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橘の古代(1)
いらしてくださって、ありがとうございます。
以前、日本書紀や古事記に登場する「橘」を追った記事を書いていましたが、うまくまとめられず。けれどどうしても気になる「橘」なので、あらためて綴っていこうと思います。
ゆるりとおつきあいくださいますとうれしいです<(_ _)>
そも、橘がどうして気になっているかと申しますと……。
ひとつには、ずっと追いかけている「蘇我氏」の邸宅があった場所の地名が、「橘」を冠していること。
蘇我氏と縁が深い聖徳太子の父上・用明天皇の和風諡号は「橘豊日」ですし、聖徳太子の妃にも「橘大郎女」という女人がおられることなどから、「蘇我氏と橘って、何かある?」と漠然と思っていたのですけれど。
日本書紀の関連資料を読むうちに、その成立に強い影響力を持っていたとされる藤原不比等も、橘に関わってくることに気づきました。
藤原不比等の父は、乙巳の変(645年)で蘇我入鹿を討った中臣鎌足(鎌足はのちに、天智天皇から「藤原」の姓を賜ります)。
そして不比等の妻のひとり、県犬養三千代という女人は、歴代天皇に仕えた宮廷女官とされ、彼女がその忠勤を愛でられて賜った姓が「橘」でした。
なぜ、不比等の妻は「橘」姓を与えられたのか。
なぜ「橘」でなければならなかったのか?
ここに思い至ったとき、ひとつの仮定が浮かびました。
不比等は、自身の娘を「橘の女」にする必要があったのでは? と。
三千代が橘姓を賜ったのは708年とされます。
このころ、不比等の娘・光明子は、のちに聖武天皇となる皇子の妻となることを予定されていました。
いずれ皇子が即位して天皇となったとき、妃の最高位である「皇后」の座に娘の光明子をつけてやりたい。不比等はそう願ったかもしれません。
それは単純に「女人としての最高位」を与えるというだけでなく、推古・皇極・持統天皇らのように、夫である天皇に万一のとき、「皇后が即位して帝位に就く」ことまで想定していたかどうか──。
しかし当時、皇后になれる資格は「皇女」に限定されており、臣下の娘である光明子には望むべくもない地位でした。
そのため不比等は、我が娘・光明子に箔をつけるため、妻・三千代に「橘」姓をくだすよう、元明天皇を動かした。
生母・三千代が橘姓を与えられ「橘の女」になった。
ゆえに、三千代が生んだ娘・光明子も「橘の女」である。
後付けであっても「橘を冠した女」という形を整えたことで、「光明子は皇后になるにふさわしい」と主張しようとしたのでは、と想像するのです。
ではなぜ「橘の女」が、皇后になるにふさわしいとされるのか。
橘という花木の名は、垂仁天皇の御代、常世国へ「非時香果(ときじくのかくのこのみ)」(この果実は当時の「橘」のこととされています)を求めにいったタジマモリという人物にちなみ、タジマバナが変化してタチバナとなったという説があります。ほかに「立ち花」など諸説もあるのですけれど、私は別の由来を想像しています。
秦氏の花。
秦の花、秦つ花。ハタツハナから「は」が欠落してタツハナ、それがさらにタチバナへと変化したのでは、と。
古代、この国に(数度にわたり)渡来してきた秦氏は、養蚕や機織、金属加工などの高度な技術や薬などの文化を移入したとされます。
それまで、自然のなかに八百万の「姿なき」神々を見出していた素朴な人々は、渡来の高度な技術をあつかう彼らに接したとき、「これが人の姿をした神か!」と崇めたはずで。
人の姿をした神は、やがて在地の人々と交わりつつ、その血統は高貴な一族・王の系譜となっていき──。
つまり、不比等の生きた時代にはまだ、
『この国の王統に就くにふさわしい女人は、秦氏の出自の女(橘の女)でなければならない』
という不文律があったのではないかと。
……ふふふ。
想像している分にはなかなかいいアイデアだと思ったのですけれど、こうして文章にしてみると、あまりのぶっ飛びぶりに「何言ってんの?」とセルフつっこみせざるを得ませんね。
この妄想については小説のほうで使っているのでここまでとしまして。
橘について調べたことを、これから『橘の古代』記事にて備忘録的につづってまいります。
前置きが長くなりましたが、次回は「橘と水の親和性」について書く予定です。橘と水って、すごく気になる組み合わせなのですよ。いくつかの伝承とともにご紹介したいと思っています。
何度書いても途中で挫折してしまう橘関連の記事、今回は最後までまとめられますように(祈)。
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最後までお読みくださり、ありがとうございます。
先日、右手首を痛めてしまい、スマホの音声入力を初めて使ってみました。思いのほかスムーズに漢字変換もしてくれて、すごいぞ~! と思ったのですが、古代の事物についてはさすがにうまく変換できませんでした。へいししょうりんけん~~~。
はやいもので今年も折り返しですね。
暑さはこれからが本番、みなさまもくれぐれもご自愛くださいませね。
よき夏をお過ごしになれますように(´ー`)ノ