ロマネスク教会のコンクの地獄(煉獄)絵図ー中絶・堕胎
フランスのオック地方にあるロマネスク教会コンク(Conques)の地獄絵図の解読はエミール・マールの本に載っているけど全て載っているわけではない。アンブロワーズ・セグレさんによるコンクのタンパンの詳しい解説がある。ただし、学術的に認知されたものかわからない。引用文献で目立つのはル・ゴフの煉獄の誕生くらいである。
https://www.art-roman-conques.fr/english/step5.html
直に読んでもなかなかわからないのでgoogle機械翻訳(以前に手掛けたもの)にかけてみたら色々わかって持っている本で調べ始めたら収集がつかなくなってきたので、今日はこれを報告しておしまいとしたいが、美術を調べているうちに政治に入りそうで引き返すべきかという話。
上の写真は私が3十数年前に撮影したコンクのタンパン。トップ画像はキリストから見て左の一番はじを引き伸ばして切り出したものですが、先のサイトによると、真ん中より上の悪魔が抱いているのはなんと妊婦のひっくり返した身体で頭は燃えたぎる窯に入れられている。なんとこれは堕胎の罪なのだ。窯には堕胎ハーブが入っており、その窯の下にはヒキガエルと蛇があしらわれているとのこと。この写真でも言われてみればなんとなく。
今日でも堕胎が許されるのか罪なのかアメリカでは争われている。テキサスではロー対ウェイドの判決があるにもかかわらず、あるいはあるからこそ、心音が聞こえたら(妊娠6周目)堕胎ができない(どんな妊娠でも)法律が成立して政府が連邦最高裁に提訴するという事態になっており、最高裁では容認された。最高裁判事は保守派の方が多い。その人たちからみたらこれは正しく地獄の図で女性の権利をふみじる絵と映るだろう。
サイトの記事を読むと、旧約聖書のエレミヤ書7:31にある、「彼らは憎むべき物を置いてこれを汚した。彼らはベン・ヒノムの谷にトフェトの聖なる高台を築いて息子、娘を火で焼いた。」(聖書、新共同訳、日本聖書協会1991)エルサレムの南にあるゲヘナのトフェスで子供たちを生きたまま焼くトフェスを思い起こさせるとのことです。
フランスでも「仏政府が若い女性の避妊を無償化、中絶件数の高止まりで 18年におよそ23万件」との報道がされている。当時は子供を減らすために堕胎が行われていたのだろう。プラトンには容認の記述があるらしい(未確認、出典失念)。
手持ちの中世の本をみたけど女性についての話はあるけど、堕胎については見当たらなかったが、当時は女嫌いの文化というのが当時の証言からわかった(「同時代人の見た中世ヨーロッパ」アーロン・Ya・グレービッチ)。神の似姿としてアダムが生まれたので、イブなる女は地位が低いらしい。
「女嫌い」は男が支配している社会では「女嫌い」となるべくしてなっているのではないかと思う。ギリシアの哲学の黄金時代でも女性には教育が施されなかった。ヘレニズム時代でも「女性の世界は、秘められた世界であるからには人を欺く。・・・まず、身体にかんして起こりうる疑問。装飾で隠されていても身体は、あらわにされると人の期待を裏切るかもしれないのだ。」(ミシェル・フーコー「性の歴史 第3巻pp290)
アメリカ黒人のヒップホップも女嫌い文化と言われる。男はピンプとして君臨し女を操る。日本でも女の地位は低い。ある日本の女性政治家がCNNで日本の女性の地位の低さについて発言していた。女性の人権を低いままにしておきたい人々が男も女でさえも多いのだろう。
ところで、加藤隆先生も「キリスト教の本質」で取り上げていたが、マタイ5:27-29でイエス・キリストは言っているではないか:
そこで提案:中絶する妊婦を罰するのをやめて、欲情した男というのは流石に範囲が広い(ほとんど全員?)ので少なくとも「中絶せざるを得ない妊娠をさせてしまった男」の目をくり抜くということにしたらどうだろうか?
このように考えるとそんなことはしそうにないので、今でも男には甘い都合の良い社会を温存していることがわかる。