宝くじに当たったら もりたからす
宝くじを買ったことが一度もない。なぜ、と問われても困る。
私はアルゼンチンに行ったことがないし、実用イタリア語検定を受験したこともなければ、ワカケホンセイインコを飼育したこともないが、いずれも明確な意思に基づいた選択ではない。
それらはただ、これまでの人生において私の認識の埒外にあった、というだけのことだ。
しかし多額の現金が不意に手に入ったら愉快だろうなあ、とは常々思っている。はっきり言って私は、この世の大体の物が欲しい。
手帳の空きページに記した「欲しい物リスト」は既に見開きにいっぱいとなり、それでもまだまだ我が物欲はとどまるところを知らない。
仮に私が宝くじの高額当選者となったら、まず何を買うだろうか。
候補1・高級腕時計
→長年、欲しいっちゃ欲しいけど絶対G-SHOCKの方が便利なので購入に至らないのが機械式高級腕時計だ。
私は「アフターサービスの時間&金銭コストを考えると海外ブランドはどうもなあ」という消極的国産主義者なので、買うならグランドセイコーだろう。本当は手巻きが良いけれど、選択肢から考えると自動巻きが無難か。
候補2・高級自転車
→ブロンプトンの折りたたみ自転車が欲しい。ダホンも良いけど、やっぱりブロンプトンの風情はたまらない。
現在の愛車キャリーミーが折りたたみ、ノーパンクタイヤ、変速無しと私の自転車に対する変なこだわりにドンピシャなので、こちらもよっぽどの大金が舞い込んでこないと買い替えないだろう。
候補3・将棋盤、駒
→現在、自宅の和室で愛用しているのは祖父の形見の将棋盤と、誕生日に将棋会館で購入した桜材の駒。この組み合わせはどう考えても最強なのだが、将棋盤というやつは大変に重いので、移動が面倒だ。
別室据え置き用にもう一組、それも最高級の本榧の盤と、黄楊の駒が手に入ったらそれこそ望外の喜びというやつだろう。棋力が向上した気になってぐいぐい攻め続け、角の利きを見落としてあっさり投了する未来まではっきり見える。
どうも私は「よりランクが上の商品を手に入れた上で、今ある物も使い続ける」という発想に縛られているらしい。
そういえば社会人になってからも学生時代とほとんど生活様式や出費の傾向が変わっていないし、いまひとつ当たり甲斐がなさそうだから、やっぱり今後も宝くじは買わないだろう。
【本日の余談コーナー】
将棋会館の売店には様々なランクの駒が並んでいたが、ケース内に一つだけ、木材の名が記されていない駒があり、それは最安値で売られていた。
店員に種類を尋ねたところ、それなりの時間をかけて調べた上で「こちらでは分かりかねます」とのことだった。
私はいまだに
「将棋会館で将棋の質問して答え出なかったら迷宮入りじゃん」
「謎の木で駒を作って一番安い値段で売るの怖くない?いや、高い方が怖いか」
などと考えてちょっと笑ってしまうことがある。