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クレープ

「入院する前にまたクレープを焼いて」

次男にずっと言われていた。

今日、私はクレープを焼いた。

◇◇◇

今月の終わりから来月にかけて、入院の予定だ。

昨年の夏、救急車と病院のお世話になり、子宮の病気(良性疾患)が見つかった。

月に一回通院で治療を続けてきての、今回の入院。
主治医と話し合い、希望を伝え、手術を予定している。

今よりもっと元気になれたらという望みを持ってのものなので、どうかご心配なく。

入院期間は、手術の術式(現時点では腹腔鏡予定、やってみて開腹に切り替えるかもとのこと)と回復状況によるとのこと。

長男の高校受験が終わり、長男次男の卒業式と入学式(それぞれにあるので計4回)に出られるようにという希望を主治医に伝えての日程。

夫、長男、次男に、ゆるゆると家事を教えている。
炊飯器の使い方、洗濯機の使い方、お風呂の洗い方、トイレ掃除、ゴミの日、薬の置き場所、子ども達の保険証……。

説明をする。
やってみる?に即答するのは小6次男。物覚えがいい。
中3長男は「あとで」、ゲームがしたいのだ。説明中も白目で変顔。
夫は慎重に、一つ一つ確かめながら行動に移す。

会社や学校がある。
わちゃわちゃのぐちゃぐちゃになるのではないかと思っている。

◇◇◇

クレープの始まりは昨年の暮れ。


近所にクレープ屋が開店し、家族で出かけたついでに偶然、その店の前を通った。

次男が「クレープを食べてみたい」と言い出した。

SNSで取り上げられているからか、店頭には行列ができ、並ぶのはちょっとなぁ……としぶる夫。(彼は飲食店に並ぶのが苦手)

クレープはあきらめて帰ろうとなった。

しょんぼりを隠して陽気に振る舞っていた次男が不憫で、「じゃあ、お母さんが作るよ」と言うと、

「え?クレープって家で作れるの?!」

驚く次男。

今、私はお菓子を作らない。 
中学、高校の頃はよく作った。

幼少期の子ども達は、洋のスイーツよりも和菓子(ぜんざい、どら焼きや饅頭、芋羊羹)が好きで、長男にいたっては果物が苦手。

ゼリーやプリンを作ったりはしたのだが、手作りケーキやクッキーは作ったことがない。
せいぜい市販のクッキーにアイシング。

その日、私はクレープを焼いた。

生クリームを電動泡立て器(←持ってます)でツノが立つまで泡立て、カットした苺を添えた。

うまぁいい!!!!!
お母さん、天才。

男性陣の反応に、私が驚いた。

どこからどうみても普通のクレープだから。
普通に美味しいよ、レシピ通り作ったからね。

次男はその日何度も、お母さんのクレープ、美味しかった、また作ってと繰り返した。


◇◇◇

「入院する前にまたクレープを焼いて」

聞くと、胸が苦しくなった。

クレープを焼いたら、入院する日が近づく。

自分で望んで決めた入院なのに、不安とこわさが押し寄せる。
押し寄せては、ひく。
波が高い日と低い日がある。

50歳になるのに、こんな事がこわいだなんて情けない。

何が不安?
何がこわい?

noteに書くと落ち着くと思ったが、やはりザワザワする。でも書かない時よりはいい。

ザワザワしてもいいのだと自分に言い聞かせる。

コロナやインフルエンザに私や家族の誰かが罹患したらキャンセルになるのも、緊張している。

子ども達の入学手続き、制服採寸を済ませ、中学の新入生説明会に出て、次男にスマホを購入し、長男はアンドロイドからiPhoneにしたいというので機種変更し、次男の壊れた眼鏡を新調し、PTAのしごとはGoogleドライブに格納し、入院期間中の銀行引き落としの額(月々の支払い)も準備完了。あとは?あとは何かあった?

病院の入退院サポート室に行ったとき(入院予定の人は行かねばならない)

「入院の持ち物リストにあるものは、全部揃えて来なきゃいけないですよね?」
と質問したら、

「そんなの、入院してから売店で買えばいいです、暇だもん!笑」

看護師さんに明るく言われたが、私は全部揃えてしまった。
そういう性格なのだ。

今日、私はクレープを焼いた。

「世界でいちばん美味しい」と次男が言ってくれた。
夫と長男も喜んだ。

入院は、もう少し、先のこと。


しばらくはこのような、わちゃわちゃのぐちゃぐちゃnoteになりそうだ。

よかったら読んでください。

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