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もりたからす 短編集

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#小説

【短編小説】習作・夢の話・久保さんとマヨネーズ  もりたからす

【短編小説】習作・夢の話・久保さんとマヨネーズ  もりたからす

ひどい暑さのせいで、歩行者用信号機の色が一向に変わらない。辺り全てに陽炎が立ち、横断歩道の白さも歪む。この街はひっくるめて、蜃気楼かもしれない。

振り向くと、少し遅れて下校する久保さんがいた。僕は初めて、赤のままでも良いと思う。そう願うとすぐに、信号は青に変わった。渡ってしまい、先のベンチで彼女を待とう。

僕の隣には、カピバラがいた。どうやら僕の連れらしい。車線側を歩く世界最大の齧歯類は、もご

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【短編小説】大怪獣の木像  もりたからす

【短編小説】大怪獣の木像  もりたからす

アイドルくずれの姉が、ローカルラジオ番組の中継を担当していた。

「さあ、そしてみなさん、お待ちかねですかね。こちらが、その、大怪獣の、えー、銅像、あ、木像なんですね。大怪獣の木像です。
うわー、すごいですね。なんか、リアル。すごいですね、これ。制作に当たってはご苦労も多かったそうです。いやー、すごい。
こちら、なんと30個限定での生産ということでね、欲しい方はお早めに、ということです。

さあ、

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【短編小説】習作・夢の話・戦争  もりたからす

【短編小説】習作・夢の話・戦争  もりたからす

ちゃちな国産単眼鏡で、私はそれを見た。

敵方の艦上で一人の老人が捕らわれ、先程まで司令官室、あるいは一等個室と呼ばれていた部屋、情勢の加減で牢屋となった自室へと連行されて行く様を。

しかし勝利の感慨は一瞬のことだった。まだ相手方の艦影が残る最中に、概念としての軍閥がやって来た。

概念としての軍閥は支給品より質の良い、同盟国製の双眼鏡を持っていて、事の成り行きを早々に理解していた。彼らは局地で

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【短編小説】習作・夢の話・神社  もりたからす

【短編小説】習作・夢の話・神社  もりたからす

私は小学生の姿で、早朝の境内に立っていた。曇天。集団登校の待ち合わせは石灯籠の脇と決まっているのに、班の仲間は誰も来ない。

斜向かいの八百屋から出てきた店主が、大銀杏の先端めがけ、空砲を放つ。スズメとヒヨドリが一斉に北東へ飛び立つ。

私はなぜだか彼に、花を贈りたいと思った。しかし境内にはヤマゴボウの実ばかりが成り、タンポポ一つも咲いていない。

振り返ると、石段の先、神社の中で独演会が始まって

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【短編小説】習作・夢の話・炎天下  もりたからす

【短編小説】習作・夢の話・炎天下  もりたからす

夏のことだ。母方の祖父がパイプをくわえて焦れていた。初めて見るそのパイプがブライヤー製だと、なぜか私にははっきりと分かるが、それが喫煙具であることには思い至らない。始終なにか固いものを噛んでいないと収まらないのなら大人というのは不自由だ、と考えていた。

祖父は車を出す準備をとうに済ませていた。それなのに、祖母と母とが姿を見せない。駐車場に待つ祖父は、いつもの麦わら帽一つで炎天をやり過ごし、しきり

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