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企業が考える外国人社員のキャリア~事例、面接での見極め、課題など~(ASIA Link第7回教職員研修会)

こんにちは! 留学生の就職サポートのASIA Linkです。

2024年7月27日に弊社主催のイベント「教職員のための外国人留学生就職支援研修会2024」を実施しました。今年で第7回目となりました。

弊社の2024年8月20日のブログ記事より、企業の皆さまによるパネルディスカッションのパートを転載してお届けします。

企業側が外国人社員のキャリアをどう考えているのかは、留学生や外国人の就職支援をしている側の人間はなかなか知ることのできない部分でもあります。大変興味深い議論となりましたので、ご一読くださいませ。



パネリストのご紹介

【パネリスト】
・株式会社コスモテック 代表取締役社長 高見澤友伸さん
・株式会社プロントコーポレーション 取締役兼常務執行役員 鈴木浩之さん
・株式会社ファミリーマート 管理本部人財開発部副部長 石山哲也さん
・キリンビバレッジ株式会社 人事総務部人事担当部長 久次米章彦さん
ファシリテーター:横浜市立大学 河瀬恵子さん
(以下、敬称略)

今回の研修会では、企業の方々にどんどん聞いていこうという、パネルディスカッションを行いました。信頼している企業の方々にお声がけし、みなさん快く参加を決めてくださいました。
当日は、ファシリテーターの河瀬さんから、パネリストの方々に質問を投げかけていきました。以下に要旨をまとめます。

【企業紹介】事業内容・海外へのビジネス展開状況・外国人社員の雇用状況

鈴木:飲食ビジネスをしています。「PRONTO」というブランドが一番多いのですが、ワインのお店や和カフェなど、多業態で運営している会社です。店舗数は国内外300店舗で、正社員300人のうち外国人社員が10人、特定技能が8人います。アルバイトスタッフは3,000人おり、そのうち300人が外国人スタッフです。1割程度が外国籍の方ということで、まさしくこれからインバウンドの対応や海外への出店を含めて、どう世界と向き合うかというのを議論しているところです。

もともとは、外国籍の方をたくさん採用しようという会社ではありませんでしたが、これからグローバルに出店していくぞ、という中で多様性が大事だという考えになりました。毎年、技人国ビザで留学生を一人二人と採用してきた結果、累計で20人ぐらい雇用し、現段階で10人残って10人退職している状況です。退職原因の多くはコロナ禍でした。一方で、ある程度キャリアが上がっていくと「何をしに日本に来て就職したのか」という考えの深さによって、リタイアしている学生も一定数います。

先程のキーノートスピーチでキャリアの話がありましたが、会社としても、外国人社員のキャリアをどうしていくかについて、外国人が日本人に合わせていく流れから、いかにグローバルな視点で日本人側が合わせていくかという逆の制度設計を、改めて考えていく必要があると思います。

300店舗のうち直営店は100店舗で、ほとんどがフランチャイズチェーン店です。一番の本業は、加盟された企業様にスーパーバイジングしていく人材をどう育てるか、というのが我々のコアな仕事となります。

高見澤:当社は工業用粘着テープのメーカーです。携帯電話やパソコン等のディスプレイ、半導体、電子部品に使われています。電子系事業は中国が強いので、我々の売り上げは、日本と中国が半分ずつです。売り上げの中国比率が高まりだしたころから、少しずつ外国人の採用をしています。

日本国内の従業員は全体で40人ぐらいです。中国に工場があり、そこでは150人ほどが働いています。日本で働いている40人のうち、6人が外国人従業員です。就業期間の長さには個人差があります。メインは中国出身の方、その他スリランカ出身の方もいます。

久次米:私は人事担当として、キリングループ全体を見ています。キリンですので、ビールとかジュースとかワインなどの飲料事業に加え、最近では医薬とヘルスサイエンスに力を入れています。プラズマ乳酸菌など、免疫ケアに関わる商品です。海外展開先は世界中です。2000年に入ってからかなり海外展開を進めており、失敗した例もあるのですが、全体の売り上げの3割くらいが海外売り上げになっています。

今日のテーマでいくと、海外工場の現地採用等ではなく、日本のキリングループ本社での採用についてお話します。グループ全体で年間100人ほど採用しますが、その内海外出身の方は10数人です。この比率はもう少し高めていきたいという考えがあります。日本だけで考えていくよりも、世界でやっていくには海外の方の知見がないと厳しいだろうなという考えから、多様性みたいなところはすごく大切にしています。

