虐待サバイバーから見た“地域交流型少年院”のニュース
地域交流型少年院
こんにちは。虐待サバイバーの、明日葉 ありすです。
昨日、目に飛び込んできたニュースが有ります。今日は、そのニュースについて感じたことを、私の目線で書いていきたいと思います。
長文になりますが、お付き合いいただけたら嬉しいです。
こんなニュースでした。
記事には、こう書かれていました。
第1種少年院とは
記事の中では
“非行傾向の進んでいないおおむね12歳以上は第1種(旧初等・中等少年院に相当)”
と説明されていましたが、今ひとつ分かりにくかったので調べてみました。
虞犯少年
第1種は、虞犯少年も入院する矯正施設になっている様です。
犯罪行為にまでは至っていないけれど、不良な行為をしている少年の事を、虞犯少年と言うそうです。
具体的には、藤井寺法律事務所の説明文から引用します。
保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
保護者の正当な監督に服さない傾向があること(例えば犯罪に至らない家庭内暴力等)をいいます。正当な理由がなく家庭に寄り付かないこと
少年の性格,年齢,家庭の状況等を総合して、少年が家庭に戻らないことに正当な理由がない場合をいいます。犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し,又はいかがわしい場所に出入りすること
暴力団,暴走族など反社会的組織や集団に属したり、不健全な風俗営業や犯罪者などが関係する場所などに出入りすること等をさします。自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること
性的悪癖など、倫理的に外れる行為を自らなし又は他人にさせるような行動傾向・習癖があることをさします。
少年院について知らなかった私
少年院について、私はまるで知りませんでした。5種に分けられているそうですが、皆さんはご存知だったでしょうか。
どの種の少年院に入院するかは、家庭裁判所が決定するそうです。
少年院と少年刑務所は違うもの
少年刑務所には、家庭裁判所が保護処分にするよりも、“刑事裁判を通じて刑罰を科す方が適切だ”と判断した少年が収容されることになっていて、地方裁判所で実刑判決を受けた場合に、少年刑務所に入ることになるそうです。
ですから逆に言えば、少年院は刑務所と異なり、少年に対して刑罰としての懲役などは行われず、少年が社会に復帰した後に社会に適応して規律ある生活が送れるよう、学校で教わるような教育、職業訓練などが行われるという事だそうです。
虐待サバイバーからの視点
被害者ケアと加害者ケア
こういった少年少女達の中には一定数、何かしら生育環境に問題を抱え、傷ついている子供達が居るのは確かです。
しかし昨今、加害側や問題を起こした側に寄り添うような情報が出てくると、「問題を起こした連中を手厚く扱う事ばかりして、被害者は置いてきぼりだ。」という声を目にします。
これは本当に心の痛む問題で、被害者や被害者家族のケアというのも、しっかり進めて頂きたいと感じています。
が、加害者になってしまった子ども、非行傾向に有る子どものケアも、同時に考えていくべきだと感じています。
社会全体で見守るべき課題
同じ書籍の中で、こうも書かれていました。
ニュースへ寄せられたコメント
・関わりなんて持ちたくない
・そんな輩が更生するとは思えない
・危険だ。嫌だ。
・少年院に入院する=社会にすぐ戻れないほどの非行性があるという事
・どうしたらこの先人並みに生きる事が出来るか自分で考えることが必要
賛成、反対、理解しなくは無いけれど難しい、等々、様々な意見が出ています。
虐待を受けると変形する脳
身体的虐待、精神的虐待、ネグレクト、性的虐待などを受けて育った子供達の脳に“変形”が見られる事が、上記の書籍では指摘されています。
本来ならば、安心で安全な居場所である家庭、あるいは養育者との健全な関わりが奪われ続ける事で起きる障害です。必ずしも精神疾患として発露するとは限りませんが、爆弾のような物を抱えていることに変わりはありません。
・感動や興奮がもたらす情動と、関係する記憶に関連した領域である「海馬」。
