半ヒモの彼に振られ、結婚ラッシュに病み、マッチングアプリ恋活と美容課金とITスクールにつぎ込んで借金140万円作った私が、年内に完済して黒字化できるようになるまでの話。④
彼の帰宅を待っていると、彼の猫が久々にまとわりついてきた。
猫は人の感情がわかると言う。
ひょっとしたら私の今の気持ちを察してくれているのだろうか。
撫でると機嫌のいい声で「みゃあ」と鳴いた。
彼が帰ってきた。
私は日焼けしやすい彼のためにANESSAをプレゼントしていた。
「おかげで鼻しか焼けなかったよ〜。
って、え?なんで荷物まとめてんの?」
と目を丸くした。
私は正座をして「フェス帰りにごめんね、洗いざらい本当のことを話したい」と彼に言った。
彼も正座してきょとんとしながら私の話に耳を傾けた。
そして、私は自分のしでかしたこととなぜそうなったかを伝え、迷惑をかけるつもりはないこと、2人の関係を終わりにしたいことを伝えた。
途中から涙がポロポロ溢れた。
一通り聞くと「おかしいと思ったんだよ、〇〇は嘘つくの下手なんだから」と彼は笑いながら言った。
「まだ半年経ってないけど、そんなことになるくらいしんどかったのかってこと。どれだけ辛かったか僕にも伝わってるよ。こんなことって僕においてはあまりないんだけど、〇〇のことだからよっぽどだったんだなあ、よく耐えたなあって思う。人は誰でも一度や二度は失敗する。これに関しては二度はないけどね。僕の気持ちは変わらないよ。
〇〇が最後の人って決めてるんだ」
と言った。そして彼もまた涙を流した。
彼は、リボの性質上、返済額が膨れ上がらないようにすることが要であるため、50万円を一旦私に渡すから残りは一緒に返そうと言ってきた。
私は言葉を失った。
こんなことって起こるのかと。
しかし驚いている場合ではない。
私は丁重に彼の申し出を断った。
「なんで?意味わかんない、だって返してくれたらいいんだもん。〇〇が逆の立場でも同じことしない?とりあえずうちの母に話通すから」
とすぐに彼は母に連絡を入れた。
寝不足の私はもう頭がついて行ってなかった。
彼は結婚を考えていて失いたくない彼女がいて、その子のために50万円貸し付けると言った。そしてこれは自分が決めたことだからそうするがアホなことをしているのはわかっていると結んだ。
そして場合によっては家賃の安いところに2人で引っ越すことも考えていると言った。
電話越しに彼の母が笑う声が聞こえた。
相手の子に会っていないからなにもいえない、あなたの好きにしたらいい、でも万が一結婚詐欺だったら笑えるね、みたいなことを言っていたらしい。
私の番が来た。私も母に経緯を説明した。
母は半狂乱になって怒った。
そんな不義理なことをしてはいけないと。
帰ってきなさいと叫んで電話を切った。
彼に伝えると彼は嗚咽しながら泣きじゃくった。
「一緒にいることを諦めたくない。どうして僕は大事な人ができてもみんな離れていくんだろう。ねえ、どうしたらいいの」
と。
私は彼を抱きしめながら一緒に泣いた。
彼は諦めていない様子で、結婚してないからだめなのならいっそ入籍して2人の共有負債にしよう、そのために明日一緒に私の家に挨拶に行こうだとか、どこか田舎の方に転職するからついてきてほしいだとか、彼の人生を犠牲にするような案を次々口にした。
私は彼は今冷静ではないと思った。
私は元彼との恋愛で、パワーバランスが崩れて、どちらかが生き様を歪めなければならないような恋愛は結局破綻すると学んでいたので、そんなことをしたらお互いに不幸になるだけだと知っていた。
何度も感謝を伝え、今日は疲れてるから明日考えようと彼を促した。
翌朝、彼はなかなか起きなかった。
疲れている様子だった。私は彼の横顔を眺めながら時間が止まればいいのにと思った。
母から電話が来た。
何日も眠れていないといい、半狂乱状態でいますぐ彼を起こしてでも家に帰ってきなさいと言った。そして彼のことを嫌っているわけでは全くないが、家に近づかせないようにと念を押された。
トイレで話していたが彼には聞こえていた様子だった。
「僕本当にいらないことしちゃったね」としおらしくしていた。
私の精神は彼のおかげで息を吹き返していた。
なので、全くそんなことはないこと、判断や推測を外れさせ続けた私のせいであることを伝えた。
「そっちのお母さんは奨学金の返済も入れて6年実家で過ごすように言ってるんだよね?
奨学金なんて今時当たり前だし返済計画も立っているものだから気にしなくていいと思う。僕は2年は待てると思う。でも一年半で決着つけられるようにがんばろう。
いくら家族に感情的に言われても折れちゃダメだよ。きちんとどうしたいか冷静に伝えるんだよ」と彼は言った。
私は、どうして彼にそこまで私といようと思ってくれるのか聞いた。
「昨日説明したじゃん。あとは直感かな。〇〇といるとうまく行きそうだって思うんだ」と答えた。
彼は最寄り駅まで手を繋ぎ私を送ってくれた。
昼過ぎに私は実家に帰った。
母はお粥を作って待ってくれていた。
母は家の問題なのに、どうして彼中心で物事を回そうとするのかと私に怒った。
洗脳されているようにしか思えないとも言われた。
私は、事情を話したら別れると思っていたが全くそうならなかったことで状況が変わってしまったのは事実だと説明した。
そして昨日は焦って暴走してしまったと彼が後悔していたことを伝えた。
そもそも私の結婚への焦りがこの借金の原因に含まれていること、こんなふうに言ってくれる人は人生で二度と現れないと思っていて、彼と離れたくない気持が強いことを説明した。
あと、彼に、僕が意見すると事態が悪化するとわかったからただ見守るだけにすると言われたことを伝え、全く操り人形にはなっていないし向こうも私を操ろうなんて考えはないことを説明した。
母は今の状況でもしんどいのに、彼という変数が加わることが精神的に耐えられないという話をした。なので、なんとかこの説明で溜飲を下げた様子だった。
そこからは、今の自分の家を引き払うとした場合、何をすべきか整理する時間になった。
そこで、私は母が私にあてがおうとしている部屋が祖父母の終の住処になる予定の部屋であり、祖父母に許可を取らなければ実家に戻ることなどできない状況にあることを知った。
母は今更気づいたことを隠したがっている様子にみえた。
当初、実家に戻ることは私の精神不調が原因と伝える話になっていたが、母は私が祖父母に話をして交渉するように、母を極力巻き込まないように、と線引きをし始めた。
そして、母はその部屋に備蓄物をたくさん置いているため、私が住むとしてもキャリーケース一個分に荷物を集約するようにと要求した。
私はもともと母と全くソリが合わなかったことを数々の記憶と共に鮮明に思い出した。
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