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アサヒ飲料の原材料へのこだわり
日々の生活に欠かせない飲み物。当社では、安心しておいしい飲み物を楽しんでいただけるよう、原材料の選定に細心の注意を払い、欠かすことなく供給し続けられるようさまざまな努力をしています。今回は原材料の調達に携わっている社員がどのように当社の原材料へのこだわりを実現しているのか、その具体的な取り組みについて詳しくご紹介いたします。
【プロフィール】
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アサヒ飲料株式会社 SCM本部 原材料部所属。主にコーヒー豆の購買(仕入れ)などを担当。
趣味は筋トレ、フットサル、サッカー、映画鑑賞、散歩。
(右)笠井 信吾(かさい しんご)
アサヒ飲料株式会社 SCM本部 原材料部所属。主に香料と砂糖の調整などを担当。
趣味はバスケ観戦。
原材料部?当社の原材料とは…?
――原材料部での業務内容とバリューチェーン上の位置づけを教えてください。
中野 原材料部は、バリューチェーンの川上に位置しており、製品をつくる上で必要不可欠な原材料(※)を購買、調整する役割を担っています。ミッションは大きく四つあり、「Quality」「Cost」「Delivery」「Sustainable」。これらを意識しながら、日々業務に取り組んでいます。
購買グループでは、主に「Quality」と「Cost」の面を対応しています。品質面では、お客様の身体に害がないよう、サプライヤー様の工場を直接訪問してどのような環境下で製品がつくられるのか、異物混入などの恐れがないかを確認しています。仮に何か問題が起きてしまった場合でも、事後対応がすぐにできるようにトレーサビリティがきちんと整っているかなども重要視しています。また、価格面では、当社だけでも年間で千数百億円の原材料を購入しているため、少しでも価格を抑えて購入するよう努めています。
(※)原材料は大きく分けると、原料と資材の2つがあります。原料は果汁、コーヒー豆、砂糖、香料など、容器の原材料表示に書かれているものを指します。一方、資材はダンボール、ペットボトル、ラベル、紙パックなどの容器や包装材を指します。
笠井 調整グループでは、主に「Delivery」の面を対応しています。購買グループが仕入れた原材料を用いて、実際に製品をつくるのは工場になるため、どの工場へどれくらいの原材料を届ければいいのかを日々考えて業務を行っています。生活者へ商品を届けるために原材料は土台となる部分ですので、適切な量の原材料を供給するために、毎日さまざまな工場の出荷状況や営業の見込みを確認しながら原材料の調整をしています。
――購買する際に意識している「Quality」と「Cost」の両立は一見難しそうに感じますが、どのような基準で原材料を選定していますか。
中野 もちろん、価格は安い方が良いですが、品質での問題があってはいけません。生活者の口に入り、体内に取り込まれるものなので、品質は最優先事項です。原材料の価格と品質のバランスを取るのは本当に難しく、安く仕入れができないと生活者へ安い価格で商品を提供できませんが、品質を犠牲にしてまで価格を下げるわけにはいきません。そのため、この両者のバランスを取るのは、原材料部の重要な役割だと認識しています。常に最適な選択ができるよう、サプライヤー様との関係構築や情報収集に力を入れています。
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――原材料の調達において、中期的に何か大きな変化はありましたか。
中野 できるだけ安く仕入れて、できるだけ安い価格で商品を生活者へ届けたいという気持ちとは裏腹に、社会情勢や環境変化の影響で物価高騰は続いています。コーヒー豆を例に挙げると、6年前と比較し価格は約7倍以上になっています。さらに、価格面だけが問題ではなく、もの自体が取れなくなってきているという状況もあります。そのため、安定供給をどう実現するかが現在の課題となっています。そこで、2024年からはアサヒグループ全体での原材料調達も一部商品で始めています。スケールメリットを生かしながら、価格を抑えることと安定供給を目指しています。
安全・安心でおいしい商品を届け続けることの難しさとやりがい
――原材料を購買や調整する上で、特に難しいことは何ですか。
