売れない時代に新聞はどうあるべきか
先日、時代の変化をよく示すようなニュースを見ました。
7月の時点では、毎日新聞が富山県内での配送とコンビニ等での販売も取りやめるというニュースでした。
47都道府県すべてで購入できた全国紙なので衝撃でしたが、8月に入り、産経新聞もこの動きに追従することが報じられました。
両新聞とも、9月末をもって販売を休止する理由に、富山県内での販売数減少やコストの高騰を挙げています。
テレビやネットの普及に伴い、新聞が売れない時代になって久しいですが、そんな時代に新聞はどうあるべきなのか考えていきます。
新聞が売れない時代
北陸では、地方紙が半数以上のシェアをとっていることも2紙が撤退した理由に挙げられそうですが、社会全体として新聞が売れないように変化していることは疑いようがありません。
次の画像は一般紙の発行部数と世帯数の推移を折れ線グラフにしたものです。
買い手になり得る世帯数は増加していますが、新聞の発行部数は減り続けています。
2000年は4700万部ほどあった部数は、2023年には2600万ほどに減少していることからも減少の激しさが分かります。
速報性ではテレビやネットに勝てない
総務省がまとめている令和3年版情報通信白書によれば、いち早く情報を得るために利用されているのは、テレビ(55.3%)、ポータルサイトやソーシャルメディアによるニュース配信(40.7%)、検索エンジン(32.7%)の順になっています。
ニュース配信と検索エンジンはどちらもインターネットによるものなので実質はネットが70%を超え、テレビが55%で次点ということになりますね。
新聞はトップ3にも入っていませんが、取材をして情報を集め、それから記事を書き、印刷をして朝夕に届けるという手順を踏む必要があり、仕方がないことは言うまでもありません。
言うまでもないかもしれませんが、起きたことをいち早く伝えるという速報性では新聞は全く歯が立たないということです。
にも関わらず、新聞を発行する際、ギリギリ朝刊に間に合ったor間に合わなかったといった話を聞きます。
全く勝ち目がない速報性を確保することは無駄なので、それ以外の新聞の良さを活かす紙面作りをしなければ部数の減少は止められないと思います。
新聞がテレビやネットに押されているとはいえ、それでもまだ新聞に活路はあります。
信頼できるメディア+みっちり取材&調査で勝機を見出せ
前述の令和3年版情報通信白書によれば、「世の中の動きについて信頼できる情報を得るメディア」については、テレビ(43.7%)、新聞(34.6%)、ニュース配信(29.1%)の順になっています。
つまり、発行部数が減り続けていても一定程度の信頼はまだあるということなのでしょう。
そこで、勝つ見込みが無い速報性を捨て、じっくりと時間をかけた内容の濃い報道で勝負してはどうでしょうか。
たとえば、今だったら自民党議員による裏金事件は去年末頃からずっと話題になっているので、事件発生から今までの経緯を関係者のインタビュー等を交えてまとめたり、自民党を離党することになった世耕参議院議員や塩谷衆議院議員が今何を思っているのかを取材したりです。
同じように政治関係では、政権交代が起きやすいように小選挙区制と比例代表制が導入されて20年以上が経過しますが、自民党が下野したのはたった3年ほどだけでした。
これは当初期待した効果が出ていたのか、現状の制度について海外と比較したり、日本の議院内閣制を踏まえて分析したりすることもできるでしょう。
新聞のような紙媒体では、画面と違って長時間読み続けていても疲れにくいので、その点も相性が良いのではないでしょうか。
新聞は速報性では勝つことができないので、いっそそれは捨て、じっくり読ませる記事に集中することで活路を見出してほしいと思います。