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陝西省八大怪、第一怪、第二怪:小麦文化の奥深さ


北は麦作、南は米作

陝西省、特に西安を含む関中地域は、麦作地帯です。

関中地域の南には秦嶺山脈という標高2000〜3000m超えの山脈が広がっていて、この山脈が中国大陸の食文化において、麦作と米作を分ける境界線として機能しています。
標高は日本の北アルプスと同程度ですが、その長さはなんと約10倍。内陸部の広範囲にわたって連なっているため、南北の気候境界線を形成しています

下の緑が泰嶺山脈。上の黄土高原に堆積した黄土と豊かな水で
中央の関中平原は大変肥沃な地域です。

モンスーンが山脈によって遮られるため、北側は降水量が少なく、
関中地域は麦作に適した広大で肥沃な黄土平野が広がっています。

陝西省は麦が主食

関中地域では多様な麦文化が発展し、日常の食事は三度ともに小麦を主原料とします。特に麺と饅頭が主食です。
陝西省(関中)には、「八大不思議」と呼ばれる代表的な伝統民族風習がありますが、そのうちの二つが小麦の食文化に関する内容になってます。

陝西八大怪

陝西八大怪:麺がまるでズボンベルト並みに太い

三秦面条真不赖,
擀厚切宽像裤带。
面香筋道细又白,
爽口耐饥燎的太。

三秦(関中)の麺は本当に素晴らしい。
厚く広く切った麺は、まるでズボンのベルト。
香ばしくてコシがあり、細くて白い。
さっぱりした味わいは、もたれないのに腹持ち良し。

 

ベルトのように太い麺と聞いて思い出すのがビャンビャン面。
今や中国全土を超えて世界に広がる関中地域の伝統料理ですね。

出典:西安biangbiang面加盟

一般的には汁なしで、つるっとなめらかな麺肌にラー油や醤油など、シンプルなソースが塩っぱく絡むシンプルな家庭料理です。
一度にたくさんの小麦が摂取できるので、農作業に汗する人々のお腹を満たしてきました。


 

陝西八大怪:鍋蓋みたいなパン

饼大直径二尺外,
又圆又厚像锅盖。
陕西把饼叫锅盖,
里酥外脆易携带。

餅は直径2尺以上で、
丸くて厚く、まるで鍋の蓋のよう。
陝西ではこの餅を「鍋盔」と呼び、
中はサクサク、外はカリカリで持ち運びが容易。

 

鍋盔は、古代から陝西省(関中)で作られてきた、鍋蓋みたいに大きな伝統的パン。

この鍋盔の由来の一つに、六国を統一した秦の兵士たちが、軍糧として持ち運んだという伝承があります。湿気が泰嶺山脈に遮られた内陸部である関中地区は、気候が乾燥しており、保存性の高い食品が求められていました。鍋盔は、硬くて保存が効きやすいパンであり、長期間保存しても品質を保つことができます。

でもこれ、ただ保存が効く硬いパンではありません。平べったく大きいのに、中はサクサク外はカリカリ。そんな鍋盔を美味しく作るには、何よりも火加減が大事です。

普通のパンのようにオーブンで焼いただけでは美味しい鍋盔はできません。

本物の鍋盔は、収穫したての良質な小麦わらを使用して作られるといわれています。大きな火力は出ないものの、弱火でじっくりと火を通すことで、大きくともカリカリサクサク。かつ、麦わらの香りが鍋盔に移ります。

その香ばしさはもう、絶品なのだとか。しかし、現在では木炭やガスを使って作られることが一般的で、正統派の製法で作られた鍋盔を味わう機会はほとんどありません。

この他にも、陝西省には小麦料理のバリエーションは奥が深いです。


肉夹馍
焼きたての平たいパンに煮込んだ肉を挟んだサンドイッチのような料理です。
ジューシーな肉とカリカリのパンが絶妙なバランス。
油泼面
手打ちの太麺に熱々の油をかけ、
ニンニクや唐辛子、醤油などで味付けされた
シンプルながらも風味豊かな料理。

凉皮
小麦粉から作られるコシのある冷たい麺で、
ピリ辛のソースやゴマダレ、野菜と一緒に食べます。
暑い夏にぴったりの爽やかな一品。


私は、そろそろ日本でも、アジアの多彩な小麦料理の魅力を受け入れる土壌が整ってきているのではないかと感じています。特にパンについては、まだまだ日本入ってきていないものがたくさんあります。アジアには西洋のパンの文脈では語れない、奥深いグルメの世界が広がっています。


近年、コーヒーやベーカリー、スイーツなどの分野で、近隣アジア諸国から独自に発展したグルメを取り入れる機会が増えました。そういった国々では、新しい味やスタイルを積極的に受け入れる姿勢が、グルメシーンの発展を支えているのでしょう。日本も他国のアレンジを通したものではなく、まずはダイレクトに新しい味を受け入れ、日本独自のスタイルを提案していけたなら。

もちろん日本伝統料理も素敵なのですが、最近は、近隣諸国のグルメシーンの勢いが凄まじく、それに対して日本の動きが少し物足りないと感じることがあります。これから日本でも、新しい風を取り入れた独自のアレンジがもっと広がっていくといいなと思うのです。

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