小劇場、新劇、商業演劇・・・この言葉の意味や違いは?
↑この記事を書いた時に、ご紹介した劇団を「小劇場ならでは」と称しました。また「伝統ある新劇の劇団」や「商業演劇」では扱わないであろう内容とも。
「小劇場」「新劇」「商業演劇」
この三つの言葉は少しでも演劇に携わった者であれば聞いたことある言葉のあるはずです。それぞれ言葉からしてなんとなくイメージはできるとは思いますが今、振り返って感じることは、自分は「どこ」に属しているかによってそれぞれにけっこう大きな隔たりがあるのではないか?と思っています。
養成所時代にこんなダメ出しをもらいました。
「浅川、なんかいきなり『小劇場みたいな』演技しているけどそれ、やめてくれる?」
ちなみにわたくしは敢えて言うのであれば「新劇」に属している演劇人です。なぜならわたくが受けた演劇教育はヨーロッパで主流になっているものだからです。だからかこの括りに入る劇団は欧米の戯曲を上演するところが多いですね。
新劇とは?・・・簡単に説明すれば明治期に西欧近代演劇を取り入れてリアリズムを主体として、近代生活を反映した演劇となります。
このnoteでもマガジンでまとめている演技法は大体、欧米でも行われているものが多いです。ではいつそのヨーロッパの演劇が入ってきたかと言われたら文明開化で知られる明治期になります。それまでの日本の演劇と言えば「歌舞伎」や「能」でした。そこに海を渡り新しい風がやってきたのです。
話は戻りそんな「新劇」の理念に基づいて教えている養成所で『小劇場みたいな演技やめてくれる?』とダメ出しをくらいました。
そこで、小劇場演劇とは・・・?
・・・なんとなく読めば分かると思いますが「新劇」がどうも気にらない人達が新しく作った演劇ジャンルみたいなものなんですね😓
「小劇場みたいな演技やめてくれる?」となぜあの時に言われたのかこれで分かりました 笑 演技の理念に対してちょっとした対立関係にあった歴史があるんですね。
これは年齢が上の人ほどその歴史を肌で感じているはずなのでその傾向は顕著です。逆に最近の若者はそういう歴史すら知らない人もいると思うので拒絶はしないだろうが、演技方針を巡ってちょっとした議論になることはありそうですね。
今でもヨーロッパの演技法とやらはなんか馴染めない、よく分からないと言う人もたまに見かけます。対してガチガチの新劇の理念に沿って教わった人がいる、やはり何かしらの方向性の違いは嫌でも出てきます。
人間の生活をそのまま表現するリアリズムに対して、小劇場演劇と言われるものは確かに非日常、ファンタジー、コメディ色の強い作品が多い印象を受けます。どっちも演劇であるのは間違いないと思いますが、表現方法の違いでけっこうかけ離れているので、もしかしたらこの両者が共に作品を作るなんてことは止めた方が良いかもしれませんね😅
それも、こういう歴史があったと知っていた方が互いに納得できると思うので自身が熱を入れて取り組んでいる分野の歴史も少しは勉強した方が良いです。
個人的には高校卒業まで演劇経験はなく声優や俳優になりたくて専門学校に行く人は「新劇」の理念に沿って教えられるような気がします。専門学校の講師一覧を見てみると俳優座や劇団昴など新劇の劇団出身の講師も比較的、多い印象があるからです。
が、高校時代に演劇部に入っていたりと経験がある人はどちらかと言えば「小劇場」のようなテンションの演劇の方が好きな傾向にあるような気がします。現に専門時代に演劇部に居た生徒がいたのですが「なんか違う」と教えられたことに対して納得がいっている様子はなく質問してみたら「学生演技とプロの演技は違うから、もう学生時代の経験は忘れなさい」と一蹴されて、余計に落ち込みなんとその人は「やりたいことは自分の手で作る」と言い残して学校を一年で辞めることにしたのです。
その後はどうなったかは存じませんが、もしも劇団などを立ち上げたのであればまさに「小劇場」の括りに入る公演をしたであろうと思われます。
このようにヨーロッパの演劇を軸に演技をする人もいれば、そんなの知らねぇ、こっちはやりたいことを好きにやるぜみたいな人もいた歴史があることを考えれば、劇団・団体によって演技で求められていることが違う・・・と戸惑ってしまう人がいたので、それはある意味仕方がないことなのかもしれませんね。なので自分が信じる演技法でやっていきたいのであれば関わる劇団・団体をよく確かめましょう。
とはいえ明治期にヨーロッパの演劇が入ってこなければ日本の演劇はここまで多様な形は生まれてこなかったような気もするので、その点はよかったのではないでしょうか。
ただ今は小劇場と言われるであろう劇団でもリアリズム演技を意識しているかは分かりませんが実践している所もありますので、あんまりもうこの二つの違いも薄まりつつあります。
むしろ伝統ある劇団よりも面白い作品やっているよと言われることさえあります。
では、商業演劇って・・・?
これはもう言葉の通り興行的に成功させることが目的とした演劇でしょう。スタッフはもちろん関わった人ぞれぞれに、出演者にもそれ相応の報酬が与えられるくらいに収入が入ることを目指した公演です。
わざわざこのような言葉があるということは、実は最初に紹介した「新劇」「小劇場」と言われる演劇では残念ながら興行的な成功を目指すことはしてない公演も多いです。つまり出演者にはまともな報酬は行き渡るほどの余裕はないということ。
劇場のキャパシティとしては300人以下が「小劇場」や「新劇」それ以上、500人以上の動員が見込めるのが「商業演劇」といったところだと思います。
やはり現実的に考えて舞台をビジネスとして成功させるのであれば一公演あたり最低でも500〜1000人前後、そのくらいの動員は欲しいところです。
対して「小劇場」「新劇」はそれよりも芸術としての演劇の追求、新しい試みをする実験の場という意味合いで捉えているのです。だから正直、一般的に受けない公演も多いです。そんなスタンスとはまさに相反するのが「商業演劇」のような形態の公演なので、
と引用したサイトでは締めています(この記事を書くにあたり引用させてもらったシアターリーグ様ありがとうございます)
しかしどんな形態でも公演を行う以上はいつまでも赤字続きだと長く持ちません。趣味としてやっているとはっきりと自覚しているなら良いですが、もしもいつか成功して芝居だけで食っていきたいと野望を抱いている俳優、演劇人達は公演を「興行として成功させる」という意識も強く持たないといけないと思います。
その辺りどう思っているのだろう?とはわたくし自身、疑問に思っていました。
「出演依頼が来たのでギャラの話をしたらすごく嫌な顔をされた。なんかお金の話はタブーみたいな空気があるけどみんなどういうつもりでお芝居をしているの? 私は仕事のつもりでやっているんだけど」
ちょうどそんな疑問を抱いて演劇界から身を退こうかと考えていた時にこんなニュアンスの声もSNSで見ました。
もう学生の年齢ではない、本来なら就職しているのが望ましい年齢になっていてもバイトをしながらお芝居を続けている人は、そのへんを曖昧にせずに活動した方が良いと思いますね。
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では今回は以上になります。ありがとうございました。
高いお金を払ってプロの俳優・声優を育成するとうたっている学校や養成所に入っても大事なことなのに教えてくれないことを日々、発信しております。正しい認識を持ってこの分野を目指してもらうためにご覧になった記事がためになったと思われた方はよろしければサポートをお願いします。