中野 購買グループとしては、環境変化等により取れなくなる原材料がある中で、どのように持続可能な供給ができるかを検討しつつ、価格や品質も担保することが難しいです。特に、私が担当しているコーヒー豆については、2050年問題(※)によりコーヒー豆の収穫量が減少するリスクがある中、どのように価格を抑えていくか、どのように安定した調達の実施をするのか。また、取れなくなるものを別のもので補うための代替案等、商品として市場に出し続けるためにどうすればよいか、を常に考えて仕事をすることが大変で難しい部分でもありますし、何よりやりがいの部分でもあります。
(※)少子高齢化や気候変動などによる社会的課題の総称で、企業や社会に大きな影響を与えることが予想されています。
笠井 調整グループとしては、製造スケジュールに合わせて安定供給できるように在庫確保をしていますが、出荷状況によっては緊急で製造が入ったりするため、それに合わせて在庫調整を行うのが難しいです。特に、私が担当している香料は製造のリードタイムが2週間と長いため、かなり先の需給までを予測をして管理することと、緊急製造になった場合でも対応いただけるよう、日々サプライヤー様と在庫調整や販売状況を共有して、廃棄なく安定供給することを常に意識しながら業務にあたっています。
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――原材料を購買や調整する際に大切にしていることを教えてください。
笠井 調整としては安定供給を行うことが大切ですが、それに加えて廃棄の抑制も大切にしています。特に、さまざまな種類を扱う香料や期間限定のラベルなど、汎用的な使用が難しい原材料などは安定供給のために在庫を大量に確保しても、製造状況によっては使い切れずに廃棄してしまう可能性が高くなります。そのため、適正在庫で確保出来るよう常にサプライヤー様や関係各所との連携を大切にしながら業務を行っております。
中野 品質や価格へのこだわりはもちろん、サステナブルにも意識しながら安定供給することを意識しています。例えば、コーヒー豆の栽培は、発展途上国の家族経営農家が深く関わっています。児童労働や農薬の使用など、人権や環境に悪影響を及ぼす問題があります。当社では、フェアトレード認証を取得したコーヒー豆を使用するなど、生産者の生活向上と環境保全に配慮した調達を進めています。コーヒー業界全体でも、こうした認証の取得が広がりつつありますが、認証を満たしている農家は限られているため、安定的に調達するのが難しい面もあります。そのために代替原料の検討なども進めており、コーヒーの代替として他の豆を使ってコーヒーを作るといった取り組みを関連部門と協力して行っています。また、コーヒー豆の焙煎時に出る副産物を活用し、インスタントコーヒーの使用量を減らすことで、コーヒー豆の調達量を抑える工夫もしています。サプライヤー様や商社様とのコミュニケーションを意識し、さまざまな情報交換しながら、あらゆる方策を検討しています。
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より多くの方へ、100年ワクワクと笑顔を届けるために
――100 年後をどんな未来にしたいと思いますか。
中野 愛される商品を作り続けるために、価格と品質のバランスを取りながら、安定的に原材料を調達し続けていきたいと思っています。サプライヤー様とWin-Winの関係を築き、環境変化にも柔軟に対応できるサステナブルな調達体制の構築を目指しています。100年後も変わらず、幅広い世代の方に同じ味の商品を提供し続けたいです。「カルピス®」や「ウィルキンソン」のように長年愛され続ける商品を生み出すのが目標です。おじいちゃんおばあちゃん世代から子供まで、好きだと思ってもらえる商品を作り続けるのが私たちの使命だと考えています。100年後のことを見据えて、そのための土台を日々の原材料調達を通じて作っていきたいと思います。
笠井 今と変わらず、100年先もずっと、生活者に「三ツ矢」や「カルピス®」を手に取ってもらえるような環境を守っていきたいと思っています。また、当社ではマーケティング部門が新領域の商品などにも挑戦しているので、今ある100年ブランドに加えて、新しい100年ブランドを増やして、将来世代につないでいきたいと思います。
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──ありがとうございました!
いかがでしたか。今回は、当社の原材料へのこだわりについてご紹介しました。目まぐるしく変化する社会情勢や環境に対応し、今後も生活者へ安全・安心な商品をお届けできるよう試行錯誤を繰り返していきたいと思います。