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#ショートショートnote杯
違法の冷蔵庫【ショートショート】
パトカーが家の前で止まった。
何かと思い窓を開けると、警官が降りてきて言う。
ある型の冷蔵庫に死体が隠されているという殺人事件が頻発している。奇妙なことにここ数日急激に増えたが関連性はない。マスコミに冷蔵庫の話は伏せ販売元から購入者を特定し、任意捜査している。後ろ暗い者は捜査を拒み、逆にそこから内偵し逮捕していた。普通の冷蔵庫なら特定も難しいが、特殊なものの為限られた購入者しかなかった。警官の話は
君に贈る火星の【ショートショート】
「いつか君にあの星を贈るよ」そう言ってあなたの指差した先には、赫く光る火星が。「ありがとう、楽しみにしてるよ」私はそう言ってあなたの手をぎゅっと握った。
あれから20年目の結婚記念日。ビロードのような 夜空の見えるレストラン。キャンドルと月明かりと少しの間接照明。
私達は夜空のように濃い色のワインで乾杯をした。宇宙旅行の荷造りをするようなウキウキした気分で前菜を食べ、天の川を味わうようにスープ
株式会社リストラ【ショートショート】
私は平山。NK株式会社の営業部の係長だ。
ある日突然部長がAとMという二人の中途採用者を連れてきた。
うちは今年から予算部署になったので優秀な営業マンが必要で、その二人をヘッドハンティングしたのだった。
確かに我が部署の営業成績は芳しくなかった。
最初は良かった。ところがある時から歯車が狂い始めた。私が目を通した見積書の桁が一つ違っているということが頻発した。
やがて私は部署内で無能扱い
並木道【ショートショート】
木の葉舞い落ちる並木道。
葉っぱが雪みたいな勢いで降ってくる。
この道は懐かしい道。
恋人と手を繋いで通った道。
私はそっと手を伸ばして、空を握る。まるで恋人の手がそこにあるかのように。
懐かしい匂いがしてくる。昨日の雨で湿った落ち葉の匂い。けれど空気はもう冬の気配を連れてきている。
恋人と出会ったのは、雨の多い時期だった。新緑が雨に濡れて、少しずつ葉っぱが大人になって、堂々とした緑へ