象予報士が言っていた」のは、事実である。
(TVを見ていた他の人に確認すれば、
客観的に証明できる確かなことである)
このどちらの分類が正しいかは、実は、
この友人A君の発言の
「主題」=「伝えたいこと」
がどこにあるのか、に依存する。
具体的に説明しよう。例えば、
複数人で今日の天気について話していて、
A君は「夕方から雨」と主張しているとしよう。
ところが、他の人は晴れ渡る空を見て、
誰も信じようとしない。
そこでA君は、
自分の主張の説得力を高めるために
と発言した。
(※最初に提示した分と、要素は全く同じで、
順番だけ入れ替わっていることに、
みなさん気付かれたかと思う)
この場合、A君の発言の「主題」は、
「自分以外にも、(気象予報士というプロで)
夕方から雨という主張をしている人がいた」
ということである。
つまり、「いたか、いなかったか」
ということを伝えたい発言なのだ。
そして、「いた」ということは、
「客観的に確かに」証明できるので、
この発言は「事実」に分類されることになる。
考察のSTEP2
この分類は、あくまで前述した場面を
想定した際の限定的なものだ。
他の場面を想定すると、正解は変わる。
例えば、私がA君に、
「今日のこの後の天気知ってる?」と尋ねて、
それに対して、A君が
と答えたとしよう。
この場合、セリフはSTEP1と全く同じだが、
主題=伝えたいことは全く異なる。
「雨になるらしい」ということが
言いたいのだから、これは「推測」である。
先ほどのセリフを、主題に沿って組み替えると
こんなイメージになるだろう。
推測をしている主体はあくまでA君で、
その推測の根拠が気象予報士の発言、
という構造になっているのだ。
考察のSTEP3
最後に、こんな場合はどうだろう。
明日は楽しみにしていた屋外フェスの日である。
しかし、どうやら雨の可能性が濃厚だ。
そんな状況でA君が私に、
と言ってきたら(冒頭に提示したセリフと同じ)
この発言の主題は、
「雨だと主張する気象予報士がいた」ことでも
「天気予報に基づくと、雨になりそう」
ということでもなく、
「雨になっちゃうんだって、、本当に残念だ!」という「主観的、個人的な考え」=「意見」
を述べているのだ。
同じセリフ(発言)・文であっても、
事実、推測、意見のどれに当たるのかは、
文脈次第
ここまで見てきたように、
全く同じセリフや文であっても
その発言者や書き手が、どんな背景で
何を伝えたいのか、という点によって
事実なのか、推測なのか、意見なのかは変わる。
(今回はわかりやすいように、
少しセリフの要素の順番をいじったが
この結論に影響は及ぼさない)
つまり、巷で語られているこの区別の鉄則を、
何も考えずに受け入れても、
上手く機能しないのだ。
常に、発言者や書き手の意図を、
背景含めて読み取り、その上で区別して初めて
正しく伝わりやすい効率的なコミュニケーションが実現できるといえよう。
お読みいただき、ありがとうございました!