・過去の記憶や体験をもとにした好き嫌い、眼の前に居る人が敵なのか味方なのかを判断し、危険と結びつく情報に対して敏感に反応する「扁桃体」。
・海馬と扁桃体の動きをコントロールする「前頭前野」。
これらが、異常に発達したり、充分に発達しなかったりという弊害をもたらすようです。
専門家では無いので詳細な記述は避けますが、虐待され続ける事で、人との関わり合い方、距離感が分からず、アンガーマネジメントがうまく出来ず、自分を傷つけたり、他者に対して攻撃的になってしまったりという傾向が出てきます。
虐待を通してダメージを負ってしまった子供たちが社会に適応していくというのは、ゼロからのスタートではなく、マイナスからのスタートと言えます。良好な人間関係を築くために必要な脳の機能が損なわれているからです。
ですが、事態を早期に発見し、必要であれば現在の養育者と離し、安全な居場所、自分を受けいれてくれるという安心感を持てる関わりを増やしたり、適切な心理療法や投薬を行うことで、時間はかかりますが改善していくものだと報告されていました。
自己責任と切り捨てて解決する問題では無い
少年が犯した犯罪で、悲しい思い、辛い思いをする人達が居ることは、決して無視できる事では有りません。
少年犯罪の実名報道、量刑を重くすることなど、様々な議論がなされます。
ですが、その子どもを取り巻く環境や、各家庭の「自己責任だ」と切り捨ててしまう風潮、罪を犯したなら「反省して責任を取れ」と一方的に押し付ける事だけでは不十分です。
それは、前述の“脳のダメージ”のお話しで、ある程度ご理解いただけるのではないかと思います。
危険因子だ。異物だ。と反射的に切り捨てるのは、本質的な解決にはならないと思います。
私も間違えば入院していたかも知れない
身体的虐待、精神的虐待を受けて育った私は、2度ほど家出をした事が有ります。危険な人達に近づいてしまった経験も有ります。
風俗営業へ売られそうになった事も有ります。
少年院に入院していてもおかしくなかったと、自分では思っています。
あの時そうならなかったのは、そんな自分に対して扱いにくさを感じながらも、出来るだけ近くに居てくれた先輩たち。友人のお母さん。
そういった人達が、私を放って置かなかったからに違い有りません。
入院を余儀なくされた彼らにも、そういう機会を持たせてあげたいと、心から願っています。
行政側からの説明が足りない
今まで記述してきた事から、非行を見せる子供たちが健全に社会へ出ていくためには、専門家からの適切なサポート、人との関わり、暖かく迎えてくれる人達が居ると知る事が大切なのは、ある程度ご理解いただけたのでは無いかと思います。
ただ、私がここで記述してきた様な事や、もっと詳細なエビデンスに基づいた「事実」を、行政はしっかり説明すべきでは無いでしょうか。
虐待や、ましてや少年院に関して詳しくない人が殆どだと思われる状況に対して、「こんな試み始めますね。」だけでは不十分です。
見えないこと、知らない事に人が不安を感じ、自分や家族を守りたいと思うのは、至極当然な事だと思います。
例えば
・こういう試みを続けていく事で、非行や犯罪に走る前に軌道修正出来るんです。
・公的経費が現状ではこうなっていますが、将来的に見込まれるのはこういう数字です。
・こういった矯正教育機関では、地域住民との対話をしっかり行って、暖かくサポートして頂けるよう、こういったリスクマネジメントを行います。
こういう説明が有って、ある程度納得してもらってから動かすべきだと思うのです。
そうでなければ、まさに今現在、温かな関わりを必要としている子供たちにとっても、マイナスなイメージしか持ってもらえず、逆効果では無いでしょうか。
とあるニュース番組
有明高原寮~信州・安曇野~
本当にたまたまなのですが、昨晩こんな番組を見つけました。
とある少年院、有明高原寮のお話しです。
有明高原寮では、比較的不良傾向の進んでいない少年が収容されているそうですので、恐らく第1種なのかと思われます。
地域の人達と少年たちの交流についても少し触れられていますので、ご興味の有る方はご覧になってみて下さい。
Facebookからのシェアで、7:16程の短い構成になっています。
生きづらさを強いられてきた私だからこそ見えること、言いたいことを、これからも発信していこうと思います。
悲しい出来事が、少しずつでも減っていきますように。