かわいそうじゃない
YouTube の「Music for LEADING」でサティの曲になったあたりで、ピンポンが鳴った。
kindle を閉じてインターホンに応答する。
明日到着のはずの宅配便が、日を早めて届いた。
電気ひざ掛け。
先日、お隣の友人のお宅にお邪魔したとき、寒かったら使ってと渡されたそれが、思いのほか快適だった。
もっと熱線?でごわついているかと思ったが、案外柔らかい。
そして温かさがそんなに電気的?じゃない。
読書やテレビ視聴の際、夏場はソファーに座っているが、冬は炬燵に入る。
PCやテレビ画面に向かっているときはついつい前のめりの姿勢になるし、伸ばしている膝を、気づくと曲げていて正座や横座り(母はこれを「芸者座り」と呼んでいた)になりがち。
なんだか体によろしくなさそう。
一人暮らしになるまで、うちにはソファーがなくて年中床生活だったので、ソファーに座ってお茶を飲みながら本を読むシーンに憧れていた。
それで離婚後、お金を貯め始めて割と早いうちにニトリで買った。
しかし、冬場はどうしても炬燵の暖かさに屈してしまう。
数年前、叔母が亡くなったときの香典返しはカタログギフト。
申し訳ないが、カタログギフトで「これ、いいね!」と思ったものが載っていた試しがない。
安いコースだからだろうか。
大体は「あってもいいか」という思いで、「でも自分では絶対買わない」というものを選ぶ。
そのとき選択したのが「足温器」である。
これがあれば、寒い季節も炬燵ではなくソファーを使うのではないか。
もともと私は、手足が熱い。
手の冷たい人は心が温かいというのが真実ならば、逆の私は冷酷であるというのは当たっているかもしれない。
手袋もめったにしないし、冬も布団から足先を出して寝る。
ベッドメーキングされたホテルのシーツは、まず挟まれた裾を全部出す。
家では素足。
子供のころは、靴下を履かせても履かせてもすぐに脱いだそうだ。
しかし、ここ数年は、膝から下がスースーするなと思う冬が多くなった。
夫がいたころは家でも緩い恰好がゆるされていなかったので、余暇のひとときをスウェットで過ごすというのも憧れのひとつだった。
とはいえ、モコモコしたりトロミのある人工素材は苦手で、綿100%に限っているから、保温機能はあまりない。
足温器が届き、足を入れたら温かいのは確かだが、数分後その閉塞感に耐えられなくなった。
ベッドメーキングされたホテルのシーツと同じ。
そして、押し入れにしまわれたまま、去年も一昨年も出さなかった。
そんなものがあることさえもう忘れていた。
思い出したのは、遊びに行ったお隣さんが、モコモコの厚手の靴下を履いていたからで、薄い夏用の靴下姿だった私を見て(それでもよそ様のお宅だというので無理やり履いてきた)びっくりしていたから。
真冬でも家では素足で、帰ったらもう秒で玄関で脱ぐよと言ったら、さらに仰天していた。
私よりいくつか年上の彼女は「若いのねぇ~」と言ったけれど、うんにゃ、若くない。
実際、足は冷たい。
だから炬燵に入るのだ。
押入れを開けると、ほぼ新品の足温器。
再挑戦してみると、以前ほどの閉塞感はない。
いやなに、耐えられなくなったら足を出せばいいのだ。
そして、冷たいと感じたらまた入れる。
たまに自分でも自分の融通の利かなさにうんざりする。
というか、理解不能になる。
使い続けているうちに、冷たさを感じるのは足先ではなく、むしろ膝のほうだと気づいた。
そこに隣宅での初電気ひざ掛け体験。
もう若返ることはないのだし、今年より来年、さらに再来年と、たぶん寒さや冷えがもたらす病も増える。
貯めてないけど貯まっていたカードのポイントを足してポチった。
ここ数日、読書よりテレビ寄りだったのをすこしだけシフトチェンジ。
国会も代表質問より予算委員会が見たい。
昨夜は、12時過ぎに寝落ちするまで、オフタイマーでテレビ局の会見をつけていた。
長時間、応対せざるを得なかった局の経営陣に対して「かわいそう」という声もあったが、私は全然そうは思わない。
不祥事があったとき、責任を問われ、釈明を求められるのがその地位であり肩書であり報酬であり権力なんだよ。
「老人」であることで同情するムキもあったが、なら役員就任前に高齢を理由に辞退するか、役員定年を設ければいいこと。
老齢を承知でその職を請けたからには、それにともなう対応も引き受けるのは当たり前だ。
でも、トイレ休憩だけじゃなくて、夕食を摂る時間くらいはあったほうが良かったね。
記者側の要領を得ない質問にも結構失望した。
私はいかなる性加害や、それを容認・助長する組織はゆるすまじと思っているが、乱暴な言葉遣いや横柄な態度など、幼稚に見える記者の対応もあって残念だった。
こういうところから「テレビ局がかわいそう」という感覚が出たのだろうが、それはお門違いだろう。
かわいそうなのは、被害者はもちろんのこと、何も知らずに巻き込まれて世間の白い眼にさらされる一般社員や損失を被る関連会社や取引先のほうである。
今日になって辞意表明したフジテレビの遠藤副会長のお父様が遠藤周作氏であることを初めて知った。
だからなにってこともないけれど、日枝取締役と港さんはバラエティ、就任した清水新社長はアニメ畑の出身と聞いていたので、報道とかドキュメンタリー、あるいは経営を専門的にやってきた人はいないのかなぁ、出世しにくいのかなぁと思っていた。
遠藤さんの担当にドラマが多いのは、検索して先ほどわかった。
でもドラマ畑というより、広報畑の人なのね。
いずれにしても、昭和の価値観を引きずったおじさん(おじいさん?)がずらっと並んでいた。
そういう私もしっかりおばさん(おばあさん?)になっていることは、膝が感じる冷えが証明している。
今日は炬燵から出て、ソファーに腰を下ろし、サイドテーブルに紅茶のカップなど置き、足先を足温器から出したり入れたりしながら kindle を読んで過ごしている。
弱に設定した電気ひざ掛けは、まことに心地良い。