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『Ringlorn Saga』レビュー
『Ringlorn Saga (リングローン・サーガ)』は、いわゆる"剣と魔法"の世界観を舞台とする、見下ろし型視点の2DアクションRPGだ。
主人公は王子ゲルハルト。謎の魔法障壁に隔たれた隣国の調査へ向かったまま消息を絶った父王の行方を求め、本国を兄に任せて自身も障壁の内へと踏み込んでいくところから本作ははじまる。
開発:Graverobber Foundation
販売:Graverobber Foundation
配信日:2022年11月8日 / 日本語サポート有
Steamにも同レビューを公開中:Link
ゲームシステム
本作の基本の流れは、5x5の画面で構成されたワールドマップを探索し、必須イベントや点在するダンジョンを攻略して、最終的に敵の本拠地でボスを倒すことだ。
ワールドマップは自由に探索できるが、イベントの達成やダンジョン攻略には特定の段階を踏む必要があるため、実態としてはリニアな内容となっている。
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1984年にPC88でリリースされた国産アクションRPG『ハイドライド』に強くインスパイアされていて、後述する成長要素や戦闘システムも含めて、同作を再現しているといってもいい。
既プレイヤーであれば懐かしさを、当時を知らない現在のプレイヤーにとってはそのシンプルさから、むしろ取っ付き易いと感じるはずだ。
成長要素
成長要素としてレベルの概念があり、敵を斃してEXP(経験値)が一定の値に到達することでレベルアップして、HP(体力)・STR(攻撃力)・DEF(防御力)が成長していく。
この補正が強いのでしっかりとレベルを上げていきたいが、敵1体から得られるEXPは多くはないので、必然的に「レベル上げ」という作業は必要になる覚悟はしておきたい。
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敵に斃されるとデスペナルティとしてEXPを一定量失って冒険を再開することになる。EXPは通算ではないので、斃されれば斃されるほど次のレベルアップから遠のくことに注意しよう。
戦闘システム
戦闘は文字通り敵に体当たりしてダメージを与える。自分も敵も正面のみに攻撃判定があるので、敵の側面や背面から攻撃を加えるのがベストだ。
UIには各種パラメータ以外に2本のバーが表示されていて、「LIFE」はHPを示し「PWR」はスタミナに該当する。攻撃するとPWRに比例してSTRも減るので連続攻撃は効率が悪いわけだ。
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また攻撃スタンスとして「ATTACK」と「DEFENCE」モードがあり、前者はSTRが上がるがDEFが下がり、後者はその逆だ。ただ敵の攻撃力が高くダメージを受けないことが理想で、先のPWRのこともあるので、常時「ATTACK」モードでヒット・アンド・アウェイが基本となるだろう。
ダメージを受けて消耗したHPは自然回復する。他に回復手段がないので待つしかないが、このとき「DEFENCE」モードにしてその場に立ち止まっていると自然回復速度がアップするので覚えておこう。
加えて「SLASH」「STAB」「BASH」という3種類の攻撃タイプにも切り替えることができ、これは敵に対する有効打の違いを表している。例えばコウモリにはSLASH、スライムにはSTAB、クモにはBASHが有効という具合いで、与えるダメージがだいぶ違ってくるので意識していきたい。
なお、武器と盾の概念はあるが、ダンジョンなどで入手すると自動的に強いものが装備される。また魔法も存在するが、ほぼノーヒントのクエスト達成によってのみ習得できるので・・・見逃してしまう恐れがあることは付け加えておきたい。
転生の神殿 (ボーナスダンジョン)
これはゲーム開始時に本編とは独立してプレイすることができるもので、全部で3階層のダンジョンを舞台に、モンスターとなって攻略していく特殊なゲームモードだ。
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最初はスライムとしてスタートするが、斃した敵に変化することで成長していくというものだ。ゲームシステムが異なるので、本編クリア後におまけとして挑んでみるとおもしろいだろう。
TIPS
英文だが有志によって詳細なガイドが作成されているので、攻略に詰まってしまったらこちらを参考にするといいだろう。
日本語サポート
ボイスは無く、UI/テキストが日本語に対応。翻訳は伊東龍 氏 (@Ryu_Ito1976) が担当されている。
ゲームそのもののボリュームは数時間でクリアできる程度ではあるものの、イベントシーンやNPCとの会話などのテキスト量の密度が濃く、読み応えがある印象だ。
演出からしてやや唐突に感じられるようなシーンも一部あるが、それもまたクラシックなゲームとはこうだったなと感じさせる部分だろう。
気になるポイント
先に触れた通り本作は『ハイドライド』に強くインスパイアされているが、当時のゲームタイトルに見られた不親切さも再現されている。
NPCとの会話から攻略のヒントをつかめるようにはなっているが、最近のゲームタイトルのような親切なチュートリアルは存在せず、また「次にどこに向かい、なにをすればいいのか」といったものがわかりにくく手探り感も強い。
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これらはロールプレイングらしさの追求でもあるが、現代のプレイヤーにとってはそこまでシンプルにしなくともという不親切さが勝ってしまう部分でもあるだろう。
余談だが当時チュートリアルがなかったのは、容量の都合で入れることができなかったという事情もある。その分、付属の説明書がガイドブック的な役割も持っていたりしたのだが、本作にはそれが欠けているというわけだ。
総評
必ずしも「古き良き」という言葉が、クラシックなゲームタイトルにインスパイアされたものすべてに当てはまるわけではないが、本作はそれに符合すると言っていい印象だ。
攻略のヒントが控えめだったり、チュートリアルがないなどの不親切さはあるものの、ゲーム全体としてのボリュームが控えめなので、そこまで迷うことはないだろう。
シンプルであるがゆえに完成度は高く、手軽に当時のアクションRPGに触れてみたいというプレイヤーにおすすめだ。
続編を開発中
2023年リリース予定で本作の外伝『Ringlorn Saga Gaiden』が開発されている。
詳細はまだはっきりとしていないが、どうやら『Ringlorn Saga』の本編とは別に用意されていた『転生の神殿 (ボーナスダンジョン)』をひとつの作品として独立させ、中身を拡張したものになりそうだ。
こちらも完成を楽しみに待ちたい。
本作を手掛ける Romanus Surt 氏 (@surt_r) はウクライナの個人開発者だ。バイアスがかかる恐れがあるため普段こうした情報は表記しないが、情勢が不安定な中でゲーム開発を続ける氏をリスペクトする意味でもここに記しておきたい。心置きなく専念できるようになる日が来ることを願っている。