#読書記録2 『星を掬う』
__わたしの悩みに耳を傾けて、わたしを認めてくれる存在が、欲しかった。明日への不安ではなく、明日への希望を語ってくれる人が欲しかった__
小学1年の夏休み、母と二人で旅行をした。
その後、私は、母に捨てられた__
元夫からの暴力から逃げるため
千鶴が向かったそこには
自分を捨てた母・聖子がいた。
聖子を「母」と慕う恵真と、娘に捨てられた彩子と共に同居することに。
千鶴が見た母は、千鶴が知っているあの母ではなくなっていた。
DV、親子、家族、暴力、認知症、妊娠、結婚。
何がその人の人生を狂わせるのか
何がその人の人生を変えるのか
何がその人の人生に救いを与えるのか
『星を掬う』
町田そのこの2021年本屋大賞受賞後第一作目。
DV、姑関係、一卵性親娘、認知症の介護、17歳の妊娠、離婚、女性
現代社会の問題や今もどこかで多くの人が抱えている悩みをリアルに描いた作品。
理不尽な逆境に打たれる現実を描いた、現代社会への想いが込められた作品でもある。
あらすじ
小学1年の時の夏休み、母と二人で旅をした。
その後、私は、母に捨てられた――。
ラジオ番組の賞金ほしさに、ある夏の思い出を投稿した千鶴。
それを聞いて連絡してきたのは、自分を捨てた母の「娘」だと名乗る恵真だった。
この後、母・聖子と再会し同居することになった千鶴だが、記憶と全く違う母の姿を見ることになって――。
感想
すれ違う母娘。
苦しい過去を抱える登場人物たち。
それでも生きてきた。
強く、弱く、人生をこの日まで歩んできた
彼女たちが出会い、少しずつ変わっていく、
その姿に心動かされ、それでも降り注ぐ理不尽に心削がれる(?)
そんな物語。
______________
登場人物全員が傷を抱え
苦しみながら自分の人生を歩んでいる
『52ヘルツのクジラ』の作者である町田そのこさんの作品。
2023年一作目はこの本。
2022年の最初も町田さんの作品『52ヘルツのクジラ』だった。
数奇な、偶然の選択
読んで、良かった。
もっと多くの人に読んでほしい、と思った。
・
自分への哀れの涙と、笑いと、口の中にしみる血の味。
これも全部、あの日
私を捨てた母のせい。
そんな千鶴と
親がいない、聖子を母親のように慕う恵真
娘に捨てられt、なんでもできる素敵な女性・彩子
彩子の娘で若くして妊娠した美保
そして、いつ千鶴のことを忘れてしまうかわからない母・聖子。
あまりにも残酷な運命。
せっかく会えた母は、文句すらぶつけられない。
あの日の記憶はもう、、、
.
.
心が抉られる。
思わず目を背けてしまう描写。
でも、決して他人事ではない。
「認知症」というものが
いかに自分が知らない
想像を超えるほど残酷で受け入れ難いものなのか
美保ちゃんの母に対する態度、八つ当たりはあまりにも理不尽で見るに堪えられない。でも、、なぜか恨めない。二人とも見ていて辛い。
「母おやらしく」いたい彩子と「母親に捨てられた」千鶴。母親の「わかる」のために生きてきた聖子。
それぞれの視線から見た家族像、母親に対する考えや思いが、どれも否定できるものではないが、受け入れたくもない。
みほちゃんの態度や発言を通して、自分の人生がこうなったのは母親のせいだけではない。と気づく千鶴。
自分だったら、人のせいにしてしまうし、それが許されると思うのに、、、
あまりにも、強い。逞しい。
ものすごくひどく、
苦しく、
悲しく、痛く、
辛い状況に陥った彼女たちが、
、もっと、
たくさんの人に読んで
心の琴線のどこかに触れるはず
だと
思う作品です。
個人的には52ヘルツのクジラの方が好きだった(笑)
__「私の人生は最後まで私が支配するの。誰にも縛らせたりしない」___
彼女の描く世界は
残酷なのに温かい
町田そのこさん
1980年生まれ。福岡県在住。2016年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞。2021年に「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞。
【代表作】
『コンビニ兄弟』
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
『星を掬う』
『宙ごはん』
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