石山: 当社はコンビニエンス事業をしており、フランチャイズ展開をしています。従業員が6,000人弱います。店舗数は国内外合わせて24,000店舗、海外は7,800店舗です。加盟店に店舗を運営して頂くという、フランチャイズ展開をしています。本部が様々なノウハウを提供し、その代わりに店舗ロイヤリティとして売り上げの一部をいただくビジネスモデルです。入社をした場合、日本人も外国人も本部に所属し、スーパーバイジングや商品の企画がメインの仕事となります。

海外展開先は、中国、ベトナム、マレーシアを始めとしたアジア各国です。
組織としては、海外事業に対応する部門があるため、外国人留学生の方はこのような部署で働きたいという希望を持って入社することが多いです。
従業員は全体で5,600人ほどいますが、外国籍の方は、110人ぐらいです。出身は中国、韓国、台湾、インドネシア、タイ、ベトナムなどです。毎年100人前後新卒を採用しており、その内外国人の方は10人程度です。

【質問1】外国人材の新卒採用をするにあたり、4つの象限のどこに当たるか

河瀬:【質問1】外国人材の新卒採用をするにあたり、4つの象限のどこに当たるかを教えていただけますか? もし当てはまらないとしても、方向性としてどこにフィットする人材を採用していきたいでしょうか?

鈴木:当社の場合、圧倒的に第1象限が多いと感じます。たまに第4象限です。外国人という事を意識している方が多いです。飲食業なので、将来やりたいことが、おもてなしを学んで母国に持ち帰っていずれ自分で母国で飲食ビジネスをやりたい、または、弊社の海外店舗、今はまだ台湾と中国しかありませんが、他にも現在出店のお話をいただいている東南アジアの国の話などをすると、海外現地の指導員になりたい、加盟店を指導したいという方が多いです。必ずしもその考えを持った人に来てもらいたいと考えているわけではないのですが、飲食業界はそういう方が多いのかなと思います。

中途採用の場合は、圧倒的にマトリクスの中の第2象限が多いです。技術(スキル)を持ち当社に来て、例えばポスターなどのデザインのスキルや、店舗を作る設計のスキルなどを活かして入社される方が多いです。このようなケースでは、国籍関係なく、どのような経験をしてきており、どのような技術があり、何ができるかというところを見極めて採用しています。入社された方が外国人だった場合は、たまたま合格した方が外国人だったという結果です。

新卒採用では、第1象限が多いのですが、留学生にははっきり「今あなたの国には店舗がないし、今後出るかもわからない。それでもやりますか」と聞いています。留学生の中には、それなら最終的には自分で店舗開発をしたい、自分で店を出したいという思いの強い方もいて、そういう方で合格しているケースもあります。

河瀬:留学生を新卒採用した際の、最初の配属はどうなるのでしょうか。

鈴木:日本人も同じなのですが、新卒については、本人がやりたいことも聞きますが、まず入口はお店に入り勉強してもらいます。目安は店長になる事を目指します。成長が特に早い方は1年、平均で3年は店舗で学ぶ必要があります。店長になるまでの期間には個人差があり、留学生の中にも6年現場にいるケースもあれば、3年目で次のキャリアということで、海外に関わる仕事をやっているケースもあります。本人が海外に関わる仕事をしたいと言っているのに経理に配属するようなことはしません。本人のキャリア志向と違うことをすると離職につながりますので。あくまでも本人が活きるポストに、そのポストが空いた場合は3~4年で配置する、というやり方をしています。

高見澤:まず前提として、当社はほとんど新卒採用をしていません。以前はやっていましたが、名前を知らない中小企業に学生は応募をしませんので、費用対効果が低いのです。ただし、第二新卒、つまり2年目3年目の若手の方は(転職市場で)動くので、そのような方を中途採用として迎え入れることは多々あります。

その前提でお話をすると、大きく二つに分かれます。当社はメーカーなので、一つ目は技術開発の仕事です。このマトリクスで言うと第2象限です。基本的にスキルを見て採用しますので、国籍は関係ありません。技術部には日本人も外国人もいます。いわゆる専門職ですね。このような専門職については、社内で育てていく場合もありますが、基本的には本人の志向によって決まります。

