コラム① 肥満遺伝子は存在するか?
記録はアメリカの男性なのですが、アメリカには日本では信じられないくらいの肥満症の方がたくさんいます。
“太るのも才能”と言いますよね。
100kgの壁は厚いとも聞いたことがあります。どうやら、体重100kgになる前に病気になってしまう人が多いようです。
肥満はたくさんの病気に関連していますが、今回は糖尿病の話です。
糖尿病と関係が深いホルモンにインスリンがあります。
インスリンは糖の運び屋です。インスリンが血液の糖を体中に運び、運ばれた糖は、エネルギーになったり、脂肪になったりします。図!!!
インスリンが上手に働けなくなると、血液中に糖が余ります。これが糖尿病です。
同時に、脂肪も作れなくなるから体重も増えなくなる、というわけです。図!!!
ところが、もともと欧米の白人は日本人の2倍近くのインスリンを作ることができると言われています。
インスリンを作れる量が少ないので、日本人は太っていないのに糖尿病になってしまうのです。
なんだか、損をしている気がするのは私だけでしょうか…。
このインスリン量の差は農耕民族か、狩猟民族かの違いと説明されることが多いようです。
日本人は歴史的には農業を中心にして生活してきました。
農業をしていると、秋に収穫した穀物を1年に分けて少しずつ食べることになります。
肥料や機械の力を借りている現代と違って、昔の農業は効率の悪いものでした。少ない食料で食い繋いでいるイメージですね。
飢饉が起こるような不作の年には、もっと食べ物が少なくなります。
このことから、農業を中心とした環境は、少ないエネルギーを効率よく使える遺伝子に有利でした。
狩猟はどうでしょうか。
獲物が取れたら腐る前にたくさん食べて、脂肪として蓄えなければなりません。
次にいつ食べられるかわからない狩猟中心の生活では、食べれる時になるべく多く体に栄養を吸収する能力が必要になります。
このことから、狩猟を中心とした環境は、一度に多くのエネルギーを吸収できる遺伝子に有利でした。
エネルギーを吸収するためにはインスリンが必要なので、欧米人はインスリンをたくさん作ることができるのです。
ちなみに、同じ量のインスリンであれば日本人の方が効率よくエネルギーを吸収できるみたいですよ。
長い歴史の間にできた遺伝子の違いによって、食べ物に困らなくなった現代では日本人は糖尿病になり、欧米人は肥満になるのです。
今日はここまで!
「肥満になりやすい遺伝子」の話じゃなくて、「肥満になることのできる遺伝子」の話でした。
読んでくださり、ありがとうございました。
補足
欧米人は狩猟と書きましたが、より正確には牧畜になるかと思います。
一般的にヨーロッパの主食は小麦と言われますが、小麦は米と比べてはるかに生産性が悪い穀物で、小麦だけで人間社会を保つのは難しいそうです。
当時の小麦はまいた種、1粒につき2、3粒しか収穫できなかったと言われています。ヨーロッパ地域で「まいた種の10倍の収穫」が見込めるようになったのは19世紀になってからだそうです。
米は、奈良時代(8~9世紀)で既に10~20倍も収穫できたと言われているので、差は歴然ですね。
種から1年間、手間暇かけて育てても2倍では、とても農業だけでは食べていけません。しかも、米と違って小麦は連作障害もあります。
だからヨーロッパの多くの地域では牧畜が盛んだったのです。
家畜の肉はあまり長期間は保存できないため、狩猟と同様に、その時に食べてしまうのが主流でした。
遺伝子的には、やはり一度に多くのエネルギーを吸収できた方が有利であったと言えます。
肥満が少ないと言われているのは、正確には日本人でなく東アジア人です。
欧米の白人の他に、黒人やヒスパニック系の人種にも肥満は多いようです。
東アジアの主食は…、そう!米です!
主食の違いが遺伝子の違いになって現代にも残っているのかもしれません。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits1996/7/5/7_5_8/_pdf
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