古代史随想(7)
いらしてくださって、ありがとうございます。
この国の古代に「海を渡ってやってきた人々」のことを知りたくて、船に関する資料を調べていたら、不思議な線刻画に出逢いました。
この図は、岐阜県大垣市桧町の荒尾南遺跡から出土した壺(高さ17センチ・口径12センチの広口壺)に描かれていたものです。
三艘の船が描かれているとのことですが、かなり分かりづらく……。
中央の船は上から見下ろした構図で、両側に82本(!)ものオールを備えた大型船とのこと。船上にはたなびく旗が描かれ、船首と船尾は「イチョウの葉の形」をしている、と説明されています。
左右には側面から見た構図で、帆掛け船も描かれています。
(図の詳しい説明は、↓ 以下の岐阜県のサイトからご確認ください)
この線刻画、弥生時代後期の土器に描かれていたとのことで、はじめて見たときは「想像上の船」を描いたものだと思ったのです。
82本ものオールをもつ大型船は弥生時代のこの国には存在しなかったでしょうし、イチョウの葉の形の船首・船尾もファンタジック。岐阜県ホームページの説明にあるように、葬祭儀礼などの船として描かれた想像上の絵画である、と。
ところが。
たまたま古代エジプトの番組を見ていたら、よく似た絵画に出逢ったのです。
紀元前1450年頃の古代エジプト・ハトシェプスト女王葬祭殿のレリーフ画のなかに、「プント国との貿易のための遠征を描写した場面」があり、そこに描かれた船の姿におもわず「これは!」と声が出ました。
番組内容をここに添付はできませんので、『Hi-Story of the Seven Seasー水中考古学者と七つの海の物語─』(https://suichukoukogaku.com/)さまの画像を以下に引用させていただきます(★引用元のページは文末にリンク)。
画面中央に二艘の船が向い合せになっている、その船首(船尾?)に、イチョウの葉のようなものがあるのがおわかりいただけますでしょうか。
すこしわかりづらいので、ハトシェプスト王がオベリスクを運ばせたときの船の図を以下に。
こちらの図の左手に描かれた船首(船尾?)のイチョウの葉の形、おわかりいただけますでしょうか。
番組では古代船の再現に取り組んでいて、このイチョウ葉の造形は、楽器のラッパのように作られておりました(ラッパの口は平らで穴は開いていません)。
調べてみるとこのイチョウ葉のような形は、パピルスの花をかたどっているように思えます。
ちなみに、以下の古代エジプトの船のオールの描き方も、さきの岐阜県の遺跡線刻画のオールの形によく似ていると思うのです。
弥生時代後期の日本に、古代エジプト船によく似た船の絵が存在する。
これはつまり、卑弥呼のころの日本に、「古代エジプト船を知っている者がいた」ということになるのでは。
岐阜県で出土した土器は、どこで作られたものなのか。
土器の形状からおそらくは日本で作られたと思われ、その作られた場所に、古代エジプト船を知っている者がいた、と想像すると、その人はどうやってこの国にたどり着いたのか。
土器製作の技術者として、あるいは、特殊な儀礼のための線刻画を描く絵師として?
あるいは。
その大きな船は、弥生時代のこの国の沿岸に寄港していた可能性も……?
古代エジプトの番組では、壁画に描かれた船は「ナイル川ではなく、紅海を運行していた」ことを検証し、実際に古代船を当時の技術で再現建造したうえで、海を航行させ、古代プント国と想定される場所までたどり着いていました。
弥生時代後期を卑弥呼のいた3世紀ごろとして、その千数百年前のエジプトには、海を航行する大きな船が存在していた。
太平洋を横断するような航海は不可能でも、紅海を出て、インド方面から沿岸づたいに寄港しつつ、古代中国や半島まで交易にやってきた人々はいたはずで。
半島までやってきた人々は、その先にある島まで、出雲や珠洲といった日本海側の港にまで、足を延ばしてみようと思ったかもしれません。
ただ、当時の日本には交易の相手となるような魅力的な産物はなかったかもしれず、交易船は一度立ち寄ったのみで、二度と現れることはなく。
けれど、丸木舟や準構造船しか知らなかった人々が目にした巨大船の記憶を何かに残したくて、土器に刻みつけた……なんて想像をしてみたり。
あるいは、遠い西域から日本にやってきた人が、自分の国にはこんな大きな船があったんだよ、と土器に刻んで人々に伝えたか……。
不思議な線刻画から、古代への想像はどこまでも広がるのでした。
『 Hi-Story of the Seven Seas 水中考古学者と7つの海の物語』さまの記事(★の画像はすべてこちらの記事から引用させていただいております)
はこちらから。 ↓
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最後までお読みくださり、ありがとうございます。
夏に映画を観に行ってからずっと体調がぐずついておりましたが、この数日はひさしぶりに落ち着いていて。体を動かせるありがたみをしみじみ感じる今日このごろです。
半袖で過ごせる陽気かと思えば、暖房が必要な冷えもあり、寒暖差が激しい日々です。みなさまもくれぐれもご自愛くださいませね。
今日もみなさまに佳き日となりますように(´ー`)ノ
冷たい風が吹く季節になるとピアノの楽曲が聴きたくなります。
『映像の世紀』テーマ曲にくらべると控えめなクァルテットでの演奏バージョンです。