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2020年度 第13回GA文庫大賞 研究

私は川崎中と申します。かわさきあたりと読みます。
10年ほど前にライトノベルの新人賞を受賞したことがあります。

ただその後は一切結果が出ず、商業出版とは無縁の人生を送っています。
noteでは、あの時なぜ受賞できたかの検証と、その時のやり方を言語化すれば改めて受賞できるのかの挑戦を行っていきます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

現在第17回GA文庫大賞に挑戦すべく、まず受賞作研究を行っています。
GAに応募する経緯はこちら。

今回は2020年度、第13回 GA文庫大賞について見ていきたいと思います。
受賞作品は次の6作品です。

ただ制服を着てるだけ(神田暁一郎)
奇世界トラバース 〜救助屋ユーリの迷界手帳〜(紺野千昭)
コロウの空戦日記(山藤豪太) 
ブービージョッキー!!(有丈ほえる)
恋を思い出にする方法を、私に教えてよ(冬坂右折)
どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる(相崎壁際)

全体感想

あれ……ラノベ……?

私の頭の中で肥大化したラノベという概念から大きくずれた作品がいくつかありました。(ただ制服を〜)は社会派すぎるし、(コロウの〜)は戦記すぎるし、(恋を思い出に〜)は少女漫画すぎました。

(奇世界〜)は硬質気味なファンタジーで、(ブービー〜)は職業小説あるいはスポコン的な側面も強く、題材を見てもラノベらしいラノベではありません。

(どうか俺を〜)のみが私の頭の中で肥大化したラノベという概念そのものでした。

わかりあい、受け入れる

全体的にまったく別の種類の受賞作群でした。共通点を探すとすれば、主人公、あるいはヒロインが誰かを受け入れて強くなることかなと思います。

(ブービー〜)などが顕著ですが、馬ヒロインと分かり合うまではうまく力を発揮できません。(コロウの〜)などは日記形式で、人との交流に関し引いた文章に感じますが、それでも最後は恩人の好意を受け入れます。

登場人物には何らかの意地があり、それを乗り越え、受け入れることで物語は感動が生まれるのだと思います。

それにしても……

とにかく受賞作に共通点が少ないし、ラノベっぽさが少ない作品も半数。毎回こういう受賞結果だと本当に傾向がわからない賞ですが、2021年、2022年はそんなこともなかったのでやや例外気味の回だったと信じたいところ。

もっとも、傾向がないのであれば面白い作品を書くしかなくなるのでそれはそれでいいことの気もします。

作品別感想

ただ制服を着てるだけ(神田暁一郎)

【セールスポイント】エロと社会派

よくラノベレーベルで出せたなという内容。受賞作の研究として読むには読んだが、多分この作品は例外なので意味なかったかも。大変面白く、号泣しながら読み終えました。

内容も、主人公のコンビニ店長の様になり方もラノベとは思えないものだった。ヒロインの病み方も、実際問題明るい未来の想像を困難にするし、暗い。ただし、主人公がヒロインを助けようとすることで、自分が救われるという構造は他の受賞作と共通するところではあり、またそれが強烈で大変感動した。
ただ、公募の受賞を目指すのであればこの作品に引きずられないようにしなければと思う。

奇世界トラバース 〜救助屋ユーリの迷界手帳〜(紺野千昭)

【セールスポイント】アクアリウムを見るような世界観

作り込まれたファンタジー世界観で、本当にそこに生態系を感じるような書き込み。主人公よりも、ヒロインの成長を描く話で、精神的に強くなっていく様に熱くなる。

ハイファンタジーとはこうやって、現実とは全く別の世界観を楽しむものなんだなと思わせる。その世界をキャラクターが冒険しているだけで発見があり、楽しめる。異世界のモンスターは天災のように描かれており、人間はいかにちっぽけかということを思い出させてくれる作品。

コロウの空戦日記(山藤豪太)

【セールスポイント】航空技術と空戦

まったく別世界観ではあるものの、太平洋戦争を思わせる舞台だったため驚きました。戦術論や技術論が熱く、そういった点も想像上のラノベの読み味とはだいぶ異なるが、とにかく凄みを感じる作品。

主人公の日記形式で物語は進む。戦記。登場人物はおじさんばかりで、そういった意味でも想像上のラノベから遠い。死にたがりヒロインはかなりハイスペックで、様々なことをうまくこなすのには俺TUEEのような爽快感。

ブービージョッキー!!(有丈ほえる)

【セールスポイント】競馬が舞台のスポコンラブコメ

ジョッキーが主人公で繰り広げられるスポコンに、2人と一頭のヒロインが出てくるハーレムラブコメ。熱い作品。

一人称に癖があるが、ラノベらしさを感じる。競馬に関して詳しく書かれており、その舞台を楽しめる作品。癖のあるライバルとの競争や、昔の約束を守るために……のような展開など、熱い部分がたくさんあって、スポコンらしいスポコンだったと感じる。

恋を思い出にする方法を、私に教えてよ(冬坂右折)

【セールスポイント】他人の恋心を消す力

少女漫画的ファンタジー。主人公は女の子で、相手役の男がモテまくる珍しい構成だが、男が主人公だと考えればハーレムとも。切なく、最後には元気が出る話。

他人の恋心を消す能力が珍しいし、相手役の男の立ち回りがとても興味がひかれ、面白い。女性主人公で、相手役が不良っぽい男子というのはラノベではかなり珍しい気がする。全体的には少女漫画ライクで、上手くいかない恋心の切なさを味わえる作品。

どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる(相崎壁際)

【セールスポイント】高校生活2週目でぼっち脱却作戦

ぼっち系主人公とたくさん絡んでくる系メインヒロイン。多くのヒロインが絡んでくるハーレム系で、ラストはヒロインの思いと優しさに感動。

何か大きな問題を解決する系でないタイムリープは珍しい気がする。単に主人公をぼっちから脱却させるためにヒロインが奮闘してくれるのだが、主人公も要所要所で勇気を出すので応援したくなる仕組みもある。軽快な文章は楽しいし、感動もある作品。


というわけで、2022年、2021年、2020年のGA文庫大賞を見てきました。

あと、2019年だけ一通り見たら、総括して対策を考えようかなぁ。
でもこの年みたいに傾向掴めなかったらどうしよう……。

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