【43】忘れられない1年
こうして。
無事に引っ越すまでの間。
【軽やかに生きる自分】へ移行するための【やらなければならないこと】
(いろんな手続きや交渉事など)
は、山積みだった。
でも面白くないので、そこは省いて。
【あ。この人のこと忘れてた。】
というのはケイだった。
ナッツとアカルンは、
通信制高校へ通うので、
前に住んでいた家に帰っても、
同じ環境というわけではない。
でもケイは。
また、前と同じメンバーの中学校に、
入学することになる。
6年生という1年間だけを過ごした、よその街で小学校の卒業式をして…
また、前いた街の中学校に入学するという、へんてこりんなことになった。
そのことを、おそるおそる説明すると…
「ふーん。別にいいよ?」と。
そして、ニヤリと笑って。
「あっち帰って。みんなに…
『え?俺、6年生の時もずっといたよ??一緒に卒業したじゃん。ひどいなぁ』って言えばさ、みんな、
(?自分と違うクラスにいたっけ?)って思うんじゃない?」
「うん。絶対ひっかかる人いる」
とご機嫌で。意外なことに大丈夫だった。
(現に、数人はこれにひっかかって、ケイは満足していた)
小学校の担任の先生は
「あ。中学校はあっちに帰られるんですね?わかりました☆」
って、軽やかで、話が早くて助かった。
小学校の卒業式の日。
先生は、私のところに来て
「お母さん。ケイくんって…。」
と、にっこり笑ってケイを見て。
「子どもらしい子どもって感じで楽しかったですよ」
と言ってくださった。
卒業式の帰り道。
ケイと一緒に歩いて帰った。
驚くことに…
私の想像していたルートと全然違う道だった…
引っ越ししてきて…
あまりの忙しさに忘れていた。
この人。
ど、方向音痴だったんだったー。
朝は、みんなの流れにのって行けばいいからスムーズに登校できていたが。
でも帰り。
最初のうちは、いろんな道を通って、偶然帰り着くかんじだったんだと。(確かに似たような小道が多いのだけれど…)
そんな命からがら帰ってきてたとは。
それを卒業式の帰り道に知る恐ろしさ…
「だけどね。もう、この道が1番いいってわかって、最近はずっとこの道」
て、私を案内しながら歩いてくれた道は、確かに車の多い大通りを通るより、緑の多い素敵な小道だった。
(もちろんすごく遠回りだけど)
でも。
ケイは、景色だけでその道を選んでいたのではなかった。
「お?アイツいた!エライ!
今日も俺が通るって待ってたのか?」
と言いながら、ケイがかけ寄った先には…
立派な家の門の中で、明らかに、ケイを見つけて喜んでいる様子の柴犬。
「そーか。待ってたのか今日も。じゃ。3回だけだからね。持っておいで」
と、ケイが言うと、
そのかわいい犬は、ダッと走って奥の芝生の庭に行き、また門の前に帰ってきた来た。
口に、ソフトボールをくわえて。
ケイが、門の隙間から手を伸ばすと、そのボールを渡すかわいい犬。
「よーし。それ!」
と、奥の芝生に向かってボールを投げるケイ。
嬉しそーにしっぽを振りながら走っていって、あっという間にまたボールをケイに持ってくるかわいい犬。
3回って言ったくせに、何度も2人(?)は繰り返していた。
それを見ていたら…なんか…
ジーンときた。
『ちゃん』だけじゃなく、ケイも、地球を楽しんで生きるのが上手だなぁって。
そして。
柴犬くんありがとう。
こんな、学校行ったり行かなかったり、いつ通るかわからないケイのことを待っていてくれて。
ケイの下校時間を楽しい時間にしてくれてありがとうね。
こうして、とっても濃い1年。
私にとって、後戻りできないくらい
いろんなことが動き出した1年が終わった。