アサイゲルマニウムと酸化ストレス
抗酸化作用に関する研究・文献(医薬品開発時代)
アサイゲルマニウムの作用の一つとして、抗酸化作用を誘導する機能がある。
恐らく、最初にこの作用について見つかったのはリウマチへの有用性を臨床研究していた頃ではないかと思う(違ったらごめんなさい)。過去記事で『アサイゲルマニウムとリウマチ』の題で臨床研究について触れた。
東海大学医学部や慶応大学医学部での治験が進められていたが、レポートの中にSOD様作用の誘導という記述が出てくる。つまりスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の様な作用・・・つまり抗酸化作用が発揮されているという内容だ。SOD様であって、SODが誘導されたのではない。
さて、一方でアサイゲルマニウム(Ge-132)の抗酸化作用に関する研究は様々行われてきた。例えば、酸化障害を及ぼすことで知られる四塩化炭素によるラットの肝障害に保護的に作用することを示した文献がある。四塩化炭素由来の酸化ストレスを消去した事が考えられる。
この論文には四塩化炭素でダメージを受けた肝臓は傷害されてGOTやGPTが漏出し、血中に高値で検出される。しかし、アサイゲルマニウムを投与したラットではGOT・GPT共に低減され、通常状態に近づく、つまり酸化ダメージが抑制軽減されていた(すなわち抗酸化作用が発揮された)というのが示されている。興味のある方は下記リンクより文献を取り寄せるか、浅井ゲルマニウム研究所へ複写資料の請求をしてください。
さて、一方でアサイゲルマニウムすなわちGe-132と、その誘導体(Ge-132の構造の一部に変化があり、異なる構造が導入されている有機ゲルマニウム化合物でGe-132との類似性が高い構造を持つ分子群で抗酸化能を分析した研究を名古屋大学の大澤俊彦先生らが実施してくださっている。
その結果としては、Ge-132それ自体と類似のセスキオキサイド類には直接的な抗酸化活性は見られないものの、酸素の代わりに硫黄が入った化合物では強い抗酸化活性があるというものだった。
つまり、アサイゲルマニウム(Ge-132)は直接抗酸化性を持つものではないが、抗酸化性の物質を体内に誘導して活性酸素を消去する可能性が示されていたことになる。こちらは以下のリンクから総説で読むことができる。ぼくが入社したときの研究部長だった秋葉光雄博士と当時の柿本紀博社長(薬学博士)の共著になっている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nikkashi1972/1994/3/1994_3_286/_pdf
さて、この総説が出版されたのが1994年なので、ぼくが入社した1995年は翌年にあたる。よって入社当時の最新知見がGe-132には直接的な抗酸化性はない、というものであった。
抗酸化作用に関する研究・文献(サプリメント・コスメ時代)
ぼくは、入社してからまもなくアサイゲルマニウムによる糞便の色変化に係る研究をすることになったことは、noteのシリーズ記事『アサイゲルマニウムとは何なのか』(詳しくは当該マガジンをお読みください)の中で記述した。そして、色変化に伴いウロビリン(ステルコビリン)が糞便あるいは盲腸内容物中に増えることを明らかにした。そして、その過程で生体内の天然低分子抗酸化物質であるビリルビンを経由し、前駆体として非常に還元性の高いウロビリノーゲンになっていること、そしてこのウロビリノーゲンはラジカル消去能を有する非常に活性の高い抗酸化物質であることも発見した。そして、ウロビリノーゲンの抗酸化性はそれまで知られていなかったので、Wikipediaのウロビリノーゲンの項目にも学会発表での記事と当該文献を引用していただいている。
残念ながら、ぼくの著した論文の中では最も読まれているものの、ウロビリノーゲンの抗酸化性に注目した研究というのはその後は行われてこなかった。血液の成分としても微量に存在するはずではあるが、殆どが糞便と尿の成分としての存在でも有り、研究者にとってあまり研究対象としたくない分野でもあるのだろう。
