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【タレントと芸能事務所のトラブル】 おかしいと思った要求は大体、法律的には認められない

ちょっと乗り遅れてしまったのですが先週の金曜日にNHKの番組「首都圏情報ネタドリ!」で「タレントと芸能事務所の契約トラブル相次ぐ〜」というテーマで放送したみたいですね。

普段の番組作りから芸能事務所とも関係が深いであろう大手メディアでもこのようなテーマで番組を作る時代になりましたかと思いましたが、

内容としては、

・事務所とある音楽バンドが報酬の面で折り合いつかずバンド側が独立しようと決意をする。

・しかし、その動きを見た事務所側がバンド名の権利はうちにあるのでその名前での活動は認めない、退所後の半年間はこちらの許可なしにライブなどの活動は行えないと主張した。

・さらにはライブハウス、音楽関係者にはこのバンドが来ても協力しないでくれ、ライブを行わせないでくれなど妨害するよう求める文書を送りつける・・・。

客観的に見れば何それ、ひどくない?と思うような要求ですが・・・、

では、なぜ退所したバンドやタレントの活動をこのように妨害するのか?
それに対するある事務所側(また別の事務所です)の言い分としては、

売れるかまだ分からないのにレッスンの場を設けたり、そこで良い先生呼んだり、ステージに立つための衣装を用意したりと多額のお金を投資したのにちょっとでも気に入らないと思ったら突然「辞めます」ってそりゃあないとちゃいますか?

ってところです。この気持ちも分からなくはありません。

そうなるとやはり親しい関係性の業界内の人、事務所には「この人が来ても入れないでくれ」と通知書を送りたくなるそうですね。

この主張を見る限りは「所属者=その事務所のもの」という思考なんだと思います。この人はうちが育てたんだ、だから辞めようものならもうこの世界で活躍してほしくない、という考えと言っていいかと。

とはいえ、そんな主張は法律的には、裁判で争ったら大体は認められることはありません。

取り上げられたバンドも裁判を行い事務所側の主張は認められないと判決が出ました。

・バンド名を聞けばファンはメンバーを想起させるのであればその「バンド名」の使用権はバンド側にあると判断されて、

・一定期間の活動を制限させるのは公序良俗に違反し無効とした。

事務所側も一般社会では有り得ないと自覚があるようですが、
特に退所後は一定期間活動は出来ないというのは、ある会社を退職したら「しばらく就職しないでね」なんて会社側は言えませんよね?それと同じことだと思います。

過去にも似たような記事を書きましたが↓

例えそのような内容のことが「契約書」に書かれていたとしても、
一方が著しく不利な内容の場合は上記の通り「公序良俗違反」で無効にすることができます。

なのでタレント側が「なにそれ!?」と感じた要求や契約内容の殆どは事務所側の都合にあまりにも寄り添ったものなので、そんなのに従わなくてもいいよというのは頭に入れておいてほしいと思います。

「契約終了後の活動制限は、業界の慣例なので司法の判断に驚きましたが、結果は受け入れています」

判決を受けての事務所側のコメントなのですが、どうやらこれが「業界の慣例」のようです。

現に私もけっこう前に知り合いの俳優からも「こんな目にあった人がいる」と話を聞きました。なんとこちらの場合は「3年間」の活動禁止だそうで「それはいくらなんでも長すぎない?」と思い話題にしてきたのです。音楽界に留まらず演劇界でも起こっていることなのでご注意を。

このように多くの人がまだ社会経験の浅い若いうちから目指したがるのが音楽や演劇のエンタメ業界ですが、真っ先に知りたくなる知識ではないとはいえこんなトラブルは、事の大小はあってもこの世界で活動をしていけば必ず一度は遭遇すると言っていいでしょう。

なぜならそのような無知であることを利用して何かしら企んでいる人はこの世界ではたくさんいるからです(デビューさせることをほのめかして多額のレッスン料を取るのが第一の目的の場合など)

ならせめて事前に軽くでも知識として知ってもいいことだとは思いますが、学校や養成所といった場所ではこういったことは教えることはありませんし、他の相談できる窓口みたいなのも弁護士に頼るくらいしか真っ先には思いつかないので、ここは気軽に知ることができる場所として私が現実的なことも含めて発信をしております。

・事務所と揉める事を無くすことはできるのか?

