
【絵本レビュー】 『カエルくんのおひるね』
作者/絵:宮西達也
出版社:すずき出版
発行日:2000年5月
『カエルくんのおひるね』のあらすじ:
雨が降らずに元気のないかえるくん。木の上でお昼寝をはじめます。そこへヌッと現れたのはこわーいかまきり。かえるくん、危機一髪!
『カエルくんのおひるね』を読んだ感想:
自称「昼寝の達人」です。多分日本では普通のことですが、海外ではどこでも寝られることは十分特技に入る一方、危険だと思われることも多いです。
前にも書きましたが、ロンドンに着いた当時の日曜はサンドイッチと新聞を持って公園で昼寝していました。(そのお話はこちらに)
そのほかにもロンドンではいくつかの公園に行って寝てみたことがありますが、やっぱり地元の公園が一番気持ちが良かったです。でも英語学校の先生には「危ないからやめた方がいい」と注意されましたけどね。
電車で寝るのも好きです。好きというよりガタンゴトンと揺られていると、知らずに寝てしまっていることが多いです。当時一年ほどシドニーに住んでいて、その時職場まで45分くらい電車に乗って行っていました。電車が一時間に2本しかなかったため朝も早く、一日中立ち仕事の後の帰り道、タイミングが合わず三十分電車待ちをして帰りが遅くなることも多かったので、常に眠い状態ではありました。通勤は都心から郊外へ行っていたので、電車は大抵空いていて静かでした。気づくと私はトロトロと眠りの世界へ行っていたようです。突然、肩を軽く叩かれ我に帰りました。顔を上げると車掌さんが切符の点検に来ていたのです。彼は「バッグを取られたりするから、寝ない方がいいよ」と言って次の車両へ行きました。そのあと、彼の言うことももっともだと思って頑張って目を瞬きながら起きていたのですが、あまりの眠さに頭が痛くなった覚えがあります。
スペインのマドリッドに着いたばかりの頃も、仕事が見つかる前は公園で、スペイン語の宿題をしたり本を読んだりして過ごすことが多かったです。ある初夏の日、いつものように本を読んでいると、ポカポカとお日様に包まれて私は眠気を誘われました。実は私、スペインに着いた翌日に財布をすられるという体験をしていたので、かなり用心深いつもりでした(それなら昼寝しないでしょ、と言いたいところですが。。。)。私は財布の入っているバッグを背中に敷いてごろりと寝転びました。初夏と言ってもスペインですから、日差しは結構厳しいです。それで私は腕時計を外してポケットに入れました。日焼けあとがついたら嫌だと思ったのです。そして腕時計を外したことは、我ながらいい考えだったと考えながら寝落ちしたのです。
また周りの雑音が戻って来て、私は目を覚ましました。寝ていたのはおそらく十五分くらい、長くても二十分だったと思います。背中に手をやって財布を確認。よしよし、ちゃんとありました。う〜んと伸びをして起き上がります。周囲はさっきと同じように見え、特に変わった様子も見えません。私は少し歩こうと思い、本をバッグに入れると立ち上がって歩き出しました。五メートルくらい進んだところで時計のことを思い出し、ポケットに手をやると、ありません。。。まずい!と思いさっき座っていたところに戻ると、そこには何もありません。私が寝ていたという痕跡さえありませんでした。私はぼんやりその場所を見つめましたが、もちろん時計は土から湧き出ては来ませんでした。
寝ている間にポケットから落ちて、その時に取られたのかもしれません。私がその場を去った瞬間に誰かが持って行ったのかもしれません。どちらにしろ、きちんとしまっておかなかった私が悪いのであって、誰を責めるわけにもいきません。でもね、あの時計は特別だったんですよ。大学の時付き合っていた彼とお揃いで買ったものだったんです。その思い出には全く執着心はないのですが、サイズといい、重さといい、ちょっと宇宙っぽいデザインといい、すごく気に入っていたんです。それが何よりも辛いのでした。
それ以来、私は時計をしなくなってしまいました。あの時計以外何をはめてもしっくりこないのです。ついでに指輪も取りました。たまにしていたネックレスも取りました。歩きながら音楽も聞かないし、現金も二千円以上は財布に入れないようになりました。どうせ取られるならしないほうがいい、と思ったのです。今いるベルリンは割と安全でスリの心配を始終する必要ないのですが、なんとなく習慣となってしまいました。公園での昼寝は。。。今もしています。家でパワーナップが主流となったこの頃ですが、それでも公園ででっかい空を抱きながらする昼寝は、やっぱりひとしお違います。
『カエルくんのおひるね』の作者紹介:
宮西達也
1956年静岡県生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。「きょうはなんてうんがいいんだろう」(鈴木出版刊)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。「パパはウルトラセブン」(学研刊)などでけんぶち絵本の里大賞を受賞。「おとうさんはウルトラマン」(学研刊)などの作品がある。 「ティラノサウルス」シリーズ初の幼年童話!
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