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小説

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異形ひしめく船上都市での群像劇『バラックシップ流離譚』他連載中
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2021年5月の記事一覧

『バラックシップ流離譚』 キミの血が美味しいから・15

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 ニーニヤとウィルはまず、怪死事件の情報をもたらした人物を訪ねた。
 改めて話を確認し、新たな情報がないか引き出す――その犬人《ドギーム》の男は、根っから野次馬根性の持ち主らしく、見聞きしたことを喜々として語ってくれた。

「やはり、一連の殺しは同一犯と見て間違いなさそうだね。次の事件までの間隔が、徐々に短くなっている点についての見解は?」
「オレが思うに、犯人は殺しを愉

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『バラックシップ流離譚』 キミの血が美味しいから・14

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 ギヨティーネ勢の士気は高かった。
 襲撃日時を予告するなどという「なめくさった」態度をぶつけられたため、一気に噴きあがったのである。
 幹部クラスの内通者も出たものの、彼らは皆急速な組織の拡大により、おこぼれ的に幹部の椅子を手に入れた新参者だった。
 古参の構成員からすればいてもいなくても同じ、むしろ戦いが始まる前に裏切ってくれて助かったとさえ思われている。
 残ったの

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