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「生死の間にいる私たちができること」

※お檀家さまへお送りした2024お盆のお便りです。


お盆の施餓鬼法要でお檀家さまにお願いしたい、たったひとつのこと

曹流寺では毎年8/10にお盆の行事としてお施食(御施餓鬼)の法要を行っています。10人の僧侶が大悲心陀羅尼と甘露門というお経を読み、ご先祖様の供養のほか、無縁の方々や三界万霊に回向する法要です。ご供養は、先祖を偲ぶと同時に、自分の没後を想像する機会でもあります。
 
今年の8/10は土曜日です。コロナ禍が一服したこともあり、今回の法要では特に、小さな子供さんや20代、30代の若年層の方々にもぜひお声がけいただき、皆様お揃いでご参加ください。
 
「うちに子供はいないし、関係ないや」「子供はうるさいし、面倒くさいなあ」と、思われる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方にも大切な役割をお願いしたいと考えております。少々お時間をとっていただき、最後までお読みください。
 
昨今、曹流寺には坐禅をきっかけに仏縁を育まれる方が増えました。参禅者さんの中には「自分の菩提寺を知らない、行ったことがない」「観光寺院にしか行ったことがない」という方々が散見されます。故人の月命日の前後に僧侶がご自宅に伺う「月参り」や、お盆に精霊棚を設えて先祖を迎え、僧侶とともに供養する「棚経」をご存じない方もおられました。
 
日本の寺院数は約7万8000カ寺。数だけならコンビニエンスストア(約5万7000店)よりも多いです。かつては、人々の暮らしと寺院はもっと密接な関わりがあったものでした。しかし、家族のあり方や距離感が多様化した時代です。季節の行事や文化習俗は教科書や博物館などで「学ぶ」ものとなり、リアルな暮らしの中で自然に体験するものではなくなっていくのでしょう。
 
このような現実に直面した私は、仏縁に導かれた様々な世代が菩提寺に集まり、ご先祖様を偲んで手を合わせるという法要を、特に次世代の方々に「自分ごと」として体験する機会にしてほしいと考えるようになりました。
 
法要は、テーマパークや海水浴、花火大会などのイベントに比べれば、やや地味な行事です。しかし、お盆の法要は、曹流寺で開催する年3回の法要の中でも、いちばん迫力があります。正装した僧侶10名が、自分の先祖のために供養を行う光景を間近で見る機会はなかなかないでしょう。このような行事の存在をまず知ってもらうためにも、ダメモトで構いませんので、ご親族の方々にもお声がけいただきたいです。今回は、御施餓鬼についてのパンフレットも同封しました。

 
冒頭にも記しましたが「自分の代でもう終わり」「小さな子供は苦手」という方もおられるでしょう。もちろん、遠方の親族を無理に招いたり、知らない子どもの相手をしていただく必要はありません。

皆様にお願いしたいのはただ一つです。法要で参拝されるその後ろ姿を、たまさか曹流寺をきっかけに集うこととなった様々な世代に見せてあげてほしいのです。 
 
誰しも、人の手を借りずに生まれ育つことはなく、人の手を借りずに肉体の役目を終えることはありません。法要に集う老若男女の皆様一人ひとりが、生老病死を体現する生き証人なのです。その事実に思いを馳せることができる空間づくりのお手伝いをしていただければと願っております。
 
改めて、曹流寺の理念です。
1.救われない思いを抱えるあらゆる人に、坐禅という選択肢を提示する
2.坐禅の実践を行う場所として、生きた仏教を継承し続けていく
3."没後供養で救われる"という仏教信仰の礎の場所とすべく勤め続ける
 
マルシェやコンサートなど、境内でイベントを開催して地域貢献を行っている寺院もあります。曹流寺も、先々代の時代は囲碁や茶華道、小唄などの稽古場を提供するコミュニティセンターのような役割を担っていました。僧侶として人生を歩むと決意した以上、まずはご供養や坐禅会といった仏教に直結した行事によって貢献したいです。
 
「曹流寺が菩提寺で良かった」「曹流寺なら、自分の没後を安心して任せられる」と思っていただけるよう、皆様の心の聖地となるべく、精一杯お勤めいたします。
 
法要の後は食事でもしながら「若住職は、最近こそ僧侶らしいことを言うようになったけれど、実はアレコレ迷走していた時期もあった」「まだまだ危なっかしいから、しっかり監視しておくように」等々、話の種にして盛り上がってくださいませ。

皆様方の参拝をお待ちしております。
 
ご自宅にお伺いする棚経は、8/1~15の間に行います。8/11~14の間は、私の坐禅の先生である道宣和尚も担当します。

Q:棚経ってそもそも何?

A:日本には、お盆の期間に自宅に先祖をお迎えして共に過ごす風習があります。僧侶がご自宅に伺い、それぞれのご先祖さまにご供養をするのが棚経です。時期や内容は地域や寺院によって差があります。

お檀家さまとゆっくりお話する機会でもありますので、曹流寺では8月1~15日までと期間を広げ、お経10分の後に15分ほどお話する時間を設けています。もちろん、予定等がおありの際は、長居しませんのでご安心ください。

この棚経と、お寺で行う施食法要、お墓で行うお墓経の3つがお盆の行事です。多忙な現代では「自分のことだけで精一杯!」というのが、正直なお気持ちかもしれません。四季の行事に携わり、先祖を偲ぶ時間を持つことは、心のゆとりを取り戻すきっかけになります。そのお手伝いができれば嬉しく思います。

Q:何を準備すればいいの?

A:正式には、仏壇の前に精霊棚と呼ばれる祭壇を設えて盆提灯を飾り、蓮の葉、マコモ、ナスやキュウリに割り箸や爪楊枝を刺した「精霊馬」のほか、故人の好物などをお供えします。精霊馬はご先祖様の乗り物です。行きは早く到着するためにキュウリを、帰りはゆっくりお帰りするためにナスを使うのだそうです。ブロッコリーやアスパラガスなども刺しやすいです。折り紙で紙飛行機や船を折ったり、トミカなどミニカーを使ったりしてもいいですね。スーパー等で販売しているお盆用のお供えセットも利用できます。堅苦しく整える必要はありませんので、お迎えの準備をする時間も楽しんでください。

引っ越しやリフォームなどで仏壇がない家は、リビングや客間のテーブルの上座を使いましょう。ご位牌がない家はお写真でも構いません。介護施設等では別途手続きが必要なほか、僧衣での立ち入りができないこともあるようです。できるだけ協力いたしますので、施設に訊ねてみてください。

ご先祖さまに安心してもらうためにも、精霊棚のある期間は、ご家族はいつも以上に仲良く、お子さんは少しだけお行儀よくしてみてください。


堀部遊民(仏教徒ちゃん) 拝

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