【夫婦関係】円滑で円満な子育てをスタートさせる方法
トレーニングも兼ねての論文レビューです。
今回は,父親の育児,妊娠期の夫婦間の話し合いに関する研究を紹介させていただきます。
夫婦や父親に関する研究は,自分自身の状況と重なる部分が多いので,どうしても目につきます。
個人的な感覚ですが,父親の育児に関する論文が増えているような気がします。
働き方改革や男性の育児休業取得率の増加等,父親の育児参加を進めようとする社会的な機運も高まっているなかで,非常に興味深い研究領域であると感じます。
今回の論文↓
要点まとめ
ゲートキーピング・ゲートオープニングは,父親の育児関与に影響する重要な要因の一つ
出産は,夫婦の関係性が変化するきっかけの一つであり,夫婦関係の良好さは子どもが生まれる以前(本研究では妊娠期)からの連続的なものであることを考慮する必要がある
妊娠期の話し合い度が子どもが3歳時点のゲートキーピング・ゲートオープニングに影響を与えることを示唆。
特にゲートキーピングについては夫婦の就業形態によって関連性が異なることを明らかにした。
ともに正社員である夫婦においては、夫婦間で事前に産後のことについて十分に話し合うことが夫婦関係の良好さにつながり、結果としてゲートキーピングの低減と関連するのではないかとも考えられる。
用語の整理
ゲートキーピング
特に母親が父親への関わりを制限することを指します。元来,離別や別居している夫婦間を指した言葉でしたが,同居している夫婦間においても,父親の育児参加が低いがためにそのような制限をする場合についても指す言葉として取り扱われています。
ゲートオープニング
パートナーが育児に関与しやすくなるように「門を開ける」行動を指します。ゲートキーピングと対照的な意味合いですね
コペアレンティング
夫婦でともに取り組む育児のことを指します。
研究の概要
目的
妊娠期における夫婦間の話し合い度と育児期におけるゲートキーピング・ゲートオープニングの関連を検討すること
方法
質問紙調査
3歳の子どもがいる2245組の保護者に対して質問紙を発送し回答を得た。
対象者
得られたデータの内,保護者ペアが夫婦である1537組のデータを分析に使用。
母親の平均年齢は35.979歳(SD=4.431)
父親の平均年齢は37.925歳(SD=5.479)
調査項目
妊娠期の夫婦間の話し合い度(3項目)
子どもの育て方に関する項目(「赤ちゃんをどう育てるか配偶者と話し合った」)
育児・家事の分担についての項目(「出産後の家事・子育ての分担を配偶者と話し合った」)
夫婦間の支え合いそのものに関する項目(「配偶者は妊娠生活を支えてくれた」)
上記3項目について,妊娠中の埼葛を振り返り,母親のみ回答。
4件法で回答(まったくあてはまらない~とてもあてはまる)
ゲートキーピング・ゲートオープニング(17項目)
夫婦ペアレンティング調整尺度(加藤 道代・黒澤 泰・神谷 哲司(2014).夫婦ペアレンティング調整尺度作成と子育て時期による変化の横断的検討 心理学研究,84(6),566-575.)における父親回答項目を使用
17項目について,父親のみ回答。
6件法で回答(まったくない~いつもある)
デモグラフィック項目(基本情報)
就業形態,世帯収入,最終学歴,子どもの性別,子どもの人数を分析に用いた。
また,就業形態,学歴は,父母それぞれの回答を,世帯収入,子どもの性別,出生順位,人数は母親の回答を分析に用いた。
分析方法
夫婦の就業形態の組み合わせごとに、妊娠期の話し合い度がゲートキーピングとゲートオープニングに与える影響を分析した。
すべての変数の記述統計と変数間の相関関係を算出
重回帰分析(lavaanパッケージを使用し,多母集団同時分析)
重回帰分析に先立ち,就業形態の組み合わせによるサンプルの分割
【就業形態】
グループ1:父親(正社員),母親(正社員)
グループ2:父親(正社員),母親(パート・アルバイト)
グループ3:父親(正社員),母親(休職中・無職)
【世帯収入】
・等間隔になるように200万ごとに区切る
・世帯収入が1000万円を超える場合は「1000万円以上」
すべての独立変数を一回津で組み込んだモデルの分析
結果
• ゲートオープニングについては、すべてのデータセットで妊娠期の話し合い度が有意に関連。