タレントが事務所を辞めたくなる理由っておそらく一つに活動が軌道に乗れば乗るほどもはや仕事が来るのは、これだけお客さんが来るのは「事務所のおかげ」ではなく「自分だから」に変わってくるからだと思います。

そう感じた時に、少なくとも報酬の配分で事務所側が持っていき過ぎていると思ってしまったらいよいよ独立した方がいいのでは?と頭をよぎります。

そこで報酬の配分を事務所が納得する形で見直してくれたのなら、番組内で取り上げたバンドも独立はしなくてもいいと判断したかもしれません。

事務所もやがてタレントが大きくなればなるほど、立場が逆転することは仕方がないと肝に銘じておきましょう。

あるタレントが動くだけで大きな収入が入ってくるくらいビッグになったのなら、事務所はもはや裏で色々とサポートをする対価としてその利益の一部を頂ける、くらいのポジションに様変わりするイメージです。

それこそタレントがそのスタッフを食わしてあげていると言っていいかもしれませんね。

そんな関係にも関わらず報酬の配分が事務所に偏っているのであれば、そりゃあちょっとの不満が出てくることでしょう。

が、この番組でも後半に取り上げられましたが、旧ジャニーズ事務所の問題を筆頭に事務所が所属タレントを支配しているような関係性がこの日本の芸能界では当たり前のようです。

上記の例のようにその事務所を辞める=他の事務所には所属させない、その後の活動を円滑には行わせないと妨害行為を平気でやってくるのですから。人によって事務所を退所するというのはかなり勇気のいる行動となっています。

タレントが歯向かわないように上手くコントロールできた時代もあったのでしょうが時代は変わり個人で自由に活動できる時代になってしまったのでその様子を見てしまったら価値観が揺らぐのも仕方がないことでしょう。

そんな時代になっても今の事務所を辞めたらもうこの世界で活躍は出来なくさせるような制裁を下したところで、その時代の変化で様々な情報が手軽に調べられるようになったのでそれはもう法律的には通用しないとなりました。

国もここ最近で色々と問題を起こしているので芸能界の違法な行為を注視し始めています。

だったらもうタレント側には自立をしてもらおうと、
旧ジャニーズ事務所は「エージェント契約」という形に切り替えていきましたよね。

タレントとしては魅力があって絶対に多くのファンが付いてくれるような存在なのに、事務所が気に入らないという理由で干される、活躍が出来なくなるのはどう考えても歪んでいて、その業界全体の発展・盛り上がりも妨げることになって結果的に双方にもメリットはありません。

これによって自由度が増したものの、その代わり昔みたいに事務所が手取り足取り世話をする必要はない、ということを意味します。

タレント側の意識はどうなの?

タレント側が必要になればスタッフを雇って、自分の意志で活動していく方が合っている人もいるように、そうでもない人もいることでしょう。

事務所に所属してお仕事を貰う」そんな意識の人も少なくないかもしれません。現にこれまでがそうだったのですから、この世界を目指す志望者も第一目標に「事務所に所属する」を挙げている人もいます。

それだけ事務所に頼り切っている姿勢で、もしも有り難い事にある事務所のおかげで業界内に自分を送り込んでもらい知名度が上がり、定着したのであればそれは紛れもなく「事務所のおかげ」でしょう。

それなのに有名になった途端に「もう一人でもやっていけそうだからフリーになります」と言われたのなら事務所側は「ふざけるな」と思うことでしょう。

事務所側の気持ちが分かると言ったのは、明らかに事務所が持つコネクションで仕事を貰い、レッスンも必要であれば用意してくれて料金も負担してくれたりと必死に育ててきたのに、この世界で活動していく基盤が出来たら去っていくのは気持ちいいものではありません。

↑以前この記事でも書きましたし、NHKの番組でも事務所側の弁護士が似たようなコメントしましたがこのような流れが続くのであればもう事務所側は「タレントをいちから育てる気が無くなります

どうせその内、独立させられるのであればそうなるのは当然です。

そうなってくるとこのエンタメ界でやっていけるのは「タレント主導でも活動できる自立した人」に限られていくので意識を変える必要がありますし「エージェント契約」ではなく従来のような事務所にお世話になる形でやっていきたいのであれば、ある程度は事務所に忠誠を誓う必要があるのも覚悟しておきましょう。

それと同じように事務所もこの人のおかげで稼げていると思っているのなら、そこに配慮して報酬を考えてほしいです。そうでなければやっぱり不満を持ちます。

しかしこの世界で長くやっていける人ってたとえ外部から仕事の依頼が少なくても個人でもやっていけるだけの魅力がある人なんですよね。

ファンクラブを作ればたくさん人が集まり定期的にFC限定イベントを開いたり、配信ができてそちらでも収入がそれなりに入る人であったりと。

いよいよ日本の芸能界もメディアや事務所が作り上げた有名人ではなく、個人で人気を獲得して仕事を掴み取る時代になっていきつつあるような気がします。

そしてその勝者、有名になれた人をメディアは起用する、事務所は所属のオファーを出してサポートする役割に回ると。

芸能事務所の不当だと思う要求は従う必要はない・・・これが知れ渡るようになるとその先に待っているのはこのような構図かもしれません。


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