そしてもう一つは「外国人採用」という意味合いでの採用、このマトリクスで言うと第1象限と第4象限ですね。当社の電子業界のお客様は、日本国内だけでなく、中国、韓国、台湾、ベトナム、欧州など多岐にわたります。このような国々とビジネスをするにあたり、社内に海外営業としての資源を持つか、または代理店等を使って外部に資源を持つか、この二択になるんです。市場が大きい国については、基本的に社内に資源を持っておいたほうがいいので、中国・台湾という大きな市場については、社内に資源を保持するために、中華圏の方を採用しています。現在、中国出身の営業職が2名いて、もうすぐ1名増える予定なのですが、採用目的は現地の展開です。

そのような意味では、実は第1象限と第4象限の境は微妙です。採用時には第4象限のように見えても、仕事をしていくうちに第1象限に変化していくこともあります。ただし、1と4どちらの象限であっても、中国出身である強みを活かしたい、という考えは、本人と我々の共通の前提になっています。その強みとは、一つは言語です。当然ながら、現地で営業活動を行うためには中国語が必要です。そしてもう一つは、中国のビジネス文化の理解です。非常に端的に言うと、お客様と友達になれることです。このような側面で、中国人としての特性を活かして活躍してもらう、という考えで採用しています。

久次米:キリンの現在の状況としては、マトリクスでいうと上のほうの専門性(第1・第2象限)で採用をしています。当社はこれまで、新卒は日本人・外国人に限らず、この人はチャレンジが出来そうだ、周りを巻き込んで仕事ができそうだというポテンシャルで採用していくという企業でした。
それがここ2年くらいからだいぶ変わってきて、いわゆるジョブ型にシフトしています。例えば、経理の機能、デジタルIT機能、私のような人事の機能など、採用もそうなのですが、すでに中にいる社員も含めて、どの機能であなたは会社でやっていくのか、というのがかなり決められてきている、その方向へシフトしています。

その意味では、日本人も外国人も、このマトリクスでいうと上の象限(第1・第2象限)での採用に変わってきていますし、入社してからもそういう育てられ方をしていくということになるのではないかと考えています。

河瀬:ありがとうございます。大手企業の場合は部門別採用も最近多くなってきている印象です。日本人学生を見ていても、「部門別採用をやっているところにいきたいです」と相談に来る学生が増えています。最初の配属はどのようなお仕事になるのでしょうか。

久次米:外国人の方でいうと、マーケティング、ITデジタル部門、経営企画などです。ただ、やはり現場経験みたいなものは必要だと思うので、少しは、スーパーでビールを売るとか、コンビニエンスストアでジュースを売るような現場経験を積んでもらいたいところはあるのですが、そこまではまだできていないかな、というところです。

河瀬:そうなのですね。一昔前までは、日本企業、特にメーカーの場合は営業からスタートという配属のされ方が主流だったと感じます。今は、それぞれの専門性を高めてもらうことに、新卒の時点からコミットする流れがあるのですね。ありがとうございました。

石山:当社の場合、経営戦略的に近年国内事業の方に重点を置いていたこともあり、外国人採用は行っているものの、企業側が求めているのは第3象限に近いです。一方、学生さんのお話を伺うと、当社が海外にも展開していますので、将来自国に戻って活躍したいという考えの方もいます。第1象限・第4象限ですね。そこは少しギャップを感じることはあります。

ただその中で、当社で海外の仕事に携われなくても、興味がある仕事があるという方は長く定着していかれるのではないかと思います。また、日本語がそこまで流暢ではない方は、比較的第2象限の領域で勝負したいという考えで応募をする留学生が多い印象です。

第2象限について言うと、キリングループさんと同じように、当社も日本人・外国人関わらず、システム分野、デジタル分野等での専門職採用も行っています。外国人の方の応募もあります。

【質問2】 新卒採用の面接の際に、その学生のキャリアパス・キャリア志向に関する考え方について、どのように捉えているか

河瀬:【質問2】 新卒採用の面接の際に、その学生のキャリアパス・キャリア志向に関する考え方について、どのように捉えていますか?またどのような質問内容を投げかけていますか。どういう言葉からそれを評価していますか。その際、日本人と外国人で何か違う傾向を感じるかという点も、もし可能でしたら教えてください。

