見出し画像

『新しい科学論』

書誌情報
村上陽一郎、『新しい科学論 「事実」は理論をたおせるか』、講談社、1979年

本書によると、科学が客観的・中立的であることはできないし、そうなることはありえないという。それは、観察や実験の過程には必ず人間の価値観が含まれてしまうからである。

私にとってこれは、もはや驚くべきことではない。同様の内容を別の本で読んだことがあるからだ。例えば、物理学は、中立性・客観性を最も追求してきた学問であるとされる。しかし、その物理学が出した結論が、人間(観察者)の主観を排除することはできないというものである。まさに、本書の主張と同じことを言っている。私がこのことを知ったのは最近出版された本だったことを踏まえると、1979年という時点でそのことを指摘していた筆者の先見性?には目を見張るものがあるのではないかと思われる。

これまで、人文系の学問に対して、「偏見だ」とか「一人よがりだ」といった攻撃がなされてきたし、今もそれは続いているように思われる。しかし、それは人文系だけでなく、科学全般にたいして言えるものであることがわかる。とはいえ、どの学問でも人間の主観を排除できないとはいえ、なるべく主観を排する努力は続けなければならないだろう。そうしなければ、根拠に基づかない解釈だったり、曲解や拡大解釈だったりといったデータの恣意的な運用を認めることになってしまうからだ。

玉石混淆の情報が溢れている現代社会において、適切なデータの取り扱いをしている情報源を見つけ、それを守り、広めていくことは重要なことだと思われる。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000129000


いいなと思ったら応援しよう!

なおさん
サポートしていただいた場合、書籍の購入にあてさせていただきます。