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並木道【ショートショート】

木の葉舞い落ちる並木道。

葉っぱが雪みたいな勢いで降ってくる。

この道は懐かしい道。

恋人と手を繋いで通った道。

私はそっと手を伸ばして、空を握る。まるで恋人の手がそこにあるかのように。

懐かしい匂いがしてくる。昨日の雨で湿った落ち葉の匂い。けれど空気はもう冬の気配を連れてきている。

恋人と出会ったのは、雨の多い時期だった。新緑が雨に濡れて、少しずつ葉っぱが大人になって、堂々とした緑へと変わっていく頃だった。

彼とはもう数年前に別れてしまった。

別れたのは冬の初め。その日この道は小雪が舞っていた。

分かっていた。ずっと一緒にはいられないことは。けれど、私は、クリスマス、彼とどんなふうに過ごそうかなんて考えていた。それが淡い夢でしかないことは分かっていたのに。

目の前に掌の形の葉っぱが舞い落ちて来て我にかえる。彼の手のように大きい。もう彼はいないのだ。

足の下でかさかさ言う落ち葉を踏みしめながら、私は懐かしい並木道を歩いて行った。



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