鈴木:難しい質問ですね。私は新卒採用では、最終面接の立ち合いと、そのひとつ前の段階の一対一の個人面接を担当しています。応募者が外国人でも日本人でも、質問内容はあまり大きく変えていません。外国人応募者に対しては、どうして日本の企業で働きたいのかという基本的な質問はします。あとは、なぜこの業界を目指しているのか、何をしたいのかはひととおり聞きます。

これらの質問に対する答えとして、日本人と外国人で大きな違いはありません。しいて言えば、いずれは将来の夢として母国に貢献したいとか、家族をいずれ日本に呼びたい、という答えは日本人にはない部分なので、その方が持っているアイデンティティというか、なぜ日本の飲食業でやりたいかというところは深掘りしています。

ただ、これらの答えに良い悪いは特にありません。メーカーで最初に営業に配属されて現場を学ぶのと同じように、我々サービス業はまず店舗で勤務し、実際にアルバイトを活用しながら飲食業の経営をします。応募に来た方には、その認識があるかどうか、という点を見ています。飲食店でアルバイトの経験があるので応募しました、というふわっとした考えの方は、採用までは厳しいです。

店長というのは小さな経営者のようなものですので、予算がつき、売上利益を会社にコミットしていきます。スタッフ人材を育てて、お客様に直接サービスを提供していきます。プランドイメージの基礎にもつながるとても重要なポジションなので、その職務を全うするつもりがあるかどうかということを面接の中で聞きます。「そこまではやりたくない、私は少し現場を経験したら本部に行きたい」という方は採用していません。

本部に行かせるかどうかは会社が判断することなので、いずれは母国に帰って店舗を運営したいという方の場合には、その覚悟が本当にあるのかどうかを確認しています。そうやって強い気持ちで入社した社員には、入社して現場に入っていろいろ壁にもぶつかりますが、何とか会社としてもその留学生の将来の夢のためにアシストしたいという考えで、メンターをつけて、入社3年目くらいまで伴走していきます。

高見澤:当社の海外営業職の募集は、もともと中国語ができる方しか応募してこないような求人内容です。そのため採用面接では、応募者の方々も自分たちの最大の差別化要因である外国人である点をアピールし、かつ当社もそこを期待して採用します。それ以外は、外国人と日本人で質問内容に差があるか、差をつけているかと言うと、それは全くありません。

また、面接時に本人のキャリア形成、またキャリアに対する考え方を重視しているかというと、決してそうではありません。当社は新卒採用ではないので、なんらかのステップアップのために応募してくる方がほとんどですが、その目的は様々です。今まで地方の田舎のほうで働いていて、東京で働きたいが、都心はハードルが高そうなので東京郊外にある当社に応募するという方もいれば、いままでこういう仕事をやってきたが、コスモテックでこの仕事がやりたいと力説する方もいます。その他にも様々な応募者がいて、応募目的は多岐にわたります。

ただ、一旦採用すれば、教育コストを2~3年払うわけです。その分のコストを払う価値があるか、つまり長く一緒に働けるかどうか、ということを、私たちは面接でよく見ています。また、私たちは40人の会社なので、一つのチームとして行動しなければならないケースもたくさんあります。そのため、違う表現をすると、40人という小さなコミュニティの中に参加できる方なのかどうか、というのを非常に重視して見ています。キャリアに対する考え方もその一つです。チームメンバーになって一緒に働くつもりがあるどうか、というところは、見ているのかなと思います。

久次米:面接での見極めというところでいきますと、外国籍の方の場合、ちょっと極端な例でいうと国連で3年間ぐらい経験を積んでいましたなど、日本の学生がしていないような経験を積んでいる方もいます。そもそも、自分の国から日本に留学してきて、ここで生活している時点で、良い経験を積まれている方が多いなという印象です。明らかに日本の方とは違うだろうという点はあります。

外国の方のキャリアの価値観については、今日のキーノートスピーチにもあったように、日本にいてもなかなかこれ以上成長できないとか、海外でMBAを取りたい、という方もいると思うんです。しかし、そこを面接で見極めるかというと、たしかにこの人は当社で少し経験を積んだら出ていきそうだなと感じる方もいるのですが、そこを見極めたとて、あまり意味がないというかですね。出ていくのは、キリンに魅力がないからだと割り切っているところもあるので、いかに自社に魅力をつけていくかという方にかなりシフトしています。

