『稲盛和夫の実学―経営と会計』 作者:稲盛和夫
経営者は、自社の経営の実態を正確に把握した上で、的確な経営判断を下さねばならない。そのためには会計原則、会計処理にも精通していることが前提になると、著者の稲盛和夫は言う。
稲盛氏は、27歳の時に京セラを創業し、ゼロから経営を学んでいく過程で、企業を長期的に発展させるためには、企業活動の実態が正確に把握されなければならず、また、経営に関する数字は、すべていかなる操作も加えられない唯一の真実を示すものでなければならない、と結論づけた。
本書は、「人間として正しいことを追求していく」という経営哲学をベースに「会計の原則」を確立したという稲盛氏が考える経営の要諦、原理原則を会計的な視点から表現したものである。
また、本書の後半には、氏が塾長を務めていた盛和塾に於ける、塾生たちである経営者たちとの「経営問答」が掲載されており、会計的な実際の悩みに対し、幾多のアドバイスを与えている。
「筋肉質経営の原則」
固定費の増加を警戒すること。間接人員は増やさない。余裕を持って持ち堪えられる範囲で固定費を増やし、利益率の低下には注意しなさい。
「土俵の真ん中で相撲を取れ」
商機に際し心配なく手が打てるように、常日頃から余裕が持てるように経営をすすめなさい。
話題はやがて、数字としてだけではない「目標設定」にも及ぶ。
経営者が会社について誰よりも真剣に考え、私心をはさむことなく、自らの意志で決断し、つくっていくものが経営の目標というものです。
高い低いではなく、まずは、経営者としてあなたが「こうありたい」と思う数字を持つことです。そのうえで、決めた目標を社員全員に、「やろう」と思わせるかどうかなのです。
不思議なことに集まる人間の数が多いほど、新たなものに挑戦しようという気持ちは隠れてしまいがちになるのです。経営者は、人間の持っている挑戦したいという新鮮な気持ちを表に引っ張り出すことができなければなりません。それにはやはり、思い切った目標でなければならない。
人は高い目標を掲げ、さまざまな困難を乗り越える中でこそ、喜びや、やりがいを感じることができるものです。
氏は、経営者のもっとも大事な仕事とは、将来に向かって大きな夢を描き、仕事の意義を明確にし、従業員の心に火をつけることだと言う。これこそがリーダーに与えられた大きな役割だというのだ。