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演劇の舞台を初めて映像作品として観てみた感想

今年のお正月はパソコン画面で演劇の舞台を観たりもしました。
演劇の舞台を映像で観るのは「資料・記録映像」としてなら何度かあるですがちゃんと何台ものカメラで撮影されて、観やすいようにアングルの切り替えなど編集されている映像作品としての舞台を観るのは今年が初めてでした。

ちなみにその「資料・記録映像」という位置付けだとカメラは一台で、観客席後方から撮られたアングルのみ、音声もそのカメラからしか録音されていないので聞き取りづらい部分もあるなど一般公開は想定していない、関係者・身内だけで回すようなものになっております。

おそらく全公演終了後に撮影した舞台をネット上でも配信しよう、或いは生配信もしようと盛んに行われるようになったのはコロナ禍がきっかけだと思います。

人気俳優を起用したり、台本の原作が人気ある漫画とかであれば映像ソフト化も当たり前に行われていたでしょうが、少ない資金で公演を行なっている「小劇場」と言われる界隈はここが契機のはず。

もしかしたら、それはどちらかと言えばそんな思わぬ災害でそうせざるを得なかった、というニュアンスの方が正しいかもしれないと感覚としてあるのですがどうでしょうか?

やはりこの界隈は映画に出るよりも舞台に出たい、本当に舞台が好きな人の集まりで「舞台」とは生だから良いという価値観も根強くあると思うので、映像化するのにいまいち乗り気でなかった人もいたかと思われます。

しかし、それでもやってみてネットでも配信した方が最終的に多くの人が観てくれたという結果を得られた(しかも全公演で入れられる劇場キャパを超えた人数)という人もいて「もっと早くやれば良かったかもしれない」と感じた人もいました。

コロナウイルス大流行というつい最近の出来事がきっかけで普及したと考えれば私が舞台を映像として観るのは初めてなのも仕方がなしなのかもしれません。

と、そんな思いを巡らせながら観たのですが真っ先に思ったのが、

そこだけしか映さないのか・・・

みたいなことでした。

どういうことかというと、
編集方針としては基本、台詞を喋っている人をアップにして流しているという印象でした。だから離れている人が喋り始めたらそっちに素早く切り替わったり・・・。

台詞を喋っている最中に後ろにいる人の表情を映した方が良い場合はそんな風に引き気味のアングルが採用されていたこともありましたが基本的な見せ方はこれでした。

で、これは音楽ライブでも言えることだと思うのですが生で公演を観る醍醐味って「自分だけの視点」で鑑賞できることだと思うんですよね。

特に音楽でバンド編成のライブだと「私の推しはベースの人だから常にベースを観ている!」という楽しみ方をしている人はいます。

それが映像作品になるとそういうわけにはいきません。バランスを考えて、今この瞬間はどこが見所なのか、そこをクローズアップします。

だから生で観ると映像ではまるで別物の楽しみ方になるんですね。他にも一階席からと二階席からでも全然、見えてくる景色は違います。遠くからでなければあの壮大な照明演出の迫力は気が付かないなど遠い席でもそこでしか味わえないものは確かにあります。

それが演劇でもやはり似たような感覚になるんだなということが分かりました。

演劇の舞台の場合は音楽ライブほど大きな会場でやることあまりはないので、そんな前でも後ろでもそこまで大きく変わらないことも多々あるでしょうが、ここまで台詞を喋っている人しか観ることができないとなると、その「見えない部分」がどうも気になるな〜とずっと思っていたかもしれません。

生での観劇であればそれができます。小さな劇場であればこの役が喋っている時に、端にいる役はどんな顔でそれを聞いているのか、そこもチェックしながらそのシーンを味わったりしますよね。舞台美術に目がいく人もいるかもしれません。

映画であればスタートが映像作品として魅せることを前提にしているのでそんなことを気にすることはないのですが、舞台だと自分が実際に劇場の席に座っていればもっと様々な情報を取り込んで、このシーンの演出の意図などを自分なりに解釈したりするので、その点では物足りなかったですかね?

そういう意味では「舞台」を編集して「映像作品」にしてしまうと舞台本来の楽しみ方ができないのかもしれません。

それは音楽ライブでも言えて、だから音楽も映像ソフトでは摂取できない刺激を求めてライブへ行くのでしょう。

演劇の舞台もまさに同じことが言えると思いました。

それでも映像作品として家で観られるのはそこから「生」へ「劇場」へ繋げてくれる重要な架け橋であるのは間違いがありません。その役割もあると考えれば非常に価値があるものです。

音楽はライブを映像作品としても当然のように楽しむ文化が根付いているので、そこから何人かは必ず「今度ライブがあったら行ってみよう!」という気持ちにさせてくれます。

対して演劇はそこまで当たり前になっておらず、どんな内容のものをやるのかイメージができないまま「劇場へ来てください」という流れになっている・・・娯楽が多様化しているこのご時世でお試し体験もできず、なんとなくでもイメージがつかない所にお金を払うほど選択肢は少なくない上に、他の分野は先ずはこちらから試してくださいとお手軽コンテンツを用意できているのでこれではなかなか振り向いてくれません。

なので映像を観て感動したのであれば「生で観ればもっと迫力があって感動するはず」と期待感が持ててその人は次の公演に足を運んでくれるかもしれません。

現に私は「これは生で観ればもっと楽しめたんだろうな」と思いました。

コロナ禍で演劇の舞台でも映像配信が当たり前になったことがポジティブな要素でした。

これからもこれを続けていけば映像と生で比較できた人が増えて「やっぱり舞台は生で観るのが一番良いね」となるのではないでしょうかね?

では今回は以上になります。ここまでお読みいただきありがとうございました。



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Asakawa@エンタメ×ビジネス
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