8.29 うみべの女の子
いつかの記憶を思い出しました。
前も見えない大雨の中を傘を握って歩いていました。
前からの風に耐えるように両手で握っていた傘は、急に風向きを変えてあっけなくひっくり返ります。
スクールバックを背中にしょってスカートがめくれないように気をつけていたのに、急に変わったその風向きで、僕の気遣いは何の意味もなくなっていました。
湿度でうねる僕の少しめんどうな髪を家を出る時にはあんなに丁寧に整えてきたのに。
朝につけたヘアスプレーと汚い都会の空気の匂いが鼻先にへばりついてきます。
右目から左耳にかけて覆いかぶさる髪に、僕の視界はさらに悪くなります。
左目には水分でふやけた世界、右目には髪の隙間でできた砂嵐のような世界が広がっていました。
只ザーザーと降り注ぐ雨音の中、たまに真横を通り過ぎる車が水たまりの水を弾く音が聴こえてきます。
僕はその度に立ち止まって、汚い黒い水がいっきに飛び散るのを眺めていました。
水を含んで重くなった革靴を脱ぎ捨てて部屋に入ると、いつもよりも静寂を感じます。
薄くなったワイシャツ。
濡れた靴下でてきた足跡。
張り付いた下着でできた赤紫の摩擦の跡。
早くお風呂に入らないと。
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