石山:当社も、面接での質問において日本人と外国人で差をつけて見ているかというと、それは全くありません。さきほどの久次米さんと同じで、まず日本に来て留学をしているという経験自体を、一般的な日本の学生よりも、私自身は優位に見ています。留学生には、そのような経験や積極性を含め、ご自身のことをしっかり面接でお話しいただければと思います。

キャリアの観点でみた場合には、日本人に対しても外国人に対しても、「なぜ当社なのか」「なぜファミリーマートを選ぶのか」をしっかりと語れるかどうかを見ます。また、「5年後、10年後、どのようなキャリアを描いているのか」を質問で聞いたりします。とりあえず日本で働いて次のキャリアステップに行きたいのか、それとも本当に当社の事業の中身を具体的に5年後10年後語れるかどうか、これはけっこう見ています。

また、プロントさんと同じように、当社も直営店で1年間は店舗勤務があります。やはり現場を知らないといけませんので、販売職ができるかどうかという点も見ます。それから、さきほどの5年後10年後のキャリアにも関わるのですが、本人なりのキャリアの時間軸ですかね。いろいろな経験をたくさんしたいという学生さんもいるのですが、たとえば1年間店舗勤務があったり、一つの部署に配属して、1年や2年ですぐ違う部署に変われるかというとそんなことはなかったりしますので、そのフィット感も見ています。

【質問3】 入社後、外国人社員がキャリアを構築する際、生き生きと働いてもらうために何か取り組んでいること、気を付けていることはあるか

河瀬:【質問3】 入社後、外国人社員がキャリアを構築する際、生き生きと働いてもらうために何か取り組んでらっしゃることや気をつけていらっしゃることはありますか? 組織の見解でも、個人の見解でもけっこうですので、課題感も併せて教えていただけますか。

鈴木: コロナ禍があって最近はちょっとできていませんが、外国人社員の方の特徴として、社長など経営層とコミュニケーションを取りたいという方が多いこともあり、外国人の社員を集めて役員陣と懇親会をしたことがあります。そういう場で、直接経営のメッセージを伝える機会を作るとか、それを意識していたことはありました。

ただ一方で、長く会社の中で勤めるにあたって、入社後の店舗配属の際には、外国人にはやや手厚いフォローが必要です。店舗には、学生アルバイトやパートの方もいます。様々な属性の方と関わる中で、人間関係がうまくいかないケースもありくじける方が多いので、どうコミュニケーション取っていくかというところが課題です。ここは日本人よりも外国人に対しての方が、やや手間をかけなければいけません。通常の新卒にもメンターをつけていますが、外国人社員に対し伴走をどれだけするか、日頃の悩みをどれだけ聞くか、このメンターの役割は重要です。日本人社員と比べると時間も手間も少しかかるのですが、メンター制度は続けています。

それと懇親の機会ですね。飲食業なので、飲食店の雰囲気が好きで当社に来ている方が多いので、年1回なり2回なり、パーティのような機会は頻度を上げて行っています。

河瀬:メンター制度というお話がありましたが、外国人の方から、こんな悩みが出ることが多いということはありますか。

鈴木:本人の言葉の能力にもよるのですが、やや日本語に不安のある方からは、相手(日本人)がなぜ急に怒っているのか、私は悪くないのに、というような相談がよくメンターにあるようです。その際、日本人としてはこういう感覚なのだ、という日本人の心のおももちのようなことを懇切丁寧に説明をします。そのようにして、ああそういう反応なのか、日本人はそう考えるのかと気づく機会を多く持つことで、徐々にコツをつかんでいくことをサポートしています。コツをつかむのは、日本人でも時間がかかりますけれども。

河瀬:言葉の問題と文化のギャップの部分ですね。

鈴木:そうですね。それから、プライベートで母国出身者とだけ付き合っている外国人社員には、日本で働く以上は日本人のいろいろなことを知っておいたほうがいいので、積極的に日本人の方とも付き合っていくことを勧めていると、メンターから聞いています。

高見澤:当社では、おそらく他のパネリストの3社の方々とはまったく違うアプローチになると思います。40名の会社のため、いまこの教室にいる人数くらいの規模です。そのため、私がやっていることは基本的に観察です。
どのように仕事をしているのか、他者とどうコミュニケーションを取っているのか観察をし続け、何か問題が起こりそうなら、解消するためのテコ入れをどこかでします。これを常にやり続けています。これは中小企業ならではのテクニックですね。もうアートの世界です。それから、当社もフォーマルな制度としてメンター制度は取り入れています。これは日本人も外国人も同じで、外国人特有のものではありません。

