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炭水化物は敵か味方か? 〜飯テロと戦う社会人の血糖値サバイバル〜
私はご飯や小麦粉系の食品を食べると、びっくりするほど眠くなる。
お昼休み、オフィスのデスクに突っ伏している人を見かけることがある。
彼らは仕事に疲れているのではない。
昼食後の血糖値スパイクの犠牲者だ。
血糖値が急上昇し、それを抑え込もうとインスリンが大量放出され、その結果、体は「今すぐ寝ろ」と命令を出す。
これが、眠気の正体。
私も例に漏れず、この現象に振り回されてきた。
特に会議中。
隣の同僚が熱心に議事録を取るなか、私はまぶたのシャッターが落ちるのを必死で阻止している。
気づけばボールペンが手からスルリと落ち、反対側に座る上司の視線が突き刺さる。
「寝てないです」と瞬時に取り繕うが、目が半分閉じているのがバレバレだった。
このままでは社会人生命が危うい。
そこで私は決意した。
ランチタイムの10分間は寝る。
たとえ社内の憩いスペースで、背もたれのない椅子に座ったままだろうと、目を閉じて瞑想するのだ。
しかし、それも完璧な解決策ではなかった。なぜなら、
たまに仲間とランチに行くと、寝る時間がゼロになる。
突然の緊急会議でお昼休憩が吹き飛ぶ。
カフェに誘われると断れない。
そう、現代社会において「確実に昼寝ができる保証」なんてものは存在しない。
そこで私はもう一つの解決策を編み出した。
「米やパン、麺を食べなければ眠くならない」
米が食べれないなら、オートミールを食べればいいじゃない!
とのことで、オートミールが主食になった。
オートミールは血糖値の急上昇を防ぐので、眠くならない。
おまけに腹持ちが良い。
最初は「これって鳥のエサでは?」と思った。
しかし、工夫次第で何とでもなる。
味噌汁にぶち込めば和風リゾット、ヨーグルトと混ぜればおしゃれな朝食。オートミールは味付け次第でどんなキャラにもなれる。
まさに、大根的な立ち位置の食材。
こうして私のオートミール生活が始まり、3年が経った。
眠気との戦いに終止符を打ったはずだった。
しかし、人生とは皮肉なもので、新たな問題が浮上した。
「オートミール以外を食べると即、泥酔状態になる」
例えば、休日のランチに友人とピザを食べたとする。
食後10分後、私はテーブルに突っ伏す。
「お前、大丈夫?」と友人に肩を揺さぶられながら、頭の中では「やっちまった……」と後悔している。
車を運転する日は、米やパンは禁忌。
仕事中にうっかり炭水化物を摂取すれば、その午後はコーヒーを点滴レベルで摂取しなければならない。
だが、この生活を続けるうちに、思いがけない出会いがあった。
『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』
この漫画を読んで衝撃を受けた。「あ、同士がいる……!」
もちづきさんは、圧倒的な食べっぷりと飯テロ級の料理描写で私を魅了した。
気づけば、画面の前で「わかる、わかる」と頷きながら、涎を垂らしていた。
思えば、私は昔から食べることに情熱を注いできた。
兄と一緒に読んだ料理漫画の影響で、うっかり本のページにヨダレを落とし、兄貴に怒られたこともある。
「本に食べ物を落とすな!」
「いや、違う……これはヨダレだ」
そんな私が行き着いたのは、「ご飯を食べたら全力で楽しむ」というシンプルな結論だった。
食べたら、もう抗わない。
たとえば、夜。
ご飯を食べたら、もう寝る準備。
どうせ眠くなるのだから、最初から受け入れればいい。
お酒を飲んだわけでもないのに、泥酔したようにぼーっとしている。
でも、それもまた心地よい。
好きな人と美味しいご飯を囲む時間は尊い。
だからこそ、私は食後の眠気さえも楽しむことにした。
「眠くなるってことは、それだけ満足できる食事だったってことだよな」
そう思えば、なんだか得した気分になるのだ。
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