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Y Combinator解説のふりかえり〈2〉|気をつけたほうがよいと思ったこと

ふりかえり回第2弾です。
Y Combinator関係者の解説を振り返って、これまでに感じたこと・実践してみたことを振り返ってみます。

前回のふりかえりはこちら↓

今回はちょっと批判的な側面からのふりかえりです。



🎯 アドバイスの正確な主張に気をつける

YCのアドバイスはどれも有益ですが、
その正確な主張は何か(何を主張していないか)
を気をつける必要があると感じました。

それを履き違えると逆に損をしたり、同時に実行するのはほぼ不可能なアドバイスに見えるものがあります。

▶︎ 初期のセールスは創業者自身がやるべき

最初のセールスや需要調査は必ず創業者自身が行うべきだという話は、BtoBビジネスではピート・クーメン氏の回で、ディベロッパー・ツールの場合もニコラ・デセーニュ氏の回でご紹介しました。

そのとおりだと思います。
MVPを作るのは創業者自身なので、(共同)創業者が調査する必要があるでしょう。

しかし一方で、創業者が独力でセールスをしようとすると、ヒアリングできる相手のバラエティも限られます。そして、創業者の身近な人たちははっきりと否定的なコメントをくれることはなかったりします。

以前、私の友人が別の知り合いに弊社のサービスについて紹介してくれた際、「ウェブサイトが詐欺っぽい感じがして信用できない。」という感想をもらいました。ウェブサイトの問題は以前からマイルドに身近な人から指摘されていましたが、第三者からの直球なコメントはインパクトが違いました。ウェブサイトはその日のうちに作り直しました。

📍 YC解説では「創業者は最初のセールスをやるべき」と主張していますが、「創業者のみがセールスをやるべき」とは言っていないと思います。

実際これは、共同創業者が複数いるほうが成功確率が高い(ハージ・タガー氏の回)という話とも整合します。


▶︎ コールド・Eメールは絶対パーソナライズするべき

知らない人にメールで話しかける(コールド・Eメールもしくはコールド・アウトリーチ)場合は、一斉配信せずに、必ず一件一件パーソナライズして送るべきだと言われています。

これはアーロン・エプスティン氏の回でご紹介しました。

しかし同時に、

  • 数十通程度送ったくらいでは返信などないのが普通

  • 相手との関連性を見つけてパーソナライズするべし

とも言われています。
膨大に送られてくる営業メールに埋もれないようにするためです。

しかし、よく知らない人と関連性を見出してパーソナライズするには、それなりに、もしくはかなり調べる必要があります。
関連性などまったく見当たらないかもしれません。
1件あたりに結構な時間がかかります。

パーソナライズは大事だと分かってはいても、そもそも返信が来る確率が低いですし、まずは知ってもらわなければ確率はゼロのままです。

膨大な時間をかけて一件一件パーソナライズしながら、数百件のメールを送る… これは明らかにトレードオフに見えます。

パーソナライズしたコールド・Eメールは、まったく違う業界で2回ほどチャレンジしてみましたが、どちらも10通程度送ったところで私は限界を感じました。全然関連性がない相手の場合、下手なことを書いたり生成AIに書かせるくらいなら、いっそパーソナライズしないで入念に考えた定型文を送る方が良いようにも感じています(こちらは現在実践中のため結果はまだ分かりません)。

これに関しては、YC解説の正確なメッセージが何かは分かりません。結局、何週間かかってでもパーソナライズしたメールを大量に書きまくるという以外にないのかもしれません。

📍 実際は具体的な業種によってどの程度パーソナライズが必要なのかや、どの程度のアプローチ数が必要なのかは異なるかもしれません。

個人的には、YC解説のアドバイスを信じて数通程度で挫折するくらいなら、どんな形でも多くの人にアプローチできる方法を試したほうが良いのかもしれないと考えています。


🎯 地域性に気をつける

YCの解説は、基本的にはアメリカでのビジネスを想定しています。
さらに言えば、ITテクノロジー系のビジネスを想定しています。

日本にはないスタートアップ向けの仕組みがアメリカにはあるでしょうし、それだけではなく国民性や文化の違いも影響するように感じました

需要調査についても、アメリカ人は異常に自身の意見を表明することに前向きなので、こういった活動は国によってノウハウが異なるかもしれません。

ハージ・タガー氏の回でご紹介した共同創業者の見つけ方についても、かなりアメリカ文化が背景にあるようにも感じられるので、すべてがそのまま参考になるかは分かりません。(もちろん参考になる部分も多いです)


🎯 時代に気をつける

スタートアップの立ち上げ戦略には、いつの時代にも通用する「お作法」があると思います。

しかし「昔はそれで通用した」とか「昔はそういうやり方が流行っていた」というものもあります。AmazonやGoogleの立ち上げ時期のウェブ業界の営業戦略が今でも通用するとは限りません。

例えば、一昔前のシリコンバレーでは「とにかくフリーミアムで世に出してみる、収益化はその後で考えればいい」という信仰が強くあったと言われています。

これはY Combinatorの人たちが口を酸っぱくして言っている「初期の顧客でも必ず有償でプロダクトを提供すべし」という教えと相反していると言えます。(* to-Bとto-Cでは異なるというのもあると思いますが)

ビジネスに限った話ではないですが、「経験に基づく教え」というのは必然的に1世代前の情報になりがちなので、何が普遍的な教えなのかは気をつける必要があると感じました。

これは「5年後にはテンプレ」となるようなアプローチが発明される余地があると前向きに捉えることもできます。

ただここで、Y Combinatorの人は「新しいアプローチを発明することはあなたがやりたいスタートアップの主目的と関係ないから、あえて成功確率を下げるような無駄な挑戦はするな」とも口を酸っぱくして言っています。


ふりかえりの最終回は、「個人的に特に参考になったトピック」をご紹介しようと思います。
次回もお楽しみに。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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