『「金持ち脳」になって自由な人生を手に入れる 攻めの節約』 作者:生方 正
著者は、自衛官を務めながらニ億円以上の資産を築き上げ、四十代でアーリーリタイア。現在は、貯蓄以外に不動産投資で年間一千万円以上の収入があると言う。
「上手くやりやがって」
と、貴方はそう思うだろうか。
しかぁし! である。それ相応の努力・・・その言葉が穏当でなければ、知恵と言い換えても良い。何かしらの工夫、方途を用いなければ、ホイホイとあぶくの様に金銭が手元に残る筈はないとは思えないだろうか。
本書ではその著者のメソッドを惜しげもなく披露すると言う。これは読まずにおいてやるものか。
かくいう私、自慢ではないが(いや、本当に)、ほんの一時期を除き、貯蓄などというものとはトンと縁が無い人生を歩んできた。
事業家ゆえ、収入が保証された身ではなく、半ば諦めの境地ではあるのだが、何かを変えることで、その状況をひっくり返せるのであればメッケモンだ。
でなくとも、少なくともお金持ちの思考を理解することで、ボンビー生活にもなんらかの歯止めが掛けられるかもしれないではないか。
さてさて、著者の言うことはつまり、将来に亘りリターンが望めるものには出費も厭わぬが、価値を認めないものには一円も払わない、ということだ。
価値といっても、著者の言うところのそれは高級品とか贅沢品なのではない。自分を成長させるもの。書物であったり、セミナーであったりといった知識への投資。知見を広げる素晴らしい経験への投資。或いは、良いサービスへの投資であったりを指す。
さらに言えば、そのサービスの中には、己を磨く為に使う時間を生んでくれるもの。例えば、食洗機やお掃除ロボットとか、タクシーなどの移動時間を短縮してくれる交通機関も当てはまるのだ。
お金を上手く使って時間を捻出し、自らを成長させることにも投資し、周囲と広くて円滑な人間関係を築くことが出来る様な厚みを備えた人間になることが、結果的に富をもたらす。何故なら、そもそもお金は仕事や人からのご縁、情報がきっかけとなって増えるから、というのが著者の主張なのだ。
一方の支出も大事である。収入が幾ら増えても、応じて支出も増えてしまっては手元にお金は残らない。当たり前と思うかもしれないが、存外にもそういう人は多い。年収が一千万円でも、「生活にゆとりがない」という人は結構いるのだ。
まず、自分の資産、収入を把握する。そして負債、支出をチェックする。支出の内には、資産の維持費用を見逃してはいけない。吟味の結果、考えなしに無駄な支出をしていたことに気づいたら、それを是正する。
また、支出の仕方も最善な方法を選ぶ。この、著者が言うところの、「戦略的な使い方」に関しては、紹介し切れないほど細かく書かれているので、実際に本書を手にしてチェックしていただきたい。
収入を増やす。支出を抑える。いずれも手元資金を作るという目的は同じだ。しかし、金融資産などへの投資とは、高い率でリスクを背負うことだ。だが、節約には殆どリスクが無い。それならば、節約脳を鍛えてみるのも悪くはあるまい。
そして、明確な目標を掲げること。それが行動や思考を一瞬で変えるとも言う。漠然と生きるのと、何某の目標を照らし出した者との間には、自ずと差異が生まれるのだ。そんなに難しいことではない。単に、やりたりことリストを作れば良いのだ。目標を実現する為に必要なプロセスが浮き彫りになる。実現するのに必要な資金や時間を意識することで、双方の無駄遣いを減らすことが出来るのだ。
私は、何かに執着することはあっても、物欲というものが殆ど無い。また、財を成したいなどという気もさらさら持ち合わせていない。
だから、元々支出に関しては抑制が利いていたと思っていたが、いやいやこの著者ほどではない。
もうちょいと節約脳を働かせて、事業への投資額を増やす原資にさせてもらっちゃおうかな。
正直言って、お金が無い、もっと言えば不足する、という状態にいる時が、人間にとって精神的に最もキツイものだからね。