カネゴンに筆下ろしされたくなかった
本日はバレンタインデー。2月14日を迎える度、高校1年時の苦い思い出が脳裏に浮かぶ。
エロバカ時代
当時私は抜きざかりのお年頃。相手に求めるのは顔より下の部分であったことは否めない。
あの子のおティティをミーモーしたい。
あの子のミニスカートで雨宿りしたい。
あの子のフトモモを枕にして良い夢を見たい。
そんなことばかり考えていた。
消しゴムをわざと机から落としてスカートの中を覗こうとしたり、前の席から配られるプリントを貰う際に席を前の席に近づけてアクシデントキスを狙ったり、走り幅跳び後のポロリに期待してスコアを書く係を率先したり。その全てがエロへの道であった。
『昨日ついに童貞を卒業した!』という報告も定期的に耳に入ってしまう環境も宜しくなかった。話を聞く度に焦りは増して酷い行為が増え、結果として単なるエロガキとなってしまう。
当然そんな私のことを好きになってくれる女性は現れず、いつの間にか『アソー君に近づくとエッチなことをされる』という噂が全クラスに伝わってしまった。
季節は流れバレンタインデー
高1のバレンタインデー。クラスや学年で幾つかのカップルが誕生していたものの、敢えてバレンタインデーに告白する人なんて1人もいないだろうと予想していた。
そのためか、自分でも驚くほどリラックスして学校へ向かったことを覚えている。学校に到着し、いつものように下駄箱を開ける。
すると、、、一通の手紙が入っていたのだ。差出人は不明。
メッセージは
アソー君おはよ!
今日ちょっと渡したいものあるから、放課後に美術室に来てくれない?
渡すものはチョコしかないだろう。まさかの展開である。
ただ、自分で言うのもあれだが、あんなに醜態を晒していた私にチョコを渡す人などいるのか?女子のイタズラか、男がクラスの女子に協力してもらってイタズラを実行したのか?という疑問が生まれる。
一方でポジティブにも考えてみた。確かにエロ認定されてきたが、多少なりとも笑いにも変えてきた自負はあり、みんなの前では恥ずかしいのかな?と。
いずれにせよ、”2月14日に女性からチョコを貰えるかも”というニュースは、良い意味でザワザワした。
その日は一日中上の空で、ずーっと手紙の差出人探しをしているだけ。あの子かな?あの子は、、、パスかな笑、など考えてはニヤニヤが止まらない。休み時間の他愛もない会話中も「(俺は放課後チョコ貰うぜ)」と心の中で何度も思ってしまう。
チョコを貰えるというのはこんなに嬉しいことなのか。
そして放課後、ついにその時間が訪れる。指定された美術室へ小走りで向かう。これで非モテライフとはオサラバだ。明日から美女と手を繋いで登下校をし、夜は保健体育の続きをどちらかの家で自習する。ゴムも用意しないと。あ、クラスメートには「腰痛えわw」なんて自慢するのかな。
どうしようもないが事実である。【付き合う=突き合う】という認識の強さからエロいことしか考えられない。
いっそのこと猿になろう。
しかし・・・美術室で待っていたのは、ウルトラマンに出てくるカネゴンそっくりで愛嬌もあり、皆に「ゴンさん」と呼ばれていた浅丘さん(仮名)だった。
一瞬時が止まり、ゴンさんの紹介で他の人が出てくるのかな?と期待していたが、この静かな教室にいるのはゴンさんと私だけ。
ワイ「あれ?ゴンさんどうしたの?」
ゴンさん「下駄箱の手紙見てくれたんだねぇ。嬉しいぃ」
ワイ「え?あの手紙ゴンさんだったの?」
ゴンさん「どう見たって私の字じゃん笑」
いや、テメーの字なんて知らねぇしというのはさておき、いささかショックであった。それは、心のどこかで人気ナンバー2の大森さん(仮名)だと期待していたからだ。
大森さんから、大森さんの森部分への通行許可証を頂ける流れを期待していただけに、現実を受け止めるのに少々時間がかかってしまった。
「はい、これチョコ」
差し出されたチョコを黙って受け取る。「返事は週明けでもいいからね」と猶予を与えてくれゴンさんはその場を去っていった。
私はその場に残りチョコに同封されていた手紙を読む。詳しい内容は覚えてないが、こんなことが書かれていた。
・エロいことばかりしようとするのは照れ隠しだよね?
・私なら受け入れられるし、一緒に笑えるよ
・もっと楽になりなよ
ラブレターなのか提案書なのか分からないが、なぜか上から目線のゴンさん。今見ると若干腹ただしいが、当時はゴンさんの意見はごもっともだなと感じた。
しかしだ。ゴンさんのゴンさん・・・ないな。
冒頭で『顔より下の部分であったことは否めない。』と説明しているが、ゴンさんクラスになると嫌でも先に顔が出てきてしまう。
家に帰り、手紙の最後に書かれていたゴンさんのアドレス宛にメールを送る。
ごめん、他に好きな人がいるんだ。
直ぐにゴンさんから返事が届く
最初に届いたメールがコレか笑
分かった。
好きな人に想い届くといいね。
断ってよかった。これではもしゴンさんと付き合ったところで、私のイニシアチブを握られそうで怖い。
翌日、ゴンさんはいつものように明るく振る舞っていた。しかし、私には話しかけようとしない。そりゃそうだ。
結局1年のバレンタインデー以降ゴンさんとは話していない。2年生になるとゴンさんは1年生と付き合うようになった。私が知る限り一年間で3、4人男を変えていた。しかも全員一年生。親しみやすいキャラクターと適度な股の緩さが功を奏したか。
次第にゴンさんは学校内で知らぬものはいない筆下ろし名人として残りの高校生活を過ごした。
もし、あの時のバレンタインデーで、私がゴンさんを受け止めていたら、、、と考えるとゾッとする。
いや、もしかしたら男優になっていたのかも。絶倫さんというあだ名も頂戴していた可能性だってある。
まあ、そんな称号要らんけど。