ぼくもウロビリノーゲンの研究者ではないので、その後は突き詰めて研究を行うことはなかった。しかし、アサイゲルマニウムの経口摂取で糞便が黄色く変化することは、その主要因であるステルコビリン(オレンジ色)の増加によるものであり、そこに至るには抗酸化物質であるビリルビンとウロビリノーゲンを必ず経由しているので、摂取した翌日にウンチが黄色くなっていたら、身体の中の活性酸素を通常より多く消去したのだ(抗酸化していた)という意味でもあるのは明らかなことだ。
ぼくの考えでは、この身体の中に備わっている抗酸化物質の活性酸素からの保護機能はかなり高いのではないか?と思っていた。便の色合いを決める色素は、一生涯に渡り体内で作られ、捨てられ続けている。ただのゴミだと思われていた分子に違いない。しかし、同じ量であればビタミンEよりも強いラジカル捕捉能力を示すことが明らかになっていて(上述文献Table1)、この分子が造られ続けているのは興味深いし、酸化が容易に生じない腸の中(酸素が殆どないので物理的に酸化が起きにくい)でも一部は活性酸素をトラップしたと見られるステルコビリンになっているというのも重要だと感じる。つまり、より黄色いということは、より活性酸素を捉えて無害化したことを意味している(このあたりは難しいかもしれないですが無害化する時に着色するから)。
さて、ぼくの研究を継いだ武田博士研究員(現浅井ゲルマニウム研究所研究部の生物室長)は東北大学大学院に社会人入学してアサイゲルマニウムと抗酸化性に関する研究を行って学位(博士)を授与された。ここでは、ぼくの指導(依頼)を受けてアサイゲルマニウムを摂取したときの糞便の色変化についても研究内容に含まれていた。しかし、博士課程後期の期間中には論文に出来る明快なデータが十分なものに至らなかった。色が変わることや変化量は明らかになったが、その理由が明確にならなかったからだ。
彼の研究は、この頃に行っていた皮膚の研究の方で結実し、ヒトの皮膚線維芽細胞にアサイゲルマニウムが作用すると活性酸素による酸化ストレスを付加した時の細胞死から保護することを明らかにした。
この時の研究成果はScientific Reports誌に掲載された。
結論から言えば、先述した通りアサイゲルマニウムには直接的な抗酸化作用はない、この研究ではビタミンCの活性酸素消去能との比較実験も行い、細胞死の保護が活性酸素の消去によるものではないことを明快に示した。そして、更には活性酸素による細胞の炎症発生を抑制するため細胞死が起こらないのだということが示された。
さて、次の例に移る。ぼくの最高齢の友人としてnoteの記事の中に度々記述してきた名古屋大学名誉教授の手塚脩文先生(理学博士)は『生命に驚きの威力を発揮するゲルマニウムの秘密』の著者である。
手塚先生は植物の研究者だが、生物に共通する分子メカニズムに関しては植物も動物・哺乳類も含めすべての生き物で保存されている(共有している)と考えていて、ユリの自家受粉阻害が酸化ストレスによるもので、アサイゲルマニウムにより自家受粉抑制が緩和されることからアカゲザルの肝臓における活性酸素に関わる酵素(活性酸素を作り出す酵素:キサンチンオキシダーゼやNADあるいはNADP依存性オキシダーゼ、および活性酸素を消去する酵素:カタラーゼ、およびスーパーオキシドジスムターゼ;SOD)の活性へのアサイゲルマニウム(Ge-132)の添加による影響を調べて、活性酸素を作る酵素の働きを抑制し、活性酸素を消去する酵素を活性化していることを突き止め、ぼくも共著者となり論文化している。
これらの研究はいずれもアサイゲルマニウムの直接的な抗酸化作用ではなく、細胞や組織(器官・臓器)に働きかけて抗酸化的な能力を引き出すことを示している。
一貫して言えることは、アサイゲルマニウムは抗酸化物質ではない、しかし抗酸化物質を誘導したり、抗酸化性の酵素の活性を調整したり、さらには活性酸素によりダメージを受ける細胞の炎症発生に対して抑制的に働くなどすることで、生体の活性酸素の過剰になる部分を減じてくれるのだということだ。
最新論文の老化赤血球除去促進作用論文での抗酸化作用について
武田知也生物室長(博士研究員)が博士課程において纏めきれなかった研究を、この程2023年末にHelyon誌で受理されるに至り、オンライン掲載されている。今回の掲載に至ったポイントは、どのようにして一連の作用が起こってくるのか・・・を明らかにしたことにある。
