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天文学者のひとり言(14) 谷川俊太郎で思い出すこと [6] 『二十億光年の孤独』に出てくる火星語の起源
『二十億光年の孤独』に出てくる火星語
以前のnoteで、谷川俊太郎の詩『二十億光年の孤独』には不思議な火星語が出てくるという話をした。
それは次の部分だ。
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
ネリリ、キルル、ハララ
これらが火星語として使われている。確かに耳慣れない言葉だ。谷川はなぜこのような言葉を火星語に採用したのだろうか? 「思いついただけ」と言われればそれでお終いだが、気になるところだ。
そう言えば『日本の名詞一〇〇』があった
数年前、少し詩に興味を覚え、2冊の文庫本を買ったことを思い出した。次の2冊である(図1)。
[1] 『心がほっとする日本の名詞一〇〇』彩図社文芸部、彩図社、2013年
[2] 『繰り返し読みたい日本の名詩一〇〇』彩図社文芸部、彩図社、2010年
ただ、チラッと読んだだけで、2冊とも書棚にしまってあった。
最近、谷川俊太郎の詩に興味を持ったこともあり、久々に書棚から取り出してみた。谷川の詩は収録されていないが、多くの著名な詩人の詩が収められている。
![](https://assets.st-note.com/img/1736583157-wYSOiLab0J9AQt1vB2KgHMnu.jpg)
草野心平の詩『おれも眠らう』
『心がほっとする日本の名詞一〇〇』を読んでいたら、気になる詩が目にとまった。草野心平(1903-1988)の詩『おれも眠らう』である(図2)。1928年に出版された詩集『第百階級』に収められた詩である。
不思議な詩で、「るるり」と「りりり」の二語で読まれている。詩集『第百階級』では蛙がテーマになっているので、そのせいだろう。
![](https://assets.st-note.com/img/1736583201-SOxAGB4LYuCRFVhWbDQ7X2yi.jpg)
たしかに不思議な詩だが、これを読んでいたら、谷川の『二十億光年の孤独』に出てきた火星語、「ネリリ」、「キルル」、「ハララ」が思い浮かんだ。ひょっとして、谷川は草野心平のこの詩集を読んで火星語を思いついたのだろうか?
『詩人なんて呼ばれて』にある尾崎真里子の指摘
そんなことを考えながら、『詩人なんて呼ばれて』(谷川俊太郎、尾崎真理子、新潮社、2017年)を読み返していたら、次の文章を見つけた。
一九四八(昭和23)年、高校二年の春、校友会誌『豊多摩』に詩を発表されています、「青蛙」「つばめ」「教室にて」「あるもの」の四編。「青蛙」には草野心平さんの影響が見えます。 (69頁)
実際、「青蛙」には次の言葉がある。
くるる けりり くれれ けりり……
どうも火星語の起源は草野心平の詩にあるようだ。
これで一件落着か。