山から人へ、人から人へ、人から山へ GOOD CYCLE PRODUCTの道すじ
皆さん、こんにちは。GOOD CYCLE リポーターのさとうです。
「人間にも地球にも良い循環を生む」ことを目指し、築30年のビルを自然素材を使って改修したGOOD CYCLE BUILDING 001。昨年、無事に完成し、多くの皆さまに見ていただき、雑誌やメディアでも幅広くご紹介いただきました!大きな反響をいただき、プロジェクトメンバー一同、とても嬉しく感じると共に「循環型社会への取り組み」は世の中に強く関心を持たれていること、社会全体の課題として真剣に取り組まねばならないことを改めて感じております。
今回は、GOOD CYCLE PROJECTの一環として、木材の端材でつくったGOOD CYCLE PRODUCTのその後、についてのご紹介をいたします。
100日間、あなたの部屋が森になる
淺沼組名古屋支店の改修で、建物の外観に使用した、樹齢約130年の吉野杉。建材として加工される際に端材となる端の部分は、柔らかくて変形しやすいため、建材とは不向きです。そのため、割り箸やチップ燃料などに使用されることになります。
GOOD CYCLE PRODUCTは、その端材を使ってプロダクトをつくり、クラウドファンディングにより皆様のお手元にお届けしました。
こんなふうにインテリアに素敵に組み合わせて使っていただいています。
廃棄されることになる材木の端材の部分まで「余すことなく資源を活用する」ことに取り組むことで、私たちの日々の生活を少しだけ豊かにすることができる。
建設業でも循環に取り組めば、その建築に携わっていない人にもこうして自然の恵みを感じていただくことができる、という大きな発見になりました。
そして、マクアケで応援購入いただいた収益は、「奈良県の森を維持するための活動費として寄付します」とのお約束でした。
収益をどのように活用させていただくかを奈良県の関係者の皆さま含め協議をした結果、これからの森づくりを担う人材を育成する学校で学ばれている方へ寄付をさせていただくことにいたしました。
そして、2021年の年末、淺沼組の浅沼誠社長が奈良県の吉野に訪れ、皆さまからの収益を「奈良県フォレスターアカデミー」の学生の方にお渡しさせていただきました。
奈良県フォレスターアカデミー
奈良県吉野地方は、日本最古の造林の歴史を持つ土地。今回、マクアケの収益金の寄付先に選ばれた「奈良県フォレスターアカデミー」は、吉野で2021年4月に開校されたばかりの学校です。
この学校では、自然のことを理解したうえで、森林にとって必要なことは何かを考え、それぞれの森林にあわせて最適な方法を求めて森づくりをマネジメントできる人材の育成を目指しています。
奈良県の目指す、100年続く理想の森林づくり
「伐る木もあれば、守るべき木もある。これまでは商売に結びつける林業が中心でした。それを、木を伐っていこうとするばかりではなく、森林の様々な機能を発揮できる森林づくりをマネジメントできる人材の育成を目指しています。」当日、学校を案内していただいた職員の方はそう言います。
奈良県では、スイスの仕組みを参考に『森林の4機能』を高度に発揮する森林づくりを目指しています。森林の4つの機能とは
①森林の資源生産
②防災
③生物多様性を保つ
④レクリエーション
これまでは、①の木材を資源として、伐採し活用していくことが主な機能でした。そこに、②防災の観点からも健全な山づくりを行うことで、土砂災害の発生を抑え、森林の土壌が水をつくり、豊かな土地を育むこと。
③は自然の生態系を保つ多種多様な森の姿。人工林だけでなく、生物多様性の森をつくることで、自然環境を持続的に保つこと。そして、④では、森林をレクリエーションの場所として、文化活動や休養の地として活用すること。自然の恵みを感じられる場所づくりを行います。
「フォレスター」を育てる
この、奈良県の目指す森林づくりを行うために、新たな取り組みとして、スイスの「フォレスター制度」を参考にすることになりました。
奈良県でスイスの仕組みを参考にするようになった背景には、防災意識への高まりがありました。
平成23年に起こった台風12号による紀伊半島大水害で、奈良県の森林も大きな被害を受けました。
一方、スイスでは、19世紀の大規模な皆伐により、森林の荒廃が進み、多くの災害が発生した教訓から行政による積極的な森林管理に取り組んできました。
奈良県が着目したのは、「地域の自然にあった近自然的で持続可能な森林管理」が重視されているシステム。森林管理の専門家である「フォレスター」(森林を管理する人)が長期間にわたって同じ地域を担当し続けることで、その土地にあった自然の形態を守りながら、経済と環境を両立させたきめ細やかで多様な森林管理を実現しています。
こうして、奈良県が災害に強い森林づくりを模索する中で、奈良県とスイス・ベルン州との交流が進み、ベルン州にあるリース林業教育センター(フォレスター養成校)との友好提携のもと「スイスを参考とした新たな森林環境管理制度」を担う人材育成の機関として開校されたのが「フォレスターアカデミー」です。アカデミーでは、森林機能を発揮するためのノウハウを、実習と座学を通して学び、森林を管理する「フォレスター」を育成します。
フォレスターアカデミーの学生に、なぜこの学校を選んだのかを聞いてみました。
「自分の父親は熊本で林業を行っています。
熊本で台風の災害が起きた時に、山がぽっくりと削れてしまっている姿を見て、自分の父親がしている仕事は何なのかと、改めて考えるきっかけになりました。
山は自然を守るだけでなく、産業としてお金を出さないといけないし、街に水を送り出すなど山の担う役割は大きいと感じています。それを全部成り立たせるにはどうやって勉強をしたら良いのかと考えた時に、一次産業だけではなくて、自然環境や防災についても学べるということでここに来ました。」
このように、様々な地域から生徒が集まってきています。中でも、林業から防災について学びたいという声が多く、皆さんの真剣な思いが伝わってきました。
「危険な仕事も多く、山での作業は辛いことも多いです。お弁当を忘れたらお昼も食べれないとか。(笑)
でも、準備も万全にして山に入れば、山ならではの快適さがある。リクリエーションができる森林づくりを学んで、自然を身近に感じられることを広げていきたいです。」
浅沼誠社長から、皆様へご寄付の品をお渡ししました
今回、皆様には、自然環境の厳しい山での作業に役立てていただけるようにと、高機能インナーのセットをお渡ししました。
浅沼誠社長からは、「奈良県フォレスターアカデミー様では、ここ吉野にて森林環境維持向上のための管理のエキスパートの養成に取り組んでおられ、森林資源の生産、土砂流出防止などの防災、生物多様性や豊かな自然環境の保全への取り組みは、淺沼組が目指す、「地球に優しくをかたちにします」の環境スローガンに合致するところであり、この度のクラウドファンディングでの収益をアカデミーで学ばれている皆さんに、お使いいただけそうなものとしてお持ちいたしました。」という言葉を添えて、お一人ずつにお渡しさせていただきました。
山から人へ、そして人から人へ、そしてまた人から山へ。
このプロジェクトに多くの方に参加していただいたことで、自然と人との道すじをつくることができました。
改めて、プロジェクト関係者と、応援いただいた皆さまにお礼申し上げます。
人と、森林との関係は、身近にある。
これからも、私たちのできることを考えていきたいと思います。
奈良県フォレスターアカデミー
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