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社交界であっぷあっぷする親と、自然体の子ども達と、ニュージーランドと

久しぶりに自分のコンフォートゾーンをギュギュッと押し広げられる経験をした。
子どもたちがお呼ばれした誕生日会に同伴していった時のこと。

海外生活3年目になる息子も娘も現地に思い切り溶け込んでいて、ありがたいことにいつも誰かの誕生日会に呼ばれている。
そんな誕生日会、息子や娘はとにかくウキウキ参加をするし、親としてもお誕生日の子が幸せな時間を過ごしてほしいと心から願う。
その一方で、子どもの誕生日会という名の親の社交会に参加する立場に置かれる私たちは、ある種の覚悟が求められることが多い。
今回私が参加したお友達のお誕生日会は覚悟レベル上級編のお誕生日会だった。

会場のお友達のご自宅に到着すると、なんと見事に息子と娘と私以外はアジア人がいないのだ。
西洋人、しかもどうやら全員英語ネイティブらしき人たちばかりの空間が目の前に広がる。

一瞬、子どもたちだけ預けて、終了時間に迎えにあがりますねーと、伝えて自宅に帰りたくなってしまった。
英国で二年、カナダで三年過ごしたにも関わらず・・・というか過ごしたからこそ、英語ネイティブばかりの空間で自分のコミュニケーション力が試される状況が本当にトラウマなのだ。
すごいスピードと遠慮ない語彙力で展開される英語についていくのが大変なだけでなく、みんなが盛り上がる文化的コンテキストを共有しているわけでなく「笑いのツボ」が分からないことも多い。
今までに何度となく、自分の「場違い感」に自己嫌悪に陥ったことだろうか。
想像してほしい。

宇多田ヒカルが登場した時の衝撃って半端ないよね
いやー当時、自分はモンパチとか聞いてた方なんだよねー
あーいるいるーそういうタイプのクラスメイトー

みたいな日本人がたくさん集まって交わされる会話に、思い切り「分かる分かるー!」と会話に入っていけそうな外国人はどのくらいいるのだろうか?
仮についていけなくても、へーそうなんだー!と、ただその場を楽しめる素直な愛嬌を持っていればいいものの、私はその素直さも持ち合わせていないという残念な存在である。

大きなプールを見て、わーーー!っと何も考えずに、誕生日会の主人公とそのお姉ちゃん以外は見ず知らずの子ばかりの空間と水の中に飛び込んでいく天真爛漫な娘を横目に、女子ばかりの空間でもじもじくん状態の息子と、同じようにアングロサクソン人に囲まれて完全アウェイな私の二人は手を取って、大きなお庭を勝手にぶらぶらしたりしていた。
ガーデンテラスでは一つのテーブルを囲んで、参加者みんなが集まり大勢で会話に花を咲かせている。一番苦手な社交パターンである。せめて数人程度の小さな輪が何個もできている場であれば、フレンドリーそうな輪に入っていく勇気を持てるのだけど・・・

しばらく息子と二人でハッピーなパーティー会場で、二人だけ難民のようにウロウロと手持ち無沙汰な感じで時間を過ごしていたところ、ついに転機が訪れた!
誕生日会で恒例のPass the Parcel ゲームが始まるという。
これは参加する子どもの人数分、小さなプレゼントが何層にも渡って包まれている小包を、輪になった子どもたちが隣の人から受け取って、もう一人の隣の人に渡していくというゲームだ。主人公のお母さんが(プレゼントが公平に行き渡るように)音楽を止めた時にその小包を持っている子は包装紙を破ってプレゼントを獲得できる。

あんなにもじ夫だった息子は、このゲームが始まるよーという掛け声を聞いた瞬間に、猛ダッシュでみんなの輪の中に入って行った。
結局、彼は単純なのだ。

一人になった私は意を決して、その場で話しかけやすそうなお父さんを見つけて話しかける。
お子さんはあのゲームに入っていかないんですか?
と。
そこから、彼のお子さんが小児糖尿病で子育てで苦労が絶えないというお話から、ご家族で100年続くビジネスをやっていて、従業員管理やリテンションが大変だというお話など色々とお伺いできた。
それに対して私が提供したネタといえば、うちの娘はああ見えて低身長病とか深刻な病気じゃないんですよ。問題といえば頑固すぎて大変なことですかね。と、悩みの質が違うお話をしたくらいだ。
でも、とりあえず、優しいお父さんでよかった。

ゲームを経て、一気に場に溶け込みついに水泳に参加したい気分になった息子が話しかけてくるまで、なんとか私も社交界デビューの会話を繋ぎ止められた。

ほっ・・・

それでもまだパーティーは始まったばかりである。

そこからは私は「一人になった瞬間の人にすかさず話しかける作戦」を開始した。ある程度子育ての話題を中心に話しがもりあがっていくのだが、いつも息子か娘が「寒い」「お腹すいた」「トイレに行きたい」という生理的欲求を訴えてきて会話が中断される。そして悲しいことに新しく出会った社交仲間がまた大勢グループに吸収されていってしまい・・・