• ゲートキーピングについては、夫婦共に正社員の場合にのみ有意な関連が認められた。
• 共働きの夫婦は、育児や家事に割くリソースが多いため、事前に十分な話し合いを行うことが重要。
• 母親の抑うつが父親の育児関与にネガティブな影響を与える可能性があり、夫婦間のコミュニケーションがストレス軽減に役立つ。
研究の限界
• 子どもが3歳になるまでのプロセスが考慮されていない。
• 話し合い度の測定項目の妥当性に問題がある可能性。
• 妊娠期の回顧による回答の信頼性に限界がある。
結論
• 妊娠期の話し合い度が子どもが3歳時点のゲートキーピング・ゲートオープニングに影響を与えることを示唆。
• 特にゲートキーピングについては夫婦の就業形態によって関連性が異なることを明らかにした。
解説・考察
夫婦の間に子どもが生まれると、それまでの生活が一変しますよね。これまでのルーティンなんてあったもんじゃない
特に、子育てに関する役割分担やサポートのあり方は、夫婦関係の質に大きな影響を与えます。
この研究結果から、妊娠期の夫婦間の話し合いが、出産後の育児においてどのような役割を果たすのかについて考察してみたいと思います。
妊娠期の◯◯◯◯の重要性
この研究は、妊娠期の夫婦間の話し合い度が、子どもが3歳時点のゲートキーピングとゲートオープニングにどのように影響を与えるかを探っています。
その結果、妊娠期にしっかりと話し合うことが、出産後の夫婦間の協力関係を強化し、父親の育児参加を促進することが示されました。
特に、共働きの夫婦の場合、事前に十分な話し合いを行うことが重要です。
共働きであれば、育児や家事に割く時間やエネルギーが限られているため、互いの役割を明確にし、協力体制を整えることが必要不可欠です。
このような事前の話し合いが、ゲートキーピングの低減に寄与し、父親の育児参加を促進するのです。
夫婦間の◯◯◯◯がもたらすもの
妊娠期の話し合いは、夫婦間の信頼関係を深め、育児への共同参加を促進します。
例えば、赤ちゃんの育て方や家事・育児の分担について具体的に話し合うことで、父親も育児に対する理解と責任感を持つようになります。
また、互いにサポートし合う姿勢が強化されるため、母親の心理的負担が軽減され、結果として夫婦関係が良好になるようです。
さらに、母親の精神的健康が父親の育児関与に与える影響も無視できません。
研究では、母親の抑うつが父親の育児参加を減少させる可能性が指摘されています。
妊娠期から夫婦間のコミュニケーションを強化することで、母親のストレスや不安を軽減し、父親の積極的な育児参加を促進することができそうですね。
子育てを楽しむために
子育ては大変なことも多いですが、夫婦で協力し合いながら楽しむことができます。
そのためには、妊娠期からの話し合いが鍵となります。
具体的には、以下のようなポイントが重要です。
赤ちゃんの育て方について話し合う:お互いの育児に対する考え方を共有し、共通の育児方針を持つことが大切です。
家事・育児の分担を明確にする:誰がどの役割を担うのかを事前に決めておくことで、育児ストレスを軽減できます。
互いのサポートを確認する:妊娠期からの支え合いが、出産後の育児へのスムーズな移行を助けます。
産婦人科医の平野翔大さんは、自身の著書「ポストイクメンの男性育児──妊娠初期から始まる育業のススメ(中央公論新社)」の中で、父親の育児参加について、具体例を挙げながら説明してくれています。
気になる方は是非手に取ってみてください。
我が家では、夫婦で育休を取得予定なので、出産後にやりたいことを話し合ってます!
夫婦関係を良好に保つためには、互いの役割を尊重し、協力することが重要です。
特に、出産後の育児期は夫婦間のコミュニケーションがより一層重要になります。
妊娠期からの話し合いを通じて、夫婦間の信頼関係を築き、育児を共に楽しむ姿勢を持つということが良いのかもしれませんね。
最後に
妊娠期からの夫婦間の話し合いは、育児期におけるゲートキーピングの低減とゲートオープニングの促進に大きな影響を与えます。
特に共働きの夫婦にとっては、事前の話し合いが父親の育児参加を促し、夫婦関係の良好さを保つ鍵となります。
子育てを楽しく、充実したものにするためには、妊娠期からのコミュニケーションを大切にし、互いにサポートし合う姿勢を持ってみましょう。
パパ・ママが、子どもたちと笑顔で過ごせますように。