- 運営しているクリエイター
記事一覧
やること6、仕事を任せる方法を考える
「おはよう」
机の上に書類を置いた微風で小さな赤べこがコクンと頷く。
赤べこの前には「至急」だの「月曜朝イチで」の付箋がおひねりのように撒かれている。
隣の席の森田あんずがチラチラ何か言いたげに様子をうかがっている。
用事があるくせに「声をかけられるのを待ってます」というのが面倒臭い。ここは会社だぞ。
癪なので無視してパソコンを立ち上げ、付箋の内容をひとつひとつ確認していく。
・至急:月曜日朝イ
体調が悪すぎる
物語調で自分のことを書くって難しいですね。
死にそうすぎてそんな余裕ない。
という気持ちになったり、
今年いっぱいで今まで達成してなかったこと片付けるぞ!
と、闘志が燃える日があったり、
情緒が乱気流に乗ってる。そんな状況です。
ですが、しょせん人の日記です。
自分のエンディングノートも兼ねてるかもしれないし、
旅立つ何日前あたりはこんな気分という備忘録の日があっても良いのかもしれない。
やること4、読みたい本を読む
仮に1年数ヶ月の命だとして、あと何冊読めるか考えるとおよそ50冊くらいになるはずだ。
現に父から渡された本屋大賞の本も300ページほどだったから読了まで1週間かかるだろう。
学生時代、文献を大量に読み漁る学部に4年いたおかげで、活字アレルギーを起こすことはない。が、問題は内容だ。
感情の起伏が激しい物語は乗り物酔いみたいな胸焼けが残ってしまう。
薄さのわりに情報が押し込まれ、ちょっと仲良くなった
やること3、父と暮らす
血便が出た。
もしかしたら、バリウム出すのに力んで切れ痔になっただけかも。
検査結果来る前に肛門科行くか…いや、もう少し材料集まってからにしよう。
5:48。父は起きてお茶をしばいてた。
「お父さんおはよう」
「おはよう。お茶いる?」
「うん、ありがとう。」
天気雨がしとしと降る音をBGMに、
お茶をすする音、新聞のパラパラめくれる音が縁側に落ちる。
子どもの頃はこのBGMに公文の宿題を解く
やること2、祝福せよ
結局実家に着いたのは夕方6時で真っ暗だった。
「おかえり、何かあったの?」
「私の誕生日祝って欲しくて帰ってきた。お父さんの好きなモンブランにしたよ」
祝福してほしいのは本音だったのかもしれない。
思えば祝福どころか、誕生日だったのに散々だった。
「何歳になったんだっけ?」
「34かな。」
「そっか。じゃあ刺身で一杯やるか。」
語呂合わせで刺身になった。
31って言ってたらサーティワン祭りだ
誕生日、人間ドックへ行くことに
「最近、イカロス…鳥人間コンテストしながら島から脱出するみたいな夢見るのよね。」
「なんだかICO(昔の孤島脱出ゲーム)みたいだね。」
ユナのくちびるが桜色に塗り変わる。春色のリップいいな。
「毎回流れは一緒なんだけど、駅員さんから返される切符の有効期限だけ、どんどんカウントダウンしてくの」
「えー、余命宣告みたい」
「でも健康診断でどこも異常ないんだよ?」
「いうて、今までバリウムとか血液検査
プロローグ: パイプ椅子のイカロス
夢の中で空を飛ぶ。
よくある夢のひとつだと思う。
でも、「パイプ椅子振り回してたら空飛んでたわ」
なんて人は稀だと思う。
その夢の中でパイプ椅子を操って、翼のように自在に飛べた。
「エーゲ海はええ下界…」
しょうもないことを言った瞬間、バランスを崩して落ちかけた。
幸い近くの駅に無事降り立つことができた。
よく見ると蔦が絡まり、廃屋と化した駅舎だった。
誰もいない。
左から快速電車が颯爽と駆け