すなわち、アサイゲルマニウムは自然免疫細胞であるマクロファージに直接作用し、異物への応答性を高めるなかで老化した赤血球を検出する能力を亢進するので、通常状態では見逃されていた老化赤血球を見つけて食べてしまう能力が発揮される。ということを見つけて示した点にある。
原因は分かった。それにより結果として起こることは老化赤血球から放出される不要になったヘム色素の代謝が上がること。つまり、ヘム⇒ ビリベルジン⇒ ビリルビン⇒ ウロビリノーゲン⇒ ウロビリン(ステルコビリン)の流れが増えることだ。
餌に0.05%のアサイゲルマニウムが含まれているものを食べたネズミでは、この過程が概ね1.5倍に増える。ヘムからビリベルジンに代謝するヘムオキシゲナーゼという酵素が働くと、ビリベルジンと同じ量(分子のモル数)の一酸化炭素が放出されるが、一酸化炭素は微量では抗炎症性作用を持つことが知られている。この過程は主に肝臓や脾臓で行われるが、肝臓での作用では肝炎への抗炎症作用も発揮するだろう。
ビリルビンやウロビリノーゲンはこの過程で抗酸化性を発揮するのは先に説明したとおりだ。
ぼくは今回の論文を書くにあたり、武田くんに一つの依頼を出した。それはウロビリノーゲンの定量により、一日にどの程度のウロビリノーゲンが造られているのか、また抗酸化性を比較した時にビタミンCのの推奨摂取量で得られる抗酸化力と、アサイゲルマニウムによって消化管内に誘導されているウロビリノーゲンにより得られる抗酸化力を計算して表すようにというものだ。
ぼくも計算結果を聞いて驚いた。マウスでのデータで、ヒトの摂取推奨量を持ち出して計算しているという事はあるにしても、ビタミンCの一日の摂取推奨量で得られる3,000倍の抗酸化性がウロビリノーゲンの誘導により得られているというのだ。アサイゲルマニウムは、それ自体は抗酸化力を持たないにも関わらず、身体の中に元々存在している抗酸化性の物質を摂取翌日には劇的に増やし、身体の中に食品由来の過酸化物などが取り込まれる最前線である腸管での抗酸化物質を驚くほどに増やしてくれるということが示されたことになる。
今後、興味が持たれるのは、実際にヒトがアサイゲルマニウムを摂取した時の抗酸化物質ウロビリノーゲンの消化管内(あるいはそれを反映した糞便内)での誘導が、どのくらいの抗酸化性をもたらしているか、という点だ。
少なくとも、活性酸素が細胞の遺伝子を傷つけて癌化させる原因となることはよく知られているところであり、日本人の大腸がん発生は近年飛躍的に増えてきている。この原因として、直接的には食の欧米化が進み、肉食などが原因していると言われるが、一方で食品中の食品添加物の異常なまでの増加が腸管の細胞に毒性を発揮し、活性酸素を増やして癌化を促進している可能性もある。もちろん、ストレス社会という事により活性酸素の発生自体が増えて酸化ストレスによりDNAが傷つけられているということも考慮する必要はあるだろう。
いずれにしても、消化管内での活性酸素をアサイゲルマニウム摂取で誘導されたウロビリノーゲンや前駆物質ビリルビンにより消去するならば、癌化の予防に寄与できるはずである。
今後の研究の進展に期待する。
おわりに
最後にもう一度だけ書いておこう。アサイゲルマニウムには直接的な抗酸化作用はほぼない。
にも関わらず、驚くほどの抗酸化物質を体内に誘導する。
これと同じように、抗炎症物質を体内に誘導し、免疫機能を調整する因子を誘導し、痛みを発生する分子を調整し・・・きっとまだ解っていない様々な調整を行うのだと考えられる。
このように、直接なにかをするのではないことが、この物質の機能を曖昧にし、簡単には解明できない状況を作ってきたのだと、ぼくは考えている。
だからこそ、難しいし、容易にはすべてが解らないのだが、そこに魅力があり、底しれぬ力を秘めているように惹き寄せられるのだ。
ただ、30年前のように「何も作用がないのではないか・・・」と揶揄されることはもうないだろう。
アサイゲルマニウムは直接プレイヤーではなく、プレイヤーの能力を引き出し、調和させ、最大の能力を発揮させる部分に一役買っている。いわばオーケストラの指揮者や、スポーツのチームを指揮する一流監督のような立場なのだと改めて思う。皆さんの身体に秘められた能力を引き上げ、ハーモニーを奏でるために、アサイゲルマニウムを役立てていただきたいと願う。