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自由は平等とペアになるのであって、不平等とは両立しない

書誌情報
山﨑耕一『フランス革命』刀水書房、2018年。

本書は、フランス革命の概説書である。また、2010年代の研究成果も参照しており、最新の研究動向を盛り込んだ内容となっている。

革命の前後で自由の概念が変化したこと、革命に際して外国勢力が介入してくることへの恐怖、諸勢力が織りなす勢力争い・主導権争いとその複雑さなどを窺うことができるような内容になっている。高校世界史レベルの叙述からさらに一歩踏み込みたい人には楽しめる本になっているのではないだろうか。

本書を読んで思ったことは、主に2つある。

一つは、特に革命の前半は、偶然の要素が重なり合わさっていたということである。ルイ16世の優柔不断、革命側の動きなどが、すべて革命を加速させる方向に作用したように思える。逆に言えば、どこかひとつでも偶然の要素が欠けていれば、革命は国王の処刑など、フランスの国制を変えるところまでは至らなかったのではないかと思われる。

歴史的に有名な出来事は、意外と偶然という要素が重要である。一か八か、という局面で好機・幸運を掴めた時、その行動は歴史に名を残すような出来事になるのだろう。ただし、そうした運を掴むためには、何かしらの蓄積が必要だろう。フランス革命の場合、それは国王あるいは食糧供給の不安定、重い税負担などといったことに対する不満が蓄積されていた。それが革命の全国的な拡大への動機となったのである。

もう一つは、痛みを伴う改革を進めることは容易ではないということである。フランス革命が本格化する以前、財政が窮乏していたフランスでは、歳入拡大のための改革が名士会で議論された。当時のフランスでは、身分を単位として課税制度が構築されていた。そこでは、高位の人物が徴税対象から外されていた。そこで、財務総監のカロンヌは、身分とは別の括りを用いて徴税制度を構築するという提案をした。

しかし、名士会は既存の徴税制度から恩恵を受けていた人たちの集まりだったため、カロンヌの提案は賛同を得られなかった。改革を提案したカロンヌは、財務総監を退任せざるを得なくなった。

カロンヌの後任として財務総監に就任したのは、カロンヌ批判の急先鋒をしていた人物であった。しかし、その人物もカロンヌの同様の提案をして、名士会によって拒絶されることになる。カロンヌの提案を超える案がなかったのである。

カロンヌ案を超えるアイディアはない。また、現状を変えるためには、自分たちも不利益を被るような改革をするしかない。そのような共通認識は、誰もが持っていた。しかし、自らに不利な、痛みを伴うような改革はしたくない。痛みを引き受けるのは、自分たちではありたくない、というのである。

その選択の結果が、フランス革命へとつながる。それにより、貴族などが有していた様々な特権は、切り崩されていくことになる。小さな痛みを取らないことで、後により大きな痛みを被ったといえる。

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なおさん
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