見出し画像

天文俳句 (9)天文学者が考えた「星(天文)の歳時記」

天文学者が語る星と星座への思い

note「天文俳句」では、星や星座は俳句の季語にならないことを話題の一つにしてきた。地球が自転しているため、見える星や星座の位置がどんどん変わる。そのため、ひとつの星、ひとつの星座をしてしても、季節を指定できない。結局、季語として残ったのは「月」、「天の川」、「星月夜」、そして「流れ星」の四つだけ。しかも、季節は天体が綺麗に見える、空気の澄んだ秋に限定されている。

なかなか厳しい状況が続いているが、天文学者もいろいろ工夫してきている。それは次の3冊に見ることができる。

[1] 『星の歳時記』石田五郎、ちくま文庫、1991年
[2] 『天文歳時記』海部宣男、角川選書、2008年
[3] 『宇宙吟遊 光と言葉 星めぐり歳時記』海部宣男、じゃこめてぃ出版、2009年

石田五郎と海部宣男はすでに亡くなられたが、二人とも著名な天文学者である。その二人が書名に「歳時記」という言葉を付けた。天文学という自然科学、俳句や和歌という文学。二つの広大な分野を橋渡しする努力はされていたのだ。

このnoteでは、上記3冊の紹介をするだけにとどめ、私見は述べないことにする。天文俳句を考える一助になれば幸いである。

なお、[1]についてはnote「天文俳句(2)季語における天文、再び」で紹介した。合わせて参照されたい。https://note.com/astro_dialog/n/nf48bd3d54c58

[1] 『星の歳時記』石田五郎、ちくま文庫、1991年

『星の歳時記』の表紙。


 
『星の歳時記』の目次。春夏秋冬、四つの章がある。

[2] 『天文歳時記』海部宣男、角川選書、2008年

『天文歳時記』の表紙。
 
『天文歳時記』の目次。春夏秋冬、四つの章がある。なお、新春は春に含まれている。

[3] 『宇宙吟遊 光と言葉 星めぐり歳時記』海部宣男、じゃこめてぃ出版、2009年

『星めぐり歳時記』の表紙。
『星めぐり歳時記』の目次。「光のことば」を冠して1月から12月に分けて記述されている。
『星めぐり歳時記』で紹介されている春の印象的な星座とパターン。なお、星の作るパターン(ここでは「春の大三角」)は星座とは別に「アステリズム(星群)」と呼ばれる。例えば、「北斗七星」も「アステリズム」である。
『星めぐり歳時記』で紹介されている夏の印象的な星座とパターン。
『星めぐり歳時記』で紹介されている秋の印象的な星座とパターン。
『星めぐり歳時記』で紹介されている冬の印象的な星座とパターン。

少し考えてみたい

二人の天文学者、石田五郎と海部宣男による、星の歳時記、あるいは天文歳時記の情報を紹介させていただいた。天文学者や天文ファンが日頃から親しんでいる星と星座は季語にならないので、歳時記とは無縁だ。しかし、二人はあえて書名に歳時記という言葉を配した。その意図はどこにあるのか? 私自身、もう少し考えてみることにしたい。皆さんもお楽しみください。

いいなと思ったら応援しよう!