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馬琴の脳内に潜入!映画「八犬伝」


今年の秋、一番観たかった映画が「八犬伝」


八犬伝は、子供の頃何かで読んだり、見たりした記憶があるが、内容に関しては、すっかり忘れてぼんやりしている。
いつも、映画を観る際は公式を読み予習して行くことにしているが、八犬伝は真っ新の状態で映画館へ向かった。

世界に誇る日本ファンタジーの原点「八犬伝」実写映画化!

里見家の呪いを解くため、八つの珠に引き寄せられた八人の剣士の運命をダイナミックなVFXで描く「八犬伝パート」と、その物語を生み出す作家・滝沢馬琴と、浮世絵師・葛飾北斎の奇妙な友情を通じて描かれる「創作パート」が交錯する新たな『八犬伝』。
失明してもなお、口述筆記で書き続け、28年の歳月を費やし106冊という超大作を書き上げた馬琴の偉業は、日本文学史上最大の奇跡として今なお語り継がれる。
物語を生み出す苦悩と葛藤と共に作者の目線で描かれる『八犬伝』は、未だかつてない映画体験へと導いてくれる。

映画「八犬伝」公式より

映画は2つのパート「実」と「虚」が交互に進む

滝沢馬琴が友人の葛飾北斎に「八犬伝のあらすじ」を語るパート。
登場するのは、馬琴の気が強い妻と馬琴を誇りに思っている病弱な息子。

VFX特撮満載で進む「八犬伝」パート


何か劇画っぽい印象を受ける。途中から「そうか!北斎に語りながら、馬琴の脳内で再生されている『八犬伝』のあらすじか!」と気付く。

書く馬琴と描く北斎


内向的で静の馬琴と落ち着かない北斎の会話は、漫才をしている様であれこれ文句を言いながらも、仲の良さがうかがえる。
八犬伝の構想を聞く度に、北斎はサラサラっと挿絵を描いて、馬琴に見せた後、破って捨てる(笑)決して渡さない。

鶴屋南北の皮肉と馬琴の正義


唐突ではあるが、途中、四谷怪談の作者である人気作家の鶴屋南北と北斎が「実と虚」について、議論を戦わす場面がある。
悪を書く鶴屋南北。善を書く馬琴の相反する姿は、交わることは無いが、馬琴が今後の作品の方向性を決意する、印象深いシーンだった。

馬琴が失明。筆が止まる 


息子が生きている時は、馬琴が書き息子が校正する作業をしていたが、今は、馬琴一人で行っている上、終盤にさしかかった頃、馬琴が失明してしまう。文字を満足に書けない。
亡くなった息子の嫁であるお路は馬琴の目のことをずっと気にかけており、意を決して協力を申し出る。
漢字が書けないお路に、一から文字を教えながらの時間がかかる地道な作業は、八犬伝へのすさまじいエネルギーが成せる業だろう。


八犬伝が完成する


馬琴が話す内容をお路が書き留める口述作業により、28年の歳月を要し八犬伝は無事に完成する。
ラストの八犬士に囲まれて天に召されるシーンは、馬琴の脳内で最期に再生されている映像だろう。
馬琴は82歳まで生き、北斎は富嶽三十六景を72歳で描き始め90歳で亡くなる。あの時代二人共、長寿を全うしたのはすごいことだ。

175年後、映画「八犬伝」が制作されたことを二人はどう思っているのだろう?
天国で「ワシらのことが映画になったらしいぞ!」と盛り上がっている馬琴と北斎の姿が目に浮かぶ。


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