【33】エネルギー界
その日から。
夜、唇だけの『ちゃん』と短い会話をした。
何日かすると…
「あのね。少しずつ、そっちに行くエネルギーを増やしてもらってるんだ♪」と『ちゃん』が嬉しそうに言った。
地球のエネルギーが少しずつ安全になってきたのか…
『ちゃん』自体が、危ないエネルギーに強くなってきたのか…
あまり、『ちゃん』の話ではわからなかったが…
とにかく、アップデートがすすんでいるのだとか。
こっちの感覚を、味わうことまでできるようになってきたとのこと。
「ふぅ~ん」
と、かろうじて話についていっていたが…
(もともと、遠い星の存在なんだから、会話できるだけで十分じゃない?)と私は思っていた。
すると、ケイの目がパチッと開いて
「見えた!ママだ!アカルンだ!!ナッツは?」
と、大喜びの『ちゃん』
寝たままきょろきょろ眼だけを動かして
「懐かしいなぁ~大好きなお家だ」
なんて言っていた。
その表情を見ると
「あぁ。『ちゃん』だ…」
と、一瞬。
何とも言えない幸せなエネルギーに包まれた…。
でも。
私は、パインアイス事件(ちゃんとのお別れのこと)から…
またすぐに『ちゃん』が声だけという状態で現れて…
あまりの展開の速さと、
不思議な状況に
少しついていけていなかった。
でもアカルンは
「良かったね~『ちゃん』☆」
と、『ちゃん』のほっぺたを両手で挟んで喜んでいた。
机にいたナッツもケイの布団まできて
「ちゃん♪ 見えるの?ナッツが☆」
と、ケイの目の前に顔を寄せた。
「うん♪ ナッツ久しぶり!」
『ちゃん』はご機嫌だった。
そして…
「ね。ケイの口に、何か入れてみてん♪」
「多分、味がわかると思うんだ。」
やっぱり、『ちゃん』は『ちゃん』だった。
優しいナッツとアカルンが
ストローでオレンジジュースを飲ませてあげて、
『ちゃん』は大喜びしていた。
私は
(まったく…ただでさえ色々大変なのに次から次になんなのー)って思いかけて…
(何?『ちゃん』がいなくなったら泣いたのに…
今度は『ちゃん』が来ても嬉しくない自分)
(そういえば、『ちゃん』が来れなくなった日も。
私は『ちゃん』が毎日来る生活を、
このままでいいのかなって不安になってた。
最初は、なんてかわいい宇宙の子♪って喜んでたくせに)
そして…
ケイの顔の『ちゃん』が
寝たままストローでジュースを飲み
「やっぱり、甘くて酸っぱいって美味しいね!」
とナッツとアカルンを笑わせている景色を見ながら…
(こんな家族いるんだろうか…)
と途方にくれた。
そして…インターネットで…
【エネルギー】とか【宇宙の子】
とか、思いつくキーワードで検索して、自分を安心させる情報はないかと
調べるようになっていった。