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やること1、断捨離

事情聴取が終わって解放されたところでマウイと合流した。
松井という苗字だが、彼の顔の濃さと体格の良さに敬意を表して「マウイ」というあだ名が定着した。
「警察沙汰か?手上げてないか?大丈夫か?」
「自分からは手出してないから大丈夫だ。ありがとう。」
「せっかくだし、気晴らしに喫茶店でも行くか?」
「その前に病院に用がある。」

火曜日に保険証や診察券を取りに行こうと思っていたが、サトシの件があったので病院に連絡を入れ保険証と診察券を受け取った。
「記入した問診票はデータ入力した後ってどう処理されていますか」
「入力後にシュレッダー行きの箱に入れて、終業後にシュレッダーにかけています。」
ということは、データ入力後の問診票は終業前であれば1枚抜き取ったところでバレないということか。

「ところで、山本サトシという看護師さん、いらっしゃいますよね。」
「職員の個人情報はお答えできかねます」
「彼から最寄り駅で待ち伏せされ、電車内までストーカーされたので、○○駅で警察に引き渡したところです。問診票から私の電話番号、住所を入手したと白状しました。そのうち警察から電話来ると思います。」
彼女の顔が引きつった。
「私からのお願いは1点です。電子カルテから私の住所、電話番号を消して、検査結果はこちらの郵便局留めで発送をお願いします。」

その場ですぐ対応してもらえた。郵便局留めのメモは自分で回収した。
「お待たせ」
「無事に用事済んだか?」
「うん。せっかくの休日に悪いね。よかったら私のおごりで近くの喫茶店行かない?季節のフルーツケーキが美味しいんだ。」
マウイと一緒に喫茶店に行き、人間ドック以降のこと、今後の計画について話した。
「父が許可したらだけど、しばらく実家暮らしで、スマホも番号変更できしだい連絡するよ。」

解散した後、そのままスマホとWi-Fiを解約し、サブで持っていた格安Simの端末のみにした。会社関連のやり取りは常にGmailだったから問題ない。
思い出せない人や交換したけど一度も連絡とってない人の連絡先も消した。

禊ぎをするかの如く、必要のないつながりをすべて絶ちたくなった。
自室に戻ってからは、引っ越すつもりで荷物をまとめつつ、不要なものをどんどん分別して、売って、廃棄した。
本と写真と記録物は実家に送ってから考えよう。

寝袋とちゃぶ台と時計以外がダンボールに収まったところで実家に連絡した。
「ハルカです。今日これから実家行っていい?18時半ごろ到着になるけど。」
「よいよー。ご安全にー」
穏やかな父の声を聞くとほっとする。
今晩は父と晩酌してお酒と一緒に洗い流してしまいたい。

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