【社会学】その服の潔白を証明できるか
Chap.16 正義 「21 Lessons」(ユヴァル・ノア・ハラリ)について
私は正しい行いをしたいと思う。過酷な労働や環境汚染など決して賛成しないし、加担したくない。
私達の脳は、サバンナでの狩猟採集時代から変化していない。そこでは今日の夕食を誰が取ってきたか、今着ている服を誰が縫ったか、将来自分の面倒を見る年金制度(子供)は今何をしているか、すべて知っていた。
ところが近代以降の複雑化した社会で、このようなことを知っている人はいない。
きれいな洋服
私の来ているユニクロの服はインドネシアかバングラディシュで作られたものだが、どういう人がどういう労働環境でどれほどの対価を支払われて私のもとに来たか全くわからない。
ユニクロの下請け工場では過酷な労働が強いられているとか告発があったが、私が今でもユニクロの服を買うのはそれに賛成しているからか。そもそもユニクロは積極的に過酷な環境を労働者に強いているのか。
私は米国株の投資信託を購入しているが、その構成銘柄の1つが環境に対して何を行っているか、何も知らずにいる。
もしその企業のある工場が地域の川を汚染して公害を引き起こしていて、その企業の優秀な弁護士集団が公害訴訟を退けて、ロビイストが汚染防止条例を阻止しているとしたら、そういう企業に出資している私は環境汚染に加担しているのか。
スッキリしよう
個人であれ政治家であれ企業であれ、社会の複雑化したネットワークの先まで知る人はいない。だがカオスを放置できない。たが、真実を探求するのは途方も無い時間がかかる。特に忙しい政治家や経営者にはそんな時間はない。
そこで多くの人が採用するその解決方法(逃避)は次の4つだ。
・小規模化…登場人物を減らしたり、代表的な意見だけを見る。中国人を一つの人格として考えるような感じ。
・ドラマ化…統計やデータではなく、悲劇的な身の上話で、感情を揺さぶる。難民支援のCMで一人の子供をクローズアップする手法だ。
・陰謀論…007の悪役みたいな組織が裏で糸を引いていると考えれば簡単だ。すべての責任は彼らにある。
・権威(教義)に従う…彼の言う事なら大丈夫、と考える。権威に責任を持ってもらう。
虚構の力
これらは世界の複雑さを否定するものだ。では真実を理解して正義を見つけるのは不可能なのか。
人類は虚構(噂話・神話)の力で共同体を団結した。キリスト教は何百年も聖書の真実を暴こうとはしなかった。何十億もの人が宇宙や地獄についての物語を信じてきた。
現在のニュースがそれと同じでないとどうして言えるのか。それは次の章。