河瀬:なるほど、トップからの直接的な働きかけということかと思います。一方で、現場として上司と部下の関係性や先輩と後輩の関係性など、社員さん同士の関係性というものもあると思うのですが、その中で、社員さん同士で自立してやっていただくような、そういう取り組みもあるのでしょうか。

高見澤:社員の自立という観点では、中小企業はいわゆる文鎮型組織であり、一人のトップがいて残りはフラットという関係性になることが多いのですが、中間管理職をどうつくるか、ということは最近意識しています。その中間管理職を育てるために、彼らにどうアプローチするか、上からだけでなく横からも下からもアプローチさせて、自立を促すということも、これまたアートの世界でやっていますね。やはり、全員に対する教育を直接やっているという感じでしょうね。

河瀬:中間管理職の育成ですね。日本人側をどう啓発していくか、育成していくかというアプローチでもあると思います。ありがとうございました。

久次米:この会社だと成長できるよ、ということは大事にしています。今日のキーノートスピーチにもありましたが、入社後3年くらいするとだんだん慣れてきて、本人に成長したという実感も湧いてきて、別の会社にジョブホップしていこうと考える方も出てきます。その時に、また違う事業の部署へ行ってもらったり、違う領域の業務で成長していく機会を提供したりすることで、やる気がなくなって辞めていくことがないようにしたいと思っています。

給与が原因で離職となると仕方がないですね。やはり給与面では欧米企業にはかなわないので。ただ、本人自身が成長できるかどうかは大事にしています。外国人社員も日本人社員も、少なくとも半年に1回は上司と部下で面談を実施しています。今の仕事の成熟度合い、成長度合い、今後やってみたいことのすり合わせをし、そこをキャッチしていくようにしています。

石山:新入社員で入社した場合、1年程度店舗で勤務をしますので、専属のトレーナーをつけて1週間に1回1on1を行い、成長支援を行います。国籍関係なく行っています。外国籍のトレーナーもおります。全社的な取り組みとしては、1年に1回上司とキャリアの面談を行っています。この面談の中で、本人の意向の確認や、希望部署を出すこともできるような仕組みを持っています。

また今年度から、本部にキャリアカウンセリング室を設けています。キャリアコンサルタントの資格を持った者と自由に相談できるような環境を作りました。まだ認知が広がっていないのですが、そういう取り組みもスタートしました。外国籍のキャリアコンサルタントはまだいないので、今後はそこも必要かなと思っています。

また、入社後、店舗研修が終わって正式配属になって慣れてきた頃、3年目や4年目ですね、その時期に外国籍の社員も含めてキャリアのプログラムを入れています。その後、30歳、40歳、50歳になったところでも、キャリアデザインを描こうというようなプログラムの提供もしています。

河瀬:パネリストのみなさま、ありがとうございました。四社四様に、様々な取り組みや志があることがわかり、大変興味深かったです。改めて、パネリストのみなさまに拍手をお願いいたします。


★パネルディスカッションに対するご感想(アンケートより)

・日頃、企業側のお話を聞く機会が多くないためリアルな話は非常にありがたかった。企業規模の違いがあったからこそ、幅広いお話が聞けた。
・企業さんの規模によっても異なるアプローチがあるようだが、どちらも優れた人材の定着に様々な工夫をされていることがわかった。
・企業ごとの取り組みや事例を知ることができ、大変参考になった
・日本人と外国人で特に分けていないというのが意外であるとともに納得できるものだった。
・留学生たちは日本人と同じ土俵に立たされていると実感した。
・それぞれ業種や規模感の異なる企業のトップあるいは人事担当の方のリアルなお考えと社内の制度や雰囲気等を知ることができ、面白かった。学生向けにも企業説明会だけでなく、このようなパネルディスカッションの形で企業の方の考えを知る機会を提供してみたいと思った。
・企業での個別事例と一般論が確認できてよかった。


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★「日本で働く留学生に見るキャリアの志向4類型 ~どのように就職先を選び、その後どうなるのか~」(教職員のための外国人留学生就職支援研修会2024)のキーノートスピーチはこちらよりご覧いただけます。

次回は教職員研修会のワークショップの様子をお届けします!