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【本に寄せて】傲慢と善良(辻村深月・朝日文庫)

かなり長いこと積読になっていたこの本。
ひとり時間が大量に確保できたので、一気読みしてみた。

第二章に入った瞬間、この本に関する認識を間違えていたことに気づいた。
あれ?そういう本だったのか!…と驚いて、裏表紙のあらすじを読み直してしまったほどだ。

あらすじには別に嘘は書いてなかった。
私の解釈があらすじを書いた人と違っただけ。
読み取り方の問題だと思う。

そういうわけで気持ちを新たにして第二章以降を読んだ。

「傲慢と善良」に出てくる女性には、姉がいる。
姉と彼女とは同じ親に育てられながら、だいぶモノの考え方が違う。
だからなのか、彼女と姉の(人生の)現在地はおそろしく違う。

そうか。
やっぱりそうなんだ。

同じ親に同じように育てられても、全然違う兄弟。
そういう人たちはやっぱりいるよね。

実は私は、自分の兄弟が何を考えているのか分からない。
子どもの頃から大して仲が良かったわけでもないし、大人になってからはほとんど付き合いがない。
だから分かるほうがおかしいと言えばそのとおりなのだ。

でも同じ親に同じように育てられた人間だ。
同じ時代に、同じ空気を吸って生きてきたのだ。
ある程度、分かってもよさそうなものだろうに。

そう思っていたのだ。

私は親に対して思うところがたくさんある。
とうとうこの夏、私は「親と距離をおく宣言」をした。
これが好ましいものではないことは、もちろん分かっている。
自分の心を守ることを優先した結果だ。

ところで兄弟はどうなんだろう。

私が親から離れれば、親が頼るのは兄弟(←便宜上「兄弟」と書いているが、ひとり)だけになる。
ひとりで追い詰められたような状態にならなければよいが…。
仲良くないとはいえ、少し心配がないわけではなかった。

しかし兄弟もいい年をした大人である。
自分のことは自分で判断するだろう。
ひとのことに首を突っ込んでいる余裕は、私にはない。

このような状況で「傲慢と善良」における姉妹関係は、とてつもなく興味深いものだった。

※偶然にも、2024/9下旬から映画が公開される。キャスティングがちょっと気になる…。

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あさのしずく
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