あーれー・・・

そこで再度覚悟を決め、「私はリア充!150%外向的」という雰囲気をまとったお母さんの横にひっそりと座り、会話に耳を傾けて、知っている単語があったらその単語をきっかけに会話に入ると決めた。
それはまるでビュンビュンと車が行き交う四車線道路を信号なしに右折で入って行かなきゃいけない感じである。
ニュージーランドアクセントと、会話の盛り上がりから、言っていることの7割くらいしか理解できないが、どうやら見学に行った保育園がモンテッソーリ保育園で、靴を履くポリシーなのかどうかというお話しがあったとかなかったとか。そしてシュタイナーとモンテッソーリって同じなのかと思ってたのに、という一言が聞こえて、これだ!と思って私はすかさず、
「モンテッソーリってそんな感じなんですか?」と声をかけて、その会話に入っていった。シュタイナー含めて幼児教育は自分も結構詳しいし、このテーマならなんとかついてけると判断したのである。
そして無事、右折成功!

なんとか話の輪に入っていくことができたのだ。
そこからは外向的なお母さんに、定期的に「日本はどうなの?」という質問をいただき、ミリンを「砂糖酒」と説明するくらいテキトーな感じで、日本代表としていち意見を申したりしてお話に貢献していった。

なんだ、やろうと思えばできるんだ、と少しの自己肯定感を取り戻してプールを眺めると、息子と娘は、自分の肌の色もネイティブ言語も全く気にせず周りの子たちときゃっきゃと楽しく遊んでいる。
そうだ、これこれ。

グループでの会話は想像していたほど大変ではなかったものの、やはりついていけないこともところどころあった。
例えば、お母さんの一人から、「あなたはニュージーランドに何年いるの?」と質問をされたとき。文法も語彙も非常に初歩的なもののはずなのに、アクセントとスピードの関係で全く質問が理解できず二回も聞き直してしまった。そのお母さんが三回目に質問を繰り返す代わりに、別のお母さんがゆっくり目に「通訳」してくれてようやくわかった
他には、昔は女性の寿命が短かったのは「ミニなんとか」というのが理由だったいう会話で私以外の女性たちみんなが分かるー!と盛り上がっていたときのこと。私の頭では、身長が小さいと寿命が短いとかいう話なのかなー?とハテナマークでいっぱい。そんな時にかぎって、突然また外交的なお母さんから「日本の女性はミニなんとかにどう向き合うの?」という質問を受けてしまった。

正直に、ミニなんとかってなんですか?と質問すると、そこにいた人が、ほら女性が40代とか50代になるとホルモンの関係で・・・という説明のようなクイズのような助け舟を出してくれて、ようやくそれが更年期障害ということだとわかった。

そうこうしているうちに、そろそろ水遊びに飽きた息子と娘が家に帰ると言ってきた。
無事、私も今日の社交時間は終了である。早く帰って一人で紅茶をゆっくり飲みたい。

そして今日はお呼びいただきありがとう、と主催者のお母さんにお礼を告げる。こういう時に、このお母さんにハグをするべきか否か分からない私は、結局握手をしてお別れをしてしまった。
どこまで行っても私は、結局西洋文化に溶け込んでいないのである。
子どもたちは私のようにならずに、自然と色々な人と心の壁なく付き合えるようになってほしいものだという思いを更に強くしたお誕生日会だった。

それにしても更年期障害をミニなんたらっていうんだなー難しいよなーと改めてGoogleで調べたところ、更年期障害は menopausal disorderとある。

!!

発音は「メノ-」であるべきだ。
出たー!!
IとEの発音が独特なニュージーランドアクセント!

そういえば以前、うちの夫が、このご家庭のお姉さんの方の誕生日会についていった時のこと。そこでお父さんがずっと「Prison」(牢屋)の話をし続けていると思ったら「Present」(贈り物)の話だった・・・とパーティーから帰ってきて報告してくれたことを思い出した。
多少の自信を身につけたところで、ニュージーランドの社交会のハードルは未だに高いのは変わらない。とほほ・・・

【NZ観光と子ども達の英語の様子】今回は、オークランドから車で4時間半(休憩時間も入れると半日以上!)かかるNewPlymouthというところにキャンプ旅に行きました。
こんな遠いところに来たんだし・・・!ということで、New Plymouthをたっぷり1日観光することにしました。
7歳児と5歳児の体力でも楽しめる自然の場所に足を運んだり、高校の美術教師をやっていた方が運営する博物館に行ってみたり・・・
今回は、海外で2年間生活すると、子ども達の英語はどんなふうになるのかというのもお伝えしています。来た当初はギリギリハローが言えるくらいで、何も英語がわからなかった二人。息子は語学と文化の壁で落ち込んで大変だった時期などもありましたが、今では観光地で色々な人と交流できるくらいに!たまに私が馴染みがない表現をしていたりもします。https://youtu.be/lNEaZrUPaMU


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