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マンデルブロうどん(5/9)
2022年9月30日(金)
4連泊目ともなると、健やかに入眠し軽やかに起床することができる。ゆる言語学ラジオのゾミア回で「マズローの提唱した〈安全欲求〉が満たされないと健やかに生きられない人間もいる」という話をしていたが、私もどうやら堀元さん側、周囲に不安があってもなんだかんだで慣れていく側のようだ。
まあ、とはいえ程度の問題だ。私にできるのはせいぜい連泊キャンプ3日目で安眠が得られるっていうレベルまで。イノシシ走り回る千葉の山奥で野営して、なんの不備もなく眠りにつける気は、しない。
キジバトの目覚まし時計でむっくりと起き上がる。スヌーズ機能が騒がしいが、気にならない。テントをこじ開けて朝日を眺める。つま先が朝露で濡れてしまうことすら清々しい。無職は、心の余裕が違う。
今日でこの多々羅キャンプ場とはお別れ。ここが、皆さんにぜひレコメンドしたい、良いキャンプ場だったということが伝わればいいんだけど。
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一昨日にカップルキャンパーが侃侃諤諤と喧嘩をしていたことを懐かしむくらいには、昨晩から周囲にたった一人のキャンパーもおらず、静かだ。瀬戸内海の展望を独り占めしている。ロケーションがいいので土日は混み合いそうだが、平日なんかはとても穴場的なキャンプ場でよろしい。秋の終わりという時期も、また良かった。
浜辺に出て岩場を歩きながらコーヒーを飲んだ。乾いた木の枝がたくさん落ちている。焚き付けに良さそうだ。ここは、いいキャンプ場です。
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素敵な場所だった。また来れるといいな。
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しまなみ海道を渡りきり、今治。今日はここから高松まで向かう。
遠方に四国の立派な山々が連なる。
愛媛を超えて高知を横断し、徳島へ行きたい。カブ乗りとして、このまま大きな道路だけをトコトコ走ることは矜持が許さないぞ、という気持ちになってくる。猛烈に後ろ髪を引かれる。その時々にライダーと挨拶を交わし、魅惑の山々を噛み締め眺める。いつかまた四国に訪れることがあったならば、噂に名高い数々の酷道を走ってみたい。
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高松に着いた。めちゃくちゃ都会でブルブル震える。さっきまで私が見ていた、四国の牧歌的・退廃的な雰囲気はどこへやら、何食わぬ顔で国道片側4車線。
ゲストハウスにチェックインを済ませた。瀬戸内国際芸術祭の開催期間中だというのに、私以外にお客さんはいない。経営が心配にはなるが、そんなことより我が身が可愛い、めっぽう居心地がいい。
高松でも地元のロースタリーでコーヒー豆を調達しておこう。この近くにあるらしいコーヒー豆屋さんまで、Googleマップと睨めっこしながら散歩を始める。ここから15分くらいで着くらしい。閉店まで1時間くらい余裕がある。
案の定、大迷子になる。
栗林公園のあたりをグルグルグルグル回っている気配がする。対策のしようがない、己の意思に反して、グルグルグルグル回っているのだから。息も絶え絶え店の前までたどり着いたときには、当然閉店時間はとうに過ぎている。本当にこういうことをよくする。
自分が許せない。なんていい加減に生きているのだ。普通の人が15分でたどり着ける目的地まで、1時間かけても到着できない。私の人生って本当にこれだ。このエピソードは、私の人生のマンデルブロ集合。マクロでもミクロでも、こういう感じの連続集合体から逃れられないのだ、私は。
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むかつくついでにマックを食ってやる。旅している最中ってロード・サイトで散見されるもんで、単純接触効果による増幅したマック欲がメーター許容範囲を超えてしまって、ポテトが揚がるときのアラート音が鳴り止まないのだ、仕方がないね。
倍パティてりやき・ナゲット(バーベキュー)・牛乳。一口食べてわかる、絶対、これじゃない。せっかく高松なんだから、うどん食べときゃよかった、普通に。
約半年後、うどんが食べたすぎて高松を再訪する羽目になった。これを読んでいる逆張り諸君に最終警告。香川では、おうどんを食べたほうがいい。
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ゲストハウスのオーナーさんから「社会人にはどうやってもなれないわ」という話を聞いて、ひとしきり頷く。だけど私は、社会人以外でどうやって生きていいのかがまだわからない。働くところなんかいくらでもあるよ、と他者は言うし、そのたび「そうですよね、楽しく生きてみます!」というポーズは作ってみるし、実際その通りだと思ってはいるんだけど、現状維持をやめない楽さにリクライニングして、輝かしい未来を夢想する。愚の骨頂。
なにかしなくてはならないけど、改まってなにかをするまでもない。そして、それはあんまりしたくない。だからなにもしない。私はどうやら、危機的になにかが迫ってくるまで、なにもしたくないみたいだ。
居酒屋へも行かず、夜散歩もせず、レモンチューハイ・ロング缶を嚥下し、就寝。明日は小